2話 学園の幽霊?
今回の話は学園系のベタなものですが、どうぞ見てください。
ペタッペタッと上履きの音が響く暗い校舎の中を1人の男子生徒が歩いていた。寮暮らしの男子生徒は、教室に忘れ物をしたらしく、それを取りに行くために夜の学校に入った。
ビクビクしながら教室に入り、忘れ物を取って帰ろうと廊下を進んでいると、男子生徒の後ろから、ガシャッ、ガシャッと武士の鎧の音がしてきた。その音に気が付いた男子生徒がそ~っと振り返ると、少し透けている鎧がこっちに向かって歩いて来ていた。
「うわぁぁぁぁーー!」
男子生徒はその場から一目散に逃げ出した。
「ねえ聞いた?」
「聞いた聞いた。」
「なんか怖いな。」
そんな言葉がいろんなところで飛び交う学校に登校してきたレビィが首を傾げながら教室に入る。
「なんの騒ぎなのエアル?」
自分の席にカバンを置きながら隣に座っていたエアルに聞く。
「ついにこの学校に出たんだよ。」
少し怯えた口調でレビィの肩を持つ。
「何が出たの?」
レビィがさらに聞く。
「ゆ…幽霊が出たんだよー!」
エアルが叫ぶ。
「えーーーー!」
それを聞き、レビィが驚く。
「どんな幽霊が出たの?」
まだ驚いているレビィがさらに聞く。
「なんか戦国時代の武士の幽霊だって。」
エアルが説明する。
「そうなんだ。でも本当なの?」
少しレビィが疑う。
「本当だって!ね、『スノウ』?」
エアルが自分の意見と一緒の人を探すように、細い通路を挟んで、エアルの隣の席の男子生徒に話をふる。
「ん?俺は信じねぇよ。」
足を机の上に置いて、PSPをしながら答える。
この男子生徒の名前はスノウ・シルバー。肩まで伸びた銀髪の無造作ヘアーに黒色の瞳。シャインと同様カッターシャツをズボンから出ていて、ネクタイをユルユルにしている。手にはDAIGOのような指が出るグローブをはめている。
「え~スノウも~何で皆信じないの?」
エアルが文句を言いながら、信じている人を探す。そして見つけたのは、スノウの前の席、つまりシャインの隣の席にいる女子生徒に話しかける。
「ねぇ、『サナ』は信じるよね?」
話しかけられた女子生徒は、難しそうな本を読んでおり、その本をパタリと閉じてこちらを向いて、
「私が非科学なこと、信じるわけないでしょう。」
と答えてまた本を読み始めた。
この女子生徒の名前はサナ・クリスタル。金髪のショートヘアーに金色の瞳。制服をキッチリと着ていて、前髪が目に入らないように赤いヘアピンをしていて、赤い眼鏡をかけている。
「どうして皆信じないの〜?」
エアルが今にも泣き出しそうな顔で訴える。
「どうしたのですか皆さん?」
そこに、1人の男子生徒が割り込んできた。
「あっ!『ヒューズ』!ヒューズは信じるよね?」
この男子生徒の名前はヒューズ・クオーツ。肩まで伸びた茶髪のキレイなヘアーに茶色の瞳。サナ同様、制服をキッチリ着ていて、ごく普通の眼鏡をかけている。
「幽霊事件のことですか?」
エアルに聞き返しながら、スノウの隣の席に座る。
「そう!」
エアルが頷く。
「う~ん…私はどっち付かずですね。」
ヒューズが答えると、エアルがため息をする。
「はぁ~それは信じないってことね。何で私の周りは非現実のことを素直に信じないの?」
落ち込んでいるエアルを励まそうと、レビィは今までずっと寝ていたシャインに話をふる。
「ねぇ、シャインは幽霊事件のこと信じているの?」
シャインの体を揺さぶり起こす。
「ん~?信じてねぇ。」
さらりと答える。
「やっぱり~」
エアルがさらに落ち込む。
「そんなに気になっているんだったら、実際に自分の目で確かめろよ。」
何にも考えずにさらりと言った提案にエアルが乗った。
「そうだよ!自分たちの目で見たらあんたたちも信じるでしょ?」
エアルが皆の顔を見る。
「いいよ、めんどくせぇ。」
スノウが拒否る。
「あれ~もしかしてビビってるの?」
エアルが挑発のような口調で言う。
「はぁ?ビビってねぇし。」
簡単に乗せられたスノウ。
(ガキか…)
シャインがあきれる。
「じゃあ、今日の夜、昇降口に集合ね。」
エアルが言うと、チャイムがなり、授業が始まった。
その夜、誰もいない暗い校舎の昇降口に制服から私服になった6人が集合した。
「よーし、見つけるぞー!」
気合いの割にはスノウの後ろに隠れているエアルが小さく叫ぶ。
「ちょっと、何で私まで付き合わなきゃいけないのよ。」
文句を言っているのはサナである。
「別に私はかまいませんよ。」
少しわくわくしながら言うのはヒューズである。
「あんたは自主的に来たからいいけど、私は連れてこられたのよ。」
文句が止まらないサナ。
「たく、もう来たんだから、諦めろ。」
シャインがそう言い、ようやくサナが止まった。
「よし、行くぞ!」
シャインの言葉に他の皆がオーと言い、校舎に入っていった。
校舎の中は予想通り暗く、明かりは窓から入ってきている月の光だけである。シャインたちは武士の鎧が目撃された廊下を歩いている。
「ど、どこだ~?」
エアルが完全にビビってる声でレビィにしがみついている。
「エアル、歩きにくい。」
レビィが注意するがエアルは離れようとしない。
「お前が一番ビビってんじゃん。」
スノウがエアルを見ながらあきれる。
「お前が一番だバーカ。」
シャインがさらりと突っ込む。スノウの顔は滝のように汗が流れている。
「だ、だってよ、本当に出たらさすがにヤバくないか?」
思わず本音が出る。
「はいはい。」
簡単に同意して、シャインは辺りを見渡す。
「いないな。」
「やっぱり勘違いだったのよ。」
まだ不機嫌なサナが言った瞬間、廊下のさきからガシャッガシャッと音が響いてきた。その音が聞こえた瞬間、さすがのシャインやサナも固まった。
「な、何!?」
エアルがレビィとしがみつき合いながら聞く。すると、自分達の前から鎧が歩いて来ていた。その鎧は大きくて赤く、顔の部分は鬼の仮面になっていた
「で、出たーーーー!!!!」
エアル、レビィ、スノウが一斉に叫ぶ。
「静かにしろ。」
叫ぶ3人に注意しながらシャインはそっと刀に手をやる。
「誰だ!意思があるなら答えろ!」
その言葉に反応したのか、鎧から、渋いくていかにも武士らしい声がしてきた。
「我、戦国の時代から来たし武将。我を奮い立たせる侍を探している。お主の力、試さしていただく。」
鎧武将は刀を抜き、刃先をシャインに向ける。
「面白れぇ。」
シャインが少しニヤけて、刀を抜いた。
「ちょっと!もしかして1人で戦う気!」
サナが止めるがシャインは聞く耳をもたない。
「売られたケンカは買うまでだ。」
「もう勝手にして。」
サナがはぁ~とため息をする。
「でもヤバくなったら助けるわ。」
その言葉に軽く頷いて、シャインは鎧武将に近づく。
「構えろ。」
鎧武将が命令する。
「言われなくても。」
そう言って構える。次の瞬間、シャインが不意討ちをした。が、その不意討ちを刀で簡単に止めた。
「侍たるもの不意討ちとは情けない。」
鎧武将が少しバカにする。
「拍子抜けすんのはまだ早いぞ。」
ニヤッと笑い、間合いを開け、スッと力を抜いた。次の瞬間、一気に廊下を蹴った。
「[疾風斬]!!」
名前の通り、疾風ような速さで、鎧に強烈な一太刀をあびせ、後ろに回る。
「むっ…見事な技。だが、まだまだ。」
ぐるりとシャインの方を向く。
「さすがに怯みもしないのはショックだな。」
少し落ち込んだ顔になるシャインに鎧武将が刀を構える。
「次は私から行かせてもらうぞ。」
鎧武将がシャインに走り出し、隙のない動きで止まることなく刀を振る。
(やべぇ、防御するだけでやっとだ…)
すごいラッシュにシャインはただ受けるだけである。そして、刀を払われ、腹ががら空きになってしまった。
(しまっ…!)
次の瞬間、鎧武将は柄で腹を突き、吹っ飛ばす。吹っ飛ばされたシャインは廊下の端の壁に叩き付けられ、止まった。
この様子をシャインが今いる端の反対側であと5人が見ていた。
「ヤバくない、シャインの奴?」
エアルが心配そうに言う。
「助けに行く?」
レビィが刀に手をやる。
「ちょっと待って。」
レビィを止めるサナは顎に手をやり、何かを考えている。
「サナも気が付きましたか。」
ヒューズが聞く。
「ヒューズも?」
聞き返しにヒューズが頷く。
「何がだ?」
スノウが2人に尋ねる。
「あの鎧武将に‘触りすぎ’ではないですか?」
ヒューズの言葉に3人が首を傾げる。
「もしあの鎧武将が幽霊なら、基本的物理攻撃は効かないはず、なのにシャインの攻撃が普通にくらったし、シャインもあいつの刀を普通に受けていた。」
「実体がある幽霊とか?」
レビィの推理にサナが首を振る。
「幽霊に実体があればそれは幽霊じゃないわ。」
「じゃあ、あの鎧武将は何なんだよ?」
少し考え、サナがハッ!と思い付く。
「『召喚魔』!」
サナが言った言葉にヒューズ以外が頭の上にハテナマークを浮かべる。
「召喚魔っていうのは、召喚士が召喚できる魔物のこと。」
ヒューズが説明する。
「じゃああの鎧武将は誰かに召喚された魔物ってことか?」
スノウの質問にサナとヒューズが頷く。
「とりやえず話はここまで、今はシャインを助けるわよ。」
サナの言葉に4人が頷く。
そうこうしている内も、シャインは鎧武将と攻防していた。
「どうした、最初より刀に重みを感じないぞ。」
シャインの攻撃を受けながら鎧武将が挑発する。
「うるせぇ…俺はまだまだいけるぜ…」
息を完全に切らしても、シャインは一歩も引かずに笑って見せる。
「そうか、ならばこれで終わりだ。」
鎧武将はシャインから少し離れ、刀で円を描く。その瞬間、シャインが膝から崩れた。
(もう、ダメか…)
「[満月狩り]!!」
鎧武将が強烈な横振りの一太刀をしようとしたが、鎧武将はしなかった。いや、できなった。鎧武将の腕には一本の矢が突き刺さっていた。
「命中です。」
矢を放ったのは、ヒューズであった。
「さすが弓道全国大会3連覇の腕前。」
スノウが誉めながら、鎧武将に走り出す。
「食らいやがれ![フレイムナックル]!!」
こちらに振り向いた瞬間を炎に包まれた拳で鬼の仮面を殴る。鎧武将がグラリとよろける。
「今だレビィ!」
「うん!」
スノウの合図にレビィがシャインに近づく。
「行くよ!」
シャインの手首を掴み、スノウと共にサナ達がいる所に走り出す。
「むっ…逃がさん!」
鎧武将が後ろから追いかけて来たが、ヒューズが矢で足止めをする。その間にレビィ達がサナ達の所についた。
「大丈夫?」
エアルがいろんなところに切り傷があるシャインを治癒魔法をかける。
「矢がなくなった。」
ヒューズがそう言うと、サナが魔法を唱え始めた。
「どれだけもつか…[サンダーサークル]!!」
すると、鎧武将の足下に黄色の魔法陣が現れ、雷の牢で鎧武将を拘束する。
「まだ!」
サナがエアルに聞く。
「もう少し!」
それから数十秒たった時、サナの雷の牢が破られた。
「しまった!」
サナが半分あきらめた瞬間、サナの隣を何かが走って行った。
「サンキュー皆、あとは任せろ!」
それはシャインだった。シャインはそのまま鎧武将に向かって突進する。そして、鎧武将の目の前でシャインがフッとかがんだ。
「むっ…」
その動きに鎧武将が下を見た瞬間にシャインを飛び越えるように、後ろから刀を構えたレビィが飛び出してきた。
「何!?」
鎧武将が気が付いた時には、レビィは鎧武将の腹に強烈な一太刀をあびせた。
「これで終わりだ![閃風波]!!」
ゼロ距離の斬撃を受けて、鎧武将の鎧が砕けた。
「見事なり…最後に我が心に火を付けてくれた。お主らは真の侍だ…」
鬼の仮面なのだが、シャインは鎧武将が笑っているように見えた。そして、鎧武将は消えてしまった。
消えるのを見届けると、シャインはバタリと倒れた。
「もう、まだ完治してないのに突っ込んで。」
エアルが怒りながらシャインに治療を再開した。そこに、この騒動に気が付いた先生達が駆けつけた。その中からナナリー先生が出てきた。
「あなた達何やっているの!」
ナナリー先生が6人に怒る。
「先生、これで幽霊騒動は終わりましたよ。」
シャインが少し微笑む。
「もう、とりやえず今は病院に行くわよ。あなた達の罰はそれから。」
ナナリー先生に連れられ、6人は病院を向かった。
この騒動を起こした犯人達の1人は双眼鏡で見ていた。
「ナハハハハ!やりますね〜あいつら。特にあなたが言っていたシャインってやつ?想像以上だぜ。」
少し小柄で桜色の髪をした男が言う。
「だが、私の召喚魔の中でも下に入る魔物ごときにあれほどやられるとは、悲しい。」
眼鏡をかけた黒髪の男があきれる。
「クハハハハ!まだまだこんなもんじゃなねぇさ。なぁ、シャイン?」
この3人のボスらしき、金色の短髪の男がニヤリと笑う。
「行くぞてめぇら。」
3人は夜の闇に消えていった。
<訂正>
1―A→1―1にします。
龍空高校の説明、その2
・クラスは10組まであり、1組〜5組までが魔法科、6組〜10組までが普通科である。
最後に出てきた男達は追々出して説明しますので待っていて下さい。
では、次回をお楽しみに!