あとがき
代わりの効かないものを、人々は尊いものだとするけれど、実のところほとんどのものには代替品が存在し、生や死のような唯一のものですら、何かの代わりであるのかもしれないと疑い続ける必要がある。そんなことすら忘れ、曇ってしまった目に映る月が本物であるわけがないし、太陽の代わりにすらなれるわけがない。つまるところ、意味のないことに囚われすぎてはいけないという教訓なのだけど、それを真理のように語る奴が多すぎて、少し食傷気味なのが現実だよね。
はろーわーるど、ふぇありーている。文海マヤだよ。ファンタジーの世界を揺蕩うように生きられたのなら楽しいだろうけど、楽しいことというのは一方で、それだけではない苛烈さを孕んでいるから、微妙な気分だよね。
というわけで、『赤き翼の万能屋』。お楽しみいただけたかな?
ファンタジー作品、とりわけ2000年代のライトノベルを強く意識したものだったから、もしかすると古臭さも感じたかもしれないね。
それでもこの作品が、誰かの心を埋める、何らかの欠落の代替品となってくれたら幸いだよ。人生は失うばかりではなく、継ぎ足して生きてもいいんだって、そう、気付くための一助にしてほしいな。
あと、虚報ではもうお知らせしてたけど、後ほど読みやすく話数や内容を整理した改訂版を出す予定もあるよ。
読みづらいなあ、っていうのがあった方は、そっちもよろしくね。
というわけで、偽り続けた万能の少女と、出来損ないを気取る死霊術師の物語は、これにて一旦の幕引き。
いつか物語が続くかは――それこそ、神のみぞ知る、ってことで。
2025年 5月18日 文海マヤ