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「おかぁさん、ありがとう」

作者: 秋葉竹



言葉というのは

光の反射のよう

どこでどう曲折するのか

鏡に聴いてもわからない


みんなひとりで大きくなったような顔をして

まるで迷子の心細さなど

味わったことも無い顔をして日々を過ごす


いつか母になったとき

むかし云った激しい言葉に

刺し殺されそうになるんだろうな



ナンデ産ンダノヨ?

産んで欲しい、ナンテ

ワタシハタノンデナイッ!



むかしいだいていた母への感情は

どこに置き忘れてしまったのだったっけ?


そういえばあのとき沈み込んだ

胸の難破船の秘密の船底に

ずいぶんと傷んだマリア像が

倒れて転がっていたのを

探して船内を歩き回って

みつけたのは深海の底でだったか


あの瞳をかたどった穴から

海水とはまたまるで別の

なにか言葉のような泡粒が

ポロポロとこぼれ出す音を

聴くとは無しに聴いた気がする


あれが最後の母への想いだったのかは

知らないしいくら考えてもわからない


その二度とみることのない深海の過去は

おそらく誰も知らないし

だれにもわからないまま時だけが

ゆったりと止まりつづけ

そうしてそれは


いつかわたしが母になった時に

世界を飲み込む激しい渦となって

この身も心も巻き込んでしまうのだろう


その後悔はしたく無いから

だからわたしはそれに気づいたいま

できるだけ聴こえる声で告げるんだ


「おかぁさん、ほんとうに有難う」







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― 新着の感想 ―
[良い点] >その後悔はしたく無いから だからわたしはそれに気づいたいま できるだけ聴こえる声で告げるんだ 「おかぁさん、ほんとうに有難う」 ひらがなのおかぁさん、 無邪気であたたかな声が聞こえて…
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