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第6話

初出勤を終えたラビィは、書類や資料などでいっぱいになったカバンを抱えながらアパートのドアを開けた。


「た、ただいま……って一人だった」


誰もいない部屋に自分の声だけが響く。


慣れない仕事、初めて聞く専門用語、次々渡される資料。頭の中はもう限界だった。


「社会人って……すごい……」


書類をテーブルに置き、スーツを脱ぐ。

ふわりとした部屋着に着替えると、ようやく肩の力が抜けた。


けれど次の瞬間には、もう端末を手に取っている。


「よし……」


ログイン。


視界が開けると同時に、目の前にウィンドウが表示される。


【重要告知】

クロノス・レガリアはサービス終了まで、あと半年となりました。


ラビィの呼吸が止まる。


フィニスが言っていた通りだった。


でも……実際にその文字を見るのは、まったく別の重さがあった。


「あぁ……」


胸の奥がじわりと熱くなる。


「ほんとに……終わっちゃうんだ」


しばらく立ち尽くしたあと、ラビィ一行はいつも通りクエストを受注した。


モンスターを倒し、ダンジョンを駆け、報酬を受け取る。


身体は動いているのに、心はどこか上の空だった。


夜も更け、メンバーたちは拠点へ戻っていったが、ラビィは一人で街を歩く。


原始区画の草原。


風に揺れる長い草。

満天の星空。


ラビィはそのまま地面に寝転び、空を見上げた。


「……ここ、好きなんだよね」


静かな世界。

サービス終了のことなんて、嘘みたいに思える。


ザッ……ザッ……


草を踏む足音。


ラビィはゆっくりと起き上がった。


「おや? ラビィさん。お久しぶりですね」


ラビィは足音の正体がラストだと気づく。


「ラストさん……お久しぶりです……」


ラストはラビィの表情を見て、首をかしげた。


「おや?元気がありませんね。どうされましたか?」


ラビィは少し迷ってから言った。


「ラストさん、運営の方だったから……知ってましたか? サービス終了のこと……」


ラストは一瞬だけ視線を伏せる。


「あぁ、それで元気がなかったのですか」


ゆっくりとラビィの隣に座る。


「まあ、運営と言っても、すべてを把握しているわけではないので……」


夜風が二人の間を通り抜ける。


ラビィは小さく笑う。


「終わっちゃうんですね……この世界」


ラストは空を見上げたまま言った。


「ラビィさん」


その声は、どこか優しかった。


「最後まで、貴女らしく元気でいてください」


ラビィは目を瞬く。


「……うん」


ラストは小さく、何かを呟いた。


「次へと……」


「え?」


ラビィが顔を向ける。


「ラストさん、今“次”って言いました?」


ラストは一瞬固まり、すぐに笑顔を作った。


「えっ? いえ、“月が綺麗だ”と言ったのですよ。ハハハッ!」


「そ、そうなんだ……?」


どこか誤魔化された気もしたが、ラビィは深く考えなかった。


ラストは立ち上がる。


「さあ、そろそろお休みにならないと。明日のお仕事に差し支えますよ」


ラビィもはっとして立ち上がる。


「あっ、そうだった! もう社会人だった!」


「ではまた」


「はい! またね、ラストさん!」


光に包まれ、ラビィの姿が消える。


ログアウト。


草原に一人残ったラストは、消えた場所を静かに見つめていた。


そして、ほんのわずかに手を振る。


端末を床へ置きラビィは、ベッドに倒れ込んだ。


「ふあぁ……」


まぶたが重い。


その時、ふと違和感がよぎる。


「あれ……私、ラストさんに就職したこと言ったっけ?」


少し考えて、首を振る。


「……ま、いっか。誰かから聞いたのかな」


深く息を吐き、布団に潜り込む。


サービス終了まで、あと半年。


終わりが近づいている。


でもまだ、物語は続いている。


ラビィは静かに眠りへ落ちていった。

ここまでお読み下さり本当にありがとうございました。


《ブックマーク》や《評価》を頂けると大変励みになります!


更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。


平日:7時頃、19時頃の1日2話

土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話

です。


また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!

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