表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

糸の切れた人形がもたれる椅子の製作者

作者: 幸京

彼の話です。

彼は目立たない様にしていました。

そして恐らく、それは無理だと知っていました。

なぜなら彼は顔が良く知的でとても優しい人だったからです。

女性職員は何とか彼に近づこうと努力して、男性職員は唯一独身である彼を見下す事で何とか優位に立とうしていました。

彼はそれら全てを分かっていました。

それでも彼は誰にでも一切態度を変えることなく、誰にでも優しく、されど一線を引いて接していました。

ある日、彼の退職が職場を揺るがしました。

一ヵ月後に退職することになり、同時期に女性職員も何人かショックで退職します。

彼女たちは彼に操られていました。

彼は思い通りに出来る人、出来ない人、それを見極めていました。

ちなみに私の知る限り、彼が女遊びをしている様子も噂もまったくありませんでした。

何気ない言葉、それとない行動、自分の顔や知性、表向きの性格を上手くつかい、女性達を思い通りにしていました。


彼女の話です。

彼女は時間はかかるが、いつかは操れるタイプでした。

操れるタイプにもいくつかあります。

すぐに操れるタイプ、少し日にちが必要なタイプ、時間はかかるがいつかは操れるタイプ。

ちなみに僕は、別に人を操り楽しんでいるわけではありませんでした。

興味のない、また嫌悪する人には、自分の武器を使うことなくひたすら無視をしてきました。

もちろんそれが余計に好意を寄せる女性達や、何とか見下そうとする男性たちをイライラさせているのは分かっていました。

彼女はおそらく全てわかっていましたが、それでもいつかは操れることは出来る、

そんなタイプは初めてでした。

子供の頃から読心術に長け、見た目もあり、人を操る術は7歳の頃には身に着けていました。


薄れゆく意識の中、僕の結論です。

人を操るなんて出来ないのです。

いつだって相手が暴走しない程度にやってきたつもりでした。

まさか適当に操り、誕生日のプレゼント交換をしていただけの年増の人妻に刺されるなんて。

電柱に隠れ、倒れる僕を見る彼女と目が合いました。

彼女は僕と同じように、いや僕よりもうまく、この年増を操ったのでしょう。

そんな彼女は確か、時間はかかるがいつかは操れるタイプだったはずです。どうして年増に僕を殺すよう仕向けたのでしょうか?もう知ることも出来ないのが心残りです。


そしてお墓参りをしている彼女による締めの言葉。

あのクズは地獄に落としたよ、かたきはとったから、安心して眠ってね、お母さん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ