25. パクリ企画始動……その男、チャラ男につき
ルミナ・シティの一角、商業区に存在している豪勢な事務所。
『オフィス・グリード』の社長室は、薄暗く淀んだ空気に包まれていた。
葉巻の煙が漂う中、ガラが悪く厳つい男──この事務所の社長であるリカルドが、魔導端末の画面を食い入るように見つめている。映し出されているのは、RE:Genesisのライブ映像だ。
「なるほど。筋肉、歌、偉そうなキャラ付け。今はこれが話題ってわけか」
リカルドは葉巻を灰皿に押し付け、下卑た笑みを浮かべた。
彼は流行り物には目がない。得意技は自分で作品を生み出すのではなく「売れているものを丸パクリして、さらに大衆向けに媚びた形にして売り出す」ことだ。
「あのRE:Genesisとかいう連中、勢いはあるが脇が甘い。プロデュースが素人臭いんだよ。ウチが上手くやればもっと稼げる」
リカルドは机の上の呼び鈴を鳴らす。
しばらく経ってからドアが開き、一人の男が入ってきた。
「よっす社長〜! オレちゃんをお呼びですかな?」
入ってきたのはチャラい男。明るい金髪をマンバンヘアに結い、胸元が大きく開いたシャツと膝下丈まである派手なサーフパンツを着ている。
ジャラジャラと安っぽいアクセサリーをつけ、適当そうな喋り方は軽薄が形になったような存在。だが、その肉体は驚くほど鍛え上げられていた。見せることに特化し極限まで絞り込まれた、フィギュアのような筋肉美。
何よりも特徴的なのは獣の耳と尻尾が生えている、半獣人なこと。人間の耳とは別に存在する狐耳が、ぴょこぴょこと動いている。
「相変わらず調子がよさそうで何よりだ、エリオ」
「イケてるっしょ? 最近は『脱ぎ仕事』ばっかだからね~。写真撮影とか、筋肉コンテストの賑やかしとか。おかげでキレッキレっすよ」
エリオは自慢げにポーズを取りながら、シャツをめくりサーフパンツを鼠径部まで下ろす。最近の仕事は露出度でアピールするものばかりな影響で、普段からこういった振る舞いをすることにも彼はノリノリな様子だ。
「んで、何の用っすか? また変な罰ゲームがある大会に参加とか?」
「ビッグチャンスだ。これを見ろ」
リカルドは一枚の企画書をエリオに投げ渡した。
そこに書かれていたキャッチコピーは──
『マッスルプリンス誕生! 筋肉×傲慢×俺様=最強アイドル!』
「……ぶふっ!」
エリオは元ネタを隠そうともしない、露骨な企画書を見て吹き出した。
「あっはっは! これ、あの筋肉アイドルの丸パクリじゃん! ウケる〜!」
「パクリじゃない、インスパイアだ」
「意味変わってないって社長〜。で? オレちゃんにこれをやれって?」
「そうだ。あの男、素材はいいが愛想が皆無だ。お前の媚びる技術と筋肉を組み合わせれば、奴らの客層を根こそぎ奪えると思わんか?」
それは『お前をパクリ商品にしてプッシュするから協力しろ』という宣言。
リカルドの提案は、プライドのあるアイドルなら激怒するような内容だ。だが、エリオは嫌がるどころか笑みを濃くした。
「いいね〜。オレちゃん、プライドなんてとっくの昔に捨ててるからさ♪ 売れるなら何だってやるよ」
エリオは着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
彫刻のように美しい筋肉が露わになる。ヴァルガンのような戦うための筋肉ではない、魅せるための筋肉。オイルを塗らなくても艶めかしく輝くその肉体は、長年の芸能生活で培われたプロ根性の結晶だ。
「異色のアイドルだか何だか知らないけど、素人臭くて可愛いよね〜。オレちゃんが『本物のファンサ』ってやつ、教えてあげよっかな〜♪」
その瞳には羞恥心も葛藤もない。あるのは金と人気のためなら魂さえ売るという、歪んだプロ意識だけ。
「流石だエリオ、期待しているぞ。すぐこのコンセプトで売り込みを始める」
「オッケー♪ で、ドカンと話題にさせるタイミングはいつにすんの?」
「派手に行くぞ。サザンクロス島のリゾートイベントに、RE:Genesisが参加するらしい。そこで潰しに行く」
「へぇ、いいじゃん」
エリオは舌なめずりをして、笑みを浮かべた。
「あいつらのステージを乗っ取って、格の違いを見せつけてやろっと!」
新たなライバルの出現。
タケルたちがバカンス気分で浮かれている裏で、新たな刺客が動き出していた。
楽園の島で待ち受けるのは灼熱の太陽か、それとも泥沼のパクリ騒動か。波乱の予感を乗せて、物語は南へと向かう。
第三章はこれにて完結です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
明日から第四章スタートです、引き続き『毎日お昼12時30分更新』なのでどうぞお楽しみください。
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アイドル『RE:Genesis』がリゾート地でどんな騒動を巻き起こすのか、ぜひ見てくださいね。
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