第18話
ラビィは、久しぶりに《クロノス・レガリア》へログインしていた。
視界いっぱいに広がる、見慣れた街並み。
懐かしい空気。
聞き慣れた環境音。
「……ついに、この日が来ちゃったか……」
今日は、サービス終了前最後のイベント。
グランドフィナーレ式典の日だった。
会場となるイベント区画は、光と装飾で彩られ、
まるで祭りのような賑わいに包まれている。
その中に——ラビィパーティの姿もあった。
「ラビィちゃん……今まで楽しかったわ……ありがとう」
ジャンヌが、どこか寂しそうに微笑む。
いつも豪快なコロンブスも、今日はやけに静かで、
大きな背中が小さく震えていた。
「キュッキュ!」
「パオパオーン!」
ドラキュとブリリアは事情がよく分かっておらず、
純粋にフィナーレの賑やかさを楽しんでいる。
「始まりがあれば終わりもあります」
ファーブルは静かにそう言った。
そして、会場の壇上には
ラビィ。
そしてリーとヴラドが立っている。
会場に響き渡る実況の声。
「それでは!周年祭恒例・闘技大会!
個人戦優勝!スリーマンセルマッチ優勝!団体戦優勝!
前人未到の全部門制覇を果たしたラビィパーティを代表し——プレイヤー、ラビィ!」
大歓声。
ライトがラビィを照らす。
フィナーレ用の衣装に身を包んだラビィは、
少し緊張した足取りで前へ進んだ。
マイクを手渡される。
ラビィは一度、深呼吸をした。
「……あの、私はこの《クロノス・レガリア》を最初からプレイしていました」
ざわめいていた会場が、静まり返る。
「始めたばかりの頃は、成功も失敗もいっぱいしました。
たくさん迷って、たくさん転んで……」
ラビィの声は、少しだけ震えていた。
「でも、たくさんの仲間と出会って、たくさんの経験をして……涙を流した日もありました」
視線の先には、パーティメンバーたち。
「それでも、みんなが待っててくれる。
そう思うと……やっぱり、ここに戻って来ちゃうんです」
小さく笑うラビィ。
「そして今日という日を迎えられたことを、本当に感謝しています」
ラビィは、会場いっぱいのプレイヤーたちを見渡した。
「会場の皆さん。本当に……本当に今日までありがとうございました!」
深く、深く頭を下げる。
大きな拍手。
歓声。
すすり泣く声。
ラビィはマイクを返し、元の位置へ戻った。
式典はその後も続き、
やがて静かに、穏やかに、終わりへと向かっていく。
ふっと、会場の照明が落ちた。
ざわめき。
巨大スクリーンがゆっくりと光を灯す。
《クロノスの王権は伝説となる……》
会場が息を呑む。
続けて、画面が切り替わり、美麗なアニメーション映像と共についに発表された。
《クロノス・レジェンズ》
リリース決定!サービス開始まで、あと一ヶ月!
一瞬の静寂。
次の瞬間——
会場が割れんばかりの大歓声に包まれた。
ラビィは、ただスクリーンを見つめていた。
胸の奥に広がるのは、寂しさだけじゃない。
「……ここまで来たんだ」
小さく、でも確かな実感を込めて、そう呟いた。
王権は終わる。
そして——
伝説が、始まる。
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更新は毎日致しますが、2話更新に変更致します。
平日:7時頃、19時頃の1日2話
土、日、祝:12時頃、20時頃の1日2話
です。
また、前作《月の兎、時代を駆ける~目指すはフルダイブ型MMORPG無双~》はこの作品の過去のお話となっておりますので宜しければ、そちらの方もよろしくお願いします!




