第7話
入社して一週間。
ラビィはようやく、社内の廊下で迷わなくなっていた。
「おはようございますっ」
元気よく挨拶をしながらプロジェクトルームに入ると、すでにナナミが端末を操作していた。
「おはよう、ラビィちゃん。もう慣れた?」
「まだちょっと頭がパンク気味ですけど……楽しいです!」
ナナミはくすっと笑う。
「あの、ナナミさん。前作と今作のシステムの違いって、ちゃんと理解しておきたくて」
「いい心がけね。椅子持ってらっしゃい」
ナナミはモニターを操作し、二つのタイトルロゴを並べて表示した。
ラビィはナナミの隣に椅子を並べモニターを見つめる。
《クロノス・レガリア》
《クロノス・レジェンズ》
「まず共通点からいくね」
ラビィはごくりと唾を飲む。
「メンバーの消失は復元不可。これは前作と同じ」
ラビィの表情が少し引き締まる。
「それと、同一人物・同一個体からのデータ抽出は不可。ただし同一種族はOK。これも継続仕様」
「なるほど……」
ナナミは画面を切り替える。
「で、一番大きな変更点」
ラビィが身を乗り出す。
「前作はデータを直接“現地”まで行って調達していたけど——」
「はい」
「今作は、ゲーム内でデータ調達が可能になったの」
ラビィの目が丸くなる。
「そーなんですかっ!?」
声が思った以上に大きくなり、ナナミが慌てて人差し指を立てた。
「しーっ」
「あ、すみません……!」
ナナミは笑いながら続ける。
「あと新要素としてね。ゲーム内に登場するキャラクターを、全員メンバーとして使用可能にする予定なの」
ラビィの思考が止まる。
「……え?」
「偉人や一般人、魔物や神獣。それに天使、悪魔、神様、魔王様クラスも理論上は仲間にできるわよ」
ラビィの耳がぴんっと立つ。
「うぉーーー!! それはスゴイ!!」
椅子がガタンと鳴る。
その瞬間。
「ラビィさん」
背後から落ち着いた声。
フィニスだった。
ラビィはビクッと固まりゆっくり振り向く。
「ラビィさんは、あくまで、あくまでもプレイヤーではなく運営側ですからね」
「はっ」
現実に引き戻される。
「わ、忘れてました……」
苦笑いを浮かべるラビィに、室内からくすくすと笑い声が漏れる。
その時、端末から顔を上げた努が、おずおずと口を開いた。
「デ、データの方も……かなり調整できてきてて……」
全員の視線が集まり、努はびくっとする。
「ら、来週頭から……データテスト、始めるつもりだよ」
ラビィの目が輝く。
するとフィニスが続けた。
「ベータテスターは100人、すでに募集完了しています」
ラビィの背筋が伸びる。
「ラビィさんは101人目として、来週のテストに参加してもらいます」
「は、はい!」
返事は完璧だった。
だが——
口元がゆるみきっている。
どう見ても楽しみで仕方ない顔だった。
フィニスがじっと見る。
「ラビィさん」
「はっ! す、すいません……!」
慌てて真顔を作るが、耳がぴくぴく動いている。
ナナミが笑いをこらえきれず肩を震わせ、マヤは小声で「分かりやすいっスね」と呟き、ショーンは呆れたように肩をすくめる。
プロジェクトルームに、和やかな笑いが広がった。
運営だけど。
元トッププレイヤー。
その事実は、どうやら簡単には消えてくれないらしい。
ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。
《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!
更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




