22話 龍空祭の準備(1)
ス「おいおい、どういうこった!今回は文化祭とか前話で言っていたのに始まってねぇじゃん。」
レ「書いていっていたら、準備だけで4ページ行っちゃって、急きょこの話ができたらしいわよ。」
シ「何やってんだよ…」
エ「じゃあ次回から龍空祭が始まるんだね?」
レ「そういうこと。」
サ「急きょのものだから中身はそれほどね。」
レ「こらサナ言わない!」
シ「まあ、とにかく見てくれ。」
2学期が始まり少し経った龍空高校では、高校の定番大イベントが近付いていた。
「え~と、今日のHRは、『龍空祭』で何をするかを決めたいと思います。」
ナナリー先生が黒板に龍空祭と書いて話す。
「龍空祭?」
アレンが隣のシャインに尋ねる。
「ただの文化祭だよ。それをここでは龍空祭って言うんだ。」
シャインが興味なさそうに答える。
「お祭ってことですか?」
「お前、文化祭知らないのか?」
「はい。家庭の事情により、小、中学校行ってなかったもんで。」
アレンがあははと笑いながら答える。
「そうだったの!?」
そこにエアルが割り込んできた。
「よく高校に入れたね。」
「頑張ったんですよ。まあ、元々頭はよかったんで。」
アレンが振り返りながら答える。
「何よその言い方…」
エアルが口を尖らしながら怒る。
「こらそこ!私語をしない!」
いつの間にか教卓に立っていたHR代表の女子がエアル達を怒る。
「では、今からこのクラスの出し物を決めたいと思います。何か案がある人いませんか?」
HR代表がクラスを見渡す。すると、よくクラスに1人はいる盛り上げ役の男子が手を挙げた。
「はい、どうぞ。」
HR代表があてる。
「はい!女子達のセクシー写真を展示したら…」
「却下!!」
男子が元気いっぱい提案したが、女子から筆箱や椅子が投げつけられ、撃沈した。だが、この発言からいろんな意見が飛び交い始めた。
「展示系よりやっぱ模擬店したいよな。」
「メイド喫茶とか?」
「ベタだし2組の連中がするって噂だぞ。」
「じゃあ犬や猫と遊べるカフェとかは?」
「誰が犬や猫を集めんだよ。」
「でもやるからには派手がいいだろ。」
「やっぱりセクシーは外せない!」
ホントにいろんな意見が飛び交う。
「楽しそうなのだったら何でもいいよね?」
エアルがレビィに尋ねる。
「何でも…とはいかないよ…シャインは何がいいの?」
レビィが興味なさそうに座っているシャインに話をふる。
「メイド喫茶…犬や猫…派手…セクシー…」
シャインがぶつぶつと呟く。
「シャイン?」
レビィが首を傾げる。
「女子の許可がおり、本気で稼ぐ気があるんだったら、1つ思い付いた。」
シャインがサラッと言う。
「どんなのどんなの?」
エアルが興味津々で聞く。
「『アニマル喫茶』。」
「アニマル喫茶?」
レビィとエアルが口を揃えて尋ねる。
「そっ。メイド喫茶とかは周りで言っている通りベタなものだ。ほぼ間違いなく被る。だけど稼ぎたいんならそういう系が一番だろ?」
「そうだけど…具体的に何やるの?」
レビィが聞く。
「やることはメイド喫茶とかと変わりはないが、服がメイド服じゃなくて犬や猫の格好するんだ。」
「コスプレってこと?」
エアルが聞く。
「ま、そんなことだ。」
「面白そう!それやろう!はい」
エアルが手を挙げた。
「はい、どうぞ。」
HR代表がエアルをあてる。
「シャイン、みんなにさっきの話して。」
「俺かよ…」
そう言いながらもシャインは席を立ち、さっきのアニマル喫茶のことを説明した。それを聞いたクラスの男子は2秒で賛成した。だが、やはり女子はそんなにのる気ではなかった。
「じゃあ、条件をつけよう。」
のる気じゃない女子達にシャインが条件を持ちかける。
「稼いだ金の60%が女子、40%が男子だ。」
「それだけじゃね…」
まだ女子達はのる気にならない。
「じゃあもう1つ付けよう。アレン、好きに使っていいぞ。」
「ええ~〜〜!?」
アレンがものすごく驚く。そんなこと無視され、条件を聞いた女子達が承諾した。
「よし!やるからにはジャンジャン稼ぐぞー!!」
「おおーー!!」
全員拳を挙げ、一致団結した。だだ1人を除いて、
「僕は男だよ〜〜〜」
アレンの苦情は誰の耳にも入らなかった。
放課後になり、龍空祭のための準備が始まった。シャイン率いる男子組は椅子と机を前にしいる教室の地べたで作業している。
「なんで僕が……」
アレンがまだ嘆いている。
「悪いなアレン、ああ言うしか女子達が納得してくれなかったんだ。」
紙の輪を繋げながらシャインが反省の色なしで謝る。
「はぁ~」
アレンもテンションが上がらないまま紙の輪を繋げる。
「飽きてきたな~この作業…」
スノウも紙の輪を繋げながらため息をつく。
「仕方がないですよ。これを作れという命令がくだったんですから。」
こちらも紙の輪を繋げているヒューズがスノウに言う。
「そんなの奴隷じゃん…あー給料ぐらい出せー」
スノウがバタッと倒れながら文句を言う。
「はいはい後で何か買ってあげるから作業を続ける。」
教室に入ってきたエアルが注意する。
「マジか!約束だぞ!」
スノウが起き上がり、作業を再開した。
「ホントに昔から単純ね。」
せっせと輪を繋げるスノウを見ながらエアルが呟く。
「何か言ったかエアル?」
シャインが聞く。
「ううん。何でもない。」
エアルが笑って誤魔化した後、自分がここに来た目的を思い出した。
「あっ!そうそう、私アレン呼びに来たんだった。」
「僕ですか?」
アレンが自分を指しながら聞く。
「アレンの着る服決めるの。来て!」
アレンはエアルに腕を掴まれ、無理矢理連れていかれた。シャインやスノウはそれを手を振って見送った。
レビィ率いる女子組は被服室で自分達が着る服を作っていた。
「できた!」
1人の女子が縫った服を掲げて叫ぶ。その声に他の女子も集まった。その服はミニスカートでけっこう大胆な服にふかふかの毛が付いていた。
「かわいい~」
「犬ね〜」
「誰が着る?」
女子達が話し合っているところに、
「みんな~アレン連れてきたよ!」
エアルがアレンを連れてきた。
「いた!着る人!」
アレンを見て女子全員がハモった。エアルはなんのことかさっぱりで首を傾げるが、アレンは犬の服に気が付き、嫌な予感しかしなかった。
数十分後…
「かわいい~〜〜!」
また女子全員がハモる。
「は、恥ずかしい…」
アレンは嫌な予感通り、大胆犬服を着せられた。頭には犬耳を付けられた。
「すごくかわいいよアレン!」
レビィが褒める。
「こ、この服のスカート…短すぎない?」
アレンがミニスカートを押さえながら聞く。
「それがいいんだよ!セクシー&エロって感じ!」
エアルが親指をグッ!と立てる。
「はぁ…」
アレンは何を言っても無駄なことに気が付き、抵抗するのを諦めた。
「これで女子の客も来そうね。」
サナがアレンを見ながら言う。それを聞いたエアルが何かを思い付いた。
「そうだよ!私達だけがやったって男子しか来なくて女子が来ないよ。」
「じゃあどうするの?」
レビィが尋ねると、エアルが不吉な笑みをして女子全員を集合させ、何かを話した。それを見ているアレンは、何かシャイン達に危険が迫っている感じがした。
その頃シャイン率いる男子組は地道な作業を終わらし、一休みしていた。
「疲れた~」
シャインが窓の外を見ながら背伸びする。
「もう日が暮れそうですね。」
ヒューズが空を見る。
「じゃあ今日は終わりだな。」
スノウが終〜了〜と他の男子に伝え、男子組の仕事が終了した。ぞろぞろと男子達が帰る中、
「シャイン、お前家に帰るのか?」
スノウが尋ねる。
「いや、龍空祭が終わるまではお前の部屋に居させてもらうよ。」
「わかった。お前は地べたで寝ろよ。」
「えっ!?」
「いや、「こいつ何言ってんだ。」みたいな顔で見んな。」
スノウがツッコむ。
「まあ、仕方がない。」
シャインが諦める。
「当たり前だ。」
3人が帰ろうとした時、教室のドアがガラガラと開けられ、
「いた!シャインちょっと来て!」
レビィが現れた。その姿を見た3人は思わず鼻血が出そうになった。
「お、お前…その格好…」
シャインが顔を赤くしながら聞く。今のレビィの服装は、ふかふかの毛が付いているショートパンツに胸元がかなり大胆に開いている服で、模様は猫柄になっている。
「あっ!これ?かわいいでしょ?」
レビィがニャンとポーズをする。
「恥ずかしくないのですか?」
ヒューズも顔を赤くしながらレビィに尋ねる。
「ん?別に?」
レビィが首を傾げながら答える。
「意外とレビィって羞恥心ないんだな。」
スノウがシャインに囁く。
「らしいな。」
シャインが同意する。
「そんなことより早く来て!」
レビィがシャインの手を掴み、被服室へ連れていく。それをスノウとヒューズは見送った。
「シャイン連れてきたよ。」
被服室に着くと、女子達がシャインを囲んだ。
「で、俺に何の用だ?」
シャインは怯まず尋ねる。
「あのね、考えたんだけど、私達だけがやったって男子しか来ないでしょ?」
女子達の中からエアルが代表で話す。
「まあ、そうだが…」
何か企んでいる女子達を見て、シャインは少し後ずさる。
「だから、女子の客を呼ぶために…」
エアルが出したのは派手な服で、虎の柄になっていた。
「着て!」
虎柄の服を押し付ける。
「マ、マジか…」
シャインが断ろうとしたが、女子達の一斉攻撃により撃沈した。
数十分後…
「カッコいい~」
またも女子達がハモる。
「ちっ、何で俺が…」
シャインが呟く。その姿は人獣のようで、ちゃんと牙も耳も付いてある。
「俺料理担当だっただろ?」
「シャインはただのモデル。でも、人手が足りなくなったらお願いね。」
エアルが頼む。
「やだよ。」
シャインが断ると、エアルはシャインの肩をポンと持ち、
「お願い。」
もう一度優しく頼む。だが顔は全く笑っていない。
「わ、わかった…」
シャインは顔がひきつりながら承諾した。
「ありがとシャイン。」
エアルは笑顔で礼を言う。
「みんなー、今日は終了。家や寮に帰ってー」
そこにナナリー先生が入ってきてみんなを帰らす。
シャインが制服に着替えていると、アレンがいないことに気が付いた。
「アレンは?」
「あれ?さっきまでいたんだけどな~」
エアルが辺りを見渡す。
「どうしたの?」
そこに着替え終えたレビィが戻ってきた。
「レビィ、アレン知らないか?」
「アレンならさっき帰っていったよ。」
「そうか。」
「なんか用あったの?」
「いや、ただ気になっただけだ。」
シャインも着替え終え、3人は寮に戻っていった。
アレンはすぐに着替え、屋上で誰かに電話をしていた。
「あら珍しい、あなたから電話してくるなんて。」
電話の相手は前の大人の女性である。
「少し気になることを聞きたくてね。」
「『フォーグ』なら、龍空高校の近くで目撃情報が入っているわよ。」
「意外と早く動き始めたね。」
「ええ、あの人達の『計画』にはまだ早いと思うんだけど、気を付けてね。」
「うん。ありがとう。」
アレンが電話を切る。
(せめて龍空祭が終わるまで何もしないでくれよ…)
アレンは沈む太陽を見ながら願った。
ス「ホントに準備だけで終わったな。」
エ「でも私は楽しかったよ。」
レ「私も。」
シ「お前らは…俺らはずっと飾り作ってただけだぞ。」
ヒ「腰が痛くなっただけです。」
エ「まあまあ、次回から龍空祭始まるんだから元気出して行こう!」
シ「そういや、あの男子版のコスプレ、誰が着るか決まったのか?」
エ「シャインとスノウはほぼ決定。」
シ・ス「ふざけんな!」
エ「では次回の龍空祭、お楽しみに!」
シ・ス「無視かよ!」