第1話
ラビィの物語の正当続編となっております。
前作を、まだお読みで無い方は是非……
《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》もよろしくお願い致します!
それではお楽しみください!
クロノスフィア本社の巨大ロビーを、ラビィは小さな足取りで歩いていた。
高すぎる天井。光を反射する白い床。
行き交うのは洗練されたスーツ姿の大人たちばかり。
誰もが有能そうに見えて、さっきまで面接を受けていた自分が場違いに思えてくる。
「……はあぁ……」
思わず息が漏れた。
金星の空が見える全面ガラスの向こうには、黄金色に輝く雲の海が広がっている。
「言いたいことは言えたよね……うん」
自分に言い聞かせるように呟き、胸の前でぎゅっと拳を握った。
結果はどうあれ、後悔だけはしたくなかった。
ラビィは一度だけ振り返り、クロノスフィアの象徴的な球状構造を見上げると、帰路についた。
その頃、面接室では三人の面接官が書類を見下ろしていた。
「……元気なのは認めますが」
男性面接官の一人がペンを回す。
「研究開発職としては厳しいですね。専門知識も実績も不足しています」
もう一人も頷いた。
「志望動機が“好きだから”では、評価材料として弱い。不採用候補でしょう」
ラビィの履歴書の端に、不採用の印が仮入力される。
静かな室内。
その沈黙を破ったのは、中央に座る女性面接官だった。
「では、この娘は私の部署でいただきます」
二人の男性が同時に顔を上げる。
「……室長、本気ですか?」
「人材としては未成熟です。即戦力には——」
女性面接官は書類を閉じ、穏やかに微笑んだまま言葉を遮る。
「採用通知、お願いしますね」
それだけ言うと、椅子から立ち上がり、部屋を出ていった。
残された二人は顔を見合わせる。
「……また室長の直感か」
「何を見たんだ、あの子に」
答えは出ないまま、採用処理だけが進められた。
数日後。
月面都市のラビィの家に、小型配送ドローンが静かに降下した。
ポストに差し込まれる一通の公式封筒。
差出人表示――クロノスフィア社。
「き、来た……」
ラビィの手が震える。
テーブルの前に正座し、封筒を両手で持つ。
心臓の音がうるさい。
「……よしっ」
意を決して開封する。
視線が紙面を滑り。
一瞬、止まり。
次の瞬間。
「やっったーーー!!」
家中に響く大声。
ラビィは立ち上がり、自動階段をドタドタと駆け下りる。
「お母さん!! 受かった!! 受かったよ!!」
キッチンにいた母が目を丸くし、それからほっとしたように笑った。
「……良かったわね」
優しく、でも少しだけ真剣な声になる。
「でも、これからが大変なのよ。あそこは人類圏でも指折りの企業なんだから」
ラビィは満面の笑みで大きく頷いた。
「うん!! 頑張る!!」
窓の外には、静かに輝く青い地球。
ラビィはまだ知らない。
この合格通知がラビィの人生に、再び大きな冒険を与える事になるとは……
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