第3話
ラビィの物語の正当続編となっております。
前作を、まだお読みで無い方は是非……
《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》もよろしくお願い致します!
それではお楽しみください!
クロノスフィア本社の巨大ホールには、新入社員たちがずらりと並んでいた。
惑星も種族も様々な若者たちが、同じ紋章の入ったスーツに身を包み、少し誇らしげに、そして緊張した面持ちで前を向いている。
壇上での式辞が終わり、拍手が広がる。
「これより所属部署ごとに案内します」
アナウンスが流れ、新入社員たちは順番に誘導されていく。
ラビィは胸の前でそっと手を握った。
(ついに始まるんだ……社会人生活)
列が進み、廊下へ出たその時だった。
前方に立つ一人の女性の姿が目に入る。
すらりとした立ち姿。整ったスーツ。落ち着いた視線。
ラビィの心臓が跳ねた。
(あっ……!)
面接の時の、あの女性面接官。
女性はまっすぐラビィを見て、静かに口を開いた。
「ラビィ・ルナファさん。入社おめでとう」
ラビィは慌てて姿勢を正す。
「は、はい!」
「私の名前はフィニス・アルヴェイン。貴女が今日から働く部署の責任者をしている者です。今日からよろしくお願いしますね」
その名を聞いた瞬間、ラビィは目を瞬かせた。
(フィニスさん……)
「よ、よろしくお願いします!」
フィニスは小さく口元を緩めた。
「そんなに固くならなくて大丈夫よ」
その微笑みは、面接の時よりもどこか柔らかかった。
「では行きましょうか」
フィニスの後を、ラビィは小走りで追いかける。
本社内部の通路は広く、天井も高い。
窓の外には金色の雲海が広がり、ここが金星であることを改めて実感させられる。
けれど進むにつれ、周囲の雰囲気が少しずつ変わっていった。
人通りが減り、静かなエリアへ入っていく。
(あれ……? 他の部署と方向違うような……)
ラビィの胸に、小さな緊張が芽生える。
やがてフィニスが足を止めた。
一枚のプレートが、ドアの横に表示されている。
《新プロジェクト(仮)》
ラビィは思わず声に出した。
「新……プロジェクトですか?」
フィニスは振り返り、穏やかに言う。
「ええ。今日からここが貴女の職場よ」
ラビィの耳がぴんと立つ。
「わ、私が……ですか?」
「まあ、中に入って。説明するわ」
フィニスがドアに手をかざすと、自動ドアが静かに左右へ開いた。
中から聞こえてきたのは、熱のこもった議論の声だった。
「だからその同期処理だと誤差が出るって言ってるだろ!」
「でも演算負荷が跳ね上がるんです!」
「だったらアルゴリズムを——」
部屋の中央には大型のホログラムモニター。
立体映像のデータが空中に投影され、その周囲で四人の社員が議論を交わしていた。
男性二人、女性二人。全員が真剣な表情でデータと向き合っている。
フィニスが一歩前に出る。
「ちょっとストップ」
その一言で、室内の動きが止まった。
四人の視線が、一斉に入口へ向く。
フィニスはラビィを手で示した。
「今日からこのプロジェクトに加わる新人よ」
ラビィはびくっとしながら前に出る。
視線が集中する。
喉がひりつくように緊張する。
それでもラビィは深く頭を下げた。
「ラビィ・ルナファです! 今日からよろしくお願いします!」
静かな間が落ちる。
メンバーたちはラビィを観察するように見ている。
その中でただ一人、フィニスだけが穏やかな目でラビィを見つめていた。
まるで、最初からここに来ることが分かっていたかのように。
ラビィの知らないところで、何かがもう動き始めていた。
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