エイプリルフールなので幼馴染に嘘をついてみる
「うーん?」
明日、4月1日は世間で言う「エイプリルフール」。
そう、嘘をついていい日(公認)。
だから、幼馴染に嘘をついてみることにした……んだが。
ちょうど良いくらいの嘘が思いつかない。
定番といえば嘘告白とか明日死ぬとかだけど、幼馴染には嘘でもしたくないからなぁ。
どうしたものか……。
「んーー」
「おにぃ、うるさい。唸るなら部屋で一人でしてよ」
ぺちっと妹に頭を叩かれる。
風呂上がりのせいか、微妙に湿っている。
「んぁー、部屋にいても思い浮かばないから仕方ないだろ」
「どうせ、ろくなこと考えてないんでしょ?」
「明日、玲菜につくエイプリルフールの嘘について考えてる」
「……うわぁ」
いや、何考えてるのか言っただけだろ。
引く要素どこにあるんだよ。
「引くなよ。悲しくなるだろ」
「いや、こんなのが兄とか嫌だなって」
「……泣くぞ?」
「そしたら、その動画撮ってレイちゃんに送るね」
「……悪魔」
「だったら、これからは相談に乗らないね。悪魔だし」
「申し訳ありませんでした」
即座に跪いて土下座。
プライド?そんなの家族の前では台風が来た時のボロボロの傘と一緒だ。
あってもなくても変わらない……。
「はぁ、はやく告白しちゃえばいいのに」
「明日だと、嘘とか思われないか?冗談とか、罰ゲームとか思われないか?いやまず、玲菜が俺のこと好きなはずがないし……」
「いや、乙女かっ!ん~~、なら好感度が見えるようになったとかは?」
「……っ!それいいな」
光明、神託、えーっと天の架け橋?
とりあえず、妹様からいい案を授かった。
「よーし、明日!決行だっ!」
「……はぁ、意気込むのは自由だけど、どうなっても知らないからね」
「わかってるって!」
そうと決まれば、いろいろな設定を練っておかないと。
そう思い、俺は自室に戻るために階段を駆け上がった。
——4月1日——
「……頭の上に数字?」
「そう。朝起きたら見えるようになってた」
「へー」
12時になる少し前。
母さんと妹に「新学期の前に挨拶に行け」と家を追い出された俺は、幼馴染の家に挨拶に向かった。
そして、挨拶を終えた俺は玲菜の部屋で、一緒にゲームをしていた。
いつもと変わらない――話以外は。
「それって、どんな感じ?」
「ゲーム中によく出てくる広告みたいな感じ」
「あの、棒人間を移動させて数字を比べて倒すやつ?」
「そうそう」
「ふーん」
ゲームをしつつ、質問に対して昨日考えた設定をスラスラと述べる。
似たような状況は、ネットやゲームやらでたくさん予習済みだからな。
考えるのは簡単だったぜ。
……捗りすぎて朝3時くらいまでかかったけども。
「それでさー」
「……」
少し自慢げに話していると、だんだんと反応が悪くなっていく。
なんか、思ってた反応と違う……。
もっと食いついてくると思ったんだが。
「……聞いてる?」
「ん。聞いてる聞いてる。ちょい待ち……っと。……んー!今日のノルマ終わったー」
反応が悪いのは、ゲームのせいだった。
……確かに、ゲーマーなのわかってたし終わるまで待っておけばよかったか。
「お疲れ」
「ん。……で?突然数字が見えるようになったんだっけ?」
「そうそう」
「それってさ、ゲームのやり過ぎで区別できてないだけじゃないの?」
「……玲菜がそれを言う?」
「あはは、それは確かに」
しっかりと話は聞いてくれていたようで、俺の頭がおかしくなったのではと言われる。
いや、平均ゲーム時間5時間以上の玲菜には言われたくなかったけども。
「ふーん。でも数字ねぇ……ゲームの理論で言えば強さとか?あと……寿命とかじゃない?」
「あー、確かに。でも、多分それは無いと思うわ」
「どうして?」
「道行く人のほとんどが0だったから」
「あー、どっちも0にはならないよねー」
戦闘力は弱そうな村人でも『5』はあったわけだし、寿命が『0』なのは天に召されている最中なわけだからな。
どっちもあり得ない。
「後は……何だろ?0だったってことはえっちぃのもないかぁ」
「……流石に、みたくねぇ……」
エロい漫画とかだと『あの人がこんなにもっ!?』ってなる展開があるけど、正直な話あんまり見たくないっていうか。
他人のアレコレとか、好きな人とかのアレコレは見たくない。
……そうだよっ!俺はピュアボーイだよ、悪いかっ!
「うーん。唯人は何だと思う?」
「……俺は好感度とかじゃないかと思ってたけど」
「……やっぱり恋愛ゲームのやり過ぎじゃない?」
「ひどいなっ!?」
時間をかけて考えた作戦は、簡単に否定される。
いや、ゲームであるあるな話だけども。
「だってさ、道行く人殆どが0でさ、家族とか親しい人が数字が大きいとそう思うだろ?」
「……ふーん」
負けじとあらかじめ考えていた答えを返す。
『見知らぬ(知り合いじゃない)=0』は当然だよな。
「そういえば唯人の家族の数字はどうだったの?」
……やっば、細かい数字とか考えるの忘れてた……。
とりあえずありえそうといえば真ん中くらいか?
「……えーっと、母さんが61で、妹が57……だったはず」
「……ふーん」
とっさに考えて、数字を言う。
ふー、焦ったー。
家族なら、半分くらいはある……よな?
……好感度って、家族には見えるか?
……いや、見えるはずだ。きっと。
「ならさ、ウチは?」
「へっ?」
「ウチの数字は?」
詰めが甘い部分について反省していると、また予想もしていなかった質問がくる。
玲奈の俺への好感度……?
……やばい、完全に想定外。
わからんわからん。
100であって欲しい……けど……幼馴染だし、家族と同じくらいが安定か?
「……ご、55」
「ふーん」
結局、俺は安定択を取った。
そんな自分を情けないと思うとともに、少し安心した自分もいた。
だって、玲菜の反応は普通だったから、間違えてはいないということであって。
でも、間違っていて欲しいという自分もいて……複雑だった。
「……ねぇ、数字が見えるって、嘘でしょ」
そんな複雑な俺の心理状況なんて知らないと玲菜は容赦なく嘘だと見破る。
見破られるなんてありえないと高を括っていた俺は、この部分の言い訳なんて考えていない。
「寝たら治るでしょ」といつもの画面酔いみたいに言われると思ってたから、設定だけで終わり方とか考えていなかったのだ。
「な、なん……」
「だって、ウチが100じゃないのありえないから」
「は」
スパっと嘘と思った原因を述べる玲菜。
玲菜の数字が100じゃないのがおかしい?
たったそれだけのことで……?
ん?それだけ……か?
「それって……どういう」
「……4月1日。エイプリルフール」
「……っ!」
「なるほど、ウチに嘘をついたってこと?」
「えっと……はい」
気になった部分があったような気がした。
でも、嘘をついたことと、その理由がばれてしまってぐいぐいと詰められる。
こうなってしまっては、俺の負けは確定していた。
「エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中だけだよ」
「……は?」
突然の発言。
嘘をついていいのは午前だけ?
本当に?
それとも嘘なのか?
どっちなのか、俺にはわからなかった。
「それで、見えてるの?見えてないの?」
「……見えてない……です」
ただ、玲菜の表情は怒ってるように見えることは確実で。
俺は、嘘をつかずに、嘘であることを認めた。
「よろしい。じゃあ、言うことは?」
「……えっ」
「言うことは?」
玲菜はぐいぐいと怒ったような笑顔を浮かべて近づいてくる。
普段よりも少し近い距離だったが、嬉しいよりもいたたまれない感情のほうが大きかった。
「……ごめんなさい」
なので、俺は頭を下げた。
昨日と同じか、それ以上に頭を下げて。
何なら犬とかみたいにお腹見せたほうが……良いわけないか。
「…………はぁ……まぁ、いいよ。そういう日だし」
「あ、ありがとうございます?」
なんとか許して貰えたようで、少し呆れた表情をしながらもそう言ってもらえた。
……嫌われて無いと思いたい。
「……そろそろ帰ろうかな」
そんな自分でやった事のせいで居づらくなった俺は、逃げるように立ち上がる。
「あー。なら、聖奈ちゃんに今年もよろしくって伝えといて」
「わかった。それじゃまた」
「うん。今度は嘘つかないでよね」
「……はい」
玲菜にちょこちょこいじられながら、俺は玲菜の部屋を後にした。
その後、『嘘をついていいのは午前中だけ』としている地域もあることを妹から教えられ。
玲菜のあの発言が嘘じゃなかったことを理解したのは夜寝る直前のことだった。
……明日からどう接しよう……。
あーーーーー!
「おにぃ!うるさいっ!」
……寝るか。