第21話
クロノス・レジェンズ正式サービス開始日。
社内は祝賀ムード……になるはずだった。
「はい、ラビィさん!ボーっとしてないでこれお願い」
フィニスの声が飛ぶ。
「は、はい!」
受け取った資料の山を抱えた瞬間――
「おーい、ラビィ!こっちちょっと手伝って〜!」
今度はショーンの声。
「は、はーい!」
右へ左へ走り回りながら、ラビィは小さく呟いた。
「な、なんでこんなに忙しいの?サービス開始したんだよね……?」
「ラ、ラビィさん。このデータ何ですけど……」
モニターの向こうから努が申し訳無さそうに呼ぶ。
「すぐ行きまーす……!」
気付けば午前中は一瞬で過ぎ去っていた。
ようやくランチの時間になり、ラビィはぐったりしながらナナミと会社近くの飲食店へ入った。席に着き、注文を済ませると、ラビィはテーブルに突っ伏す。
「ナナミさん?なんでサービス開始したのに、あんなに忙しいんですか……私てっきりサービス開始後はヒマになるんだと思ってましたよ……」
ナナミはくすっと笑った。
「アハハ!だよね。私も入りたての新人の時はそうだと思ってたよ」
「えっ、ナナミさんもですか?」
「うんうん。じゃあ、ラビィちゃんに質問ね?」
「はい。なんですか?」
「面白いゲームでも、ずっと中身が変わらなかったら何年も続ける?」
ラビィは少し考える。
「うーん……何年もは無理ですかね」
「じゃあ、何年も続けるにはどうすれば良い?」
「新しいイベントとか新要素があれば……あっ!」
「そう」
ナナミはにっこり笑った。
「私たちは、始まったら終わりじゃないんだよ。ゲームをプレイしている人たちと同じで、ゲームを続けてもらう為にお仕事を続けるの」
その言葉を聞いた瞬間、ラビィの頭の中にレガリア時代の記憶がよみがえる。
大型イベント告知の日の高揚。
新クエスト解放のワクワク。
仲間たちと深夜まで攻略を語り合った日々。
「……そっか」
ラビィはゆっくり顔を上げた。
「私!これからも頑張ります!」
「うんうん、その意気だよ」
「……ところで」
ラビィは少し声を潜めた。
「私ってレジェンズのプレイってしても良いんですかね?」
ナナミは一瞬きょとんとしたあと、吹き出した。
「あー……ラビィちゃん、もしかして。サービス開始したらヒマになって、レジェンズ遊び放題とか思ってた?」
ラビィは目を逸らした。
「……ちょっとだけ」
ナナミの笑い声が店内に響く。
「運営ってね、プレイヤーより忙しいんだよ」
ラビィは運ばれてきたランチを見つめながら、小さく拳を握る。
――元トッププレイヤー。
――現在、絶賛社畜進行中。
レジェンズの本当の冒険は、どうやらログイン前から始まっているらしかった。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




