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Q.男女の友情は成立するか。

掲載日:2025/11/02

 ━━━━━━夢を見る。

 遥かに昔の、まだ物心がつく前のある一幕。

「ねぇねぇ、未来?大人になったら結婚しよう?」

 その少女の言葉に俺は…きっと笑って承諾したのだろう。

 ━━━━━━夢を見る。

 かなり昔の、中学校に上がった頃のある一幕

「未来?どうしたの?私の顔をずっと見て?」

その女子の言葉に俺は…きっと誤魔化して有耶無耶にしたのだろう。きっとあの言葉を忘れていると思っていたから。

 ━━━━━━夢を見る。

 昔の記憶。彼女と会った時の一幕。

「未来?あの約束を覚えてる?……覚えてなくてもいいの。それでも私はあなたに伝えたい。私はあなたのことが━━━━」

━━━━━━━目が覚める。

「…………ふぅぅ」

 悪い夢なのだろうか。俺はそう願いたい。だってそうでなければ、あの人に不誠実だろ?すると俺の起きた音に気がついたのか、足音が聞こえる。

「未来さん、体調は大丈夫ですか?」

「あぁ…少なくとも熱は引いたみたい。ありがとう、綾香さん。」

 俺、美空未来の妻、美空綾香がふにゃりと微笑みを携えて俺に尋ねる。

「そういえば今日もでしたよね?お墓参り。準備はしていますから、朝食を早く食べちゃってください。子供達の世話は私がやっておきますから。」

「ありがとう…本当に、何から何まで。」

「いえ、いつもやってくれてますからね。そのお礼です。」

 本当に、いつかお礼をしなければならない。ガチで。彼女のプレゼントを考えながら朝食と、準備をし終えたバックを持って玄関へ向かう。

「いってきます」

「いってらっしゃい」

 あの夢を見たからだろうか。なんだかその声が重なっているような気がして、ほのかに悲しくなる。ただ、それ以上に満足感を得る。きっと、普段してしまう声がけに反応してくれる声があるからだろうか?

 駅に向かい、電車に乗る。いつもの降りる駅を通り過ぎて、ただひたすら遠くにある目的地に向かって、ただ…ただ…遠くへ。

「次は…西吉寺学園前、西吉寺学園前。降りる際はドアにご注意下さい。」

 声が聞こえた。()()()と変わらない、いつもの声。ずっとずっと続くと思っていたあの声が聞こえてきた。あの子が亡くなって、なんとなくいづらくなって逃げたことへの()が自分に問われているような気がした。

 駅を出たあと、目的地に向かって歩き始める。

10分ほど歩いたからだろうか?墓地についた。階段を登り、目的の墓を探す。

「えぇと、佐々木…佐々木…さ、さ……あった。」

 彼女、俺の幼馴染で、親友で、だけどそれ以上にはならなかった人の墓。ここが俺の目的地。佐々木美優のお墓。それに向かって一人線香あげて呟く。

「今年も戻ってきたよ。」

 …反応はない。そりゃそうだ。反応があったら怖い。それでも寂しく想うのは人間の(さが)なのだろうか?

「最近第二子が出来たんだ。可愛い息子だよ。綾香さんも俺には勿体無いぐらい出来た人だ。俺がまだお前に引っ張られているのにも関わらず、俺と一緒になってくれた。最高の女性だよ。」

 彼女は6年前に俺に告白をして、俺はそれを最初は拒否したものの、彼女に根負けして、最終的には結婚した。今となっては後悔していないし、勿論、あの人にも後悔はさせないように心がけているつもりだ。それでも、あの人に頼りっぱなしなのは事実な訳で……

 だからこそ、俺はあの人に頼りっぱなしにはしないしできない。せめて、あの人にきちんと向き合うことが、男として…仮にも綾香の夫としての俺の義務だと思う。

「だから、俺はあなたに()()()()()を言いにきた。今までのように何日毎に来たりはしないよ。多分…お盆とかにしかいかないと思う。せめて、これぐらいが俺が彼女にしてあげられる唯一ことだと思うから。」

 返事は無い。

「あなたがあの日、俺を公園に呼んで何かを告げようとしたその時、あなたは死んだ。飲酒運転のトラックが公園に突っ込んで来て、俺とあなたの両方を跳ね飛ばした。俺は一命を取り留めたが、あなたは即死だったらしい。」

 返事は無い。

「本音を言うと、もうあなたのことを思い出すことも少なくなってきている。だってそりゃ10年も前のことだ。10年あなたを想ってきた。ただ、その記憶には色褪せてる部分が多いんだ。これを心に傷は時間が癒すって言うのかな?」

 返事は無い。もう、彼女の声も思い出せなくなってきている。あの鈴のような、聞くものを落ち着かせる声も思い出せなくなってきている。彼女のどこか親しげのある瞳も、日本人にしては少し高い鼻も、いつも微笑んでいた口も、霧がかかっている。

 それを、前を向いてるって言うのならばきっと…きっとそうなのだろう。

「…俺とお前は、まだ親友のままだ。馬鹿やって、怒られて、それでも笑い合った男女の親友。」

 ━━━━思い出す。あの夢の続きを

 ━━━━考える。トラックが来ていなかった世界線(if)を。

 ━━━━妄想する。そしたらきっと━━━━━━━やめる。これ以上は考えたら…ダメだから。

「俺は、あの続きを聞こうと思わない。予想もしない。もしかしたら(if)も妄想しない。俺とお前は親友のままだよ。友達以上恋人未満。親友…うん、それが俺たちの関係にちょうどいいな。」

カラスが鳴き始める。もうそろそろ時間かもしれない。

「じゃあな親友(初恋の人)また来るからあの世で首を長くして待っててくれ。」

関係が変わるのを恐れてずっと想いを告げなかった役立たずと、勇気を出して一歩踏み出した結果望まぬ死を迎えた人。これは、もし(美空)が勇気を出してあの時よりも早く想いを告げたら、もし彼女(美優)が俺たちの関係が変わるのを恐れて想いを告げなかったら、こうはならなかった。

 だから、俺はこの罪を抱えて生きていく。永遠に変わらない親友を想って…俺の幸せを見つけてく。

時折、過去に囚われるかもしれないけど…今の俺には待っててくれる(綾香)がいるから。

 Q男女の友情は成立するか?

 A成立する。だってもうこれ以上変わることもないから。俺たちのように。

 そう心で唱えると、プリンを買って家に帰った。

「ただいま」

「おかえりなさい。美空さん。」

 俺は、この笑顔を守るために、お前のいない世界で生きている。

初作です。

テーマは過去を受け入れて、前に進み始めることです。きっと彼にとってはここからが人生のスタート地点になると思います。

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