第九節 誕生日は皆んなと一緒に…
それから更に一年後。
師匠の完璧な指導のおかげなのか、初級〜上級の魔法は全て使えるようになった。
それにしても、全属性の魔法を初級〜上級まで覚えるのにはかなり苦労したけど何とか無事に習得出来た。
魔法の位が上がっていくにつれて、威力が極端に上がるがその分詠唱文が長くなっていく…まぁ、無詠唱が使える俺にとっては問題ないんだけどさ。
しかも、上級魔法の殆どは全体攻撃が多いので何かと使い勝手が悪いものが多く人が沢山いる場所ではとても使えない。
広範囲に大爆発を起こしたり、大凍結を起こしたり、隕石を降らせたりなど殺傷能力が高いので危険だ。
基本的には中級までの単体攻撃用の魔法を使っていこうと思う。
師匠曰く、『魔法にも色んな使い方があるのさ、例えば枯れに枯れた畑に水をやる為に水魔法上級魔法で天気を操り雨を降らせたり、村に出た廃棄物を処理する為に炎で焼いたり…とかね?』
なるほどなぁ…流石師匠だと思った。
何でも師匠は俺の教師を務める前には、各地を転々としながらその魔法を使って荒い金稼ぎをしていた事もあるそう。
この村でもその方法で金を稼いだりしてるんだとか…うん、それいいな!
それにしても、ようやく疑問が解けた。
たまに師匠は、食べ物を恵んでくれるんだがその金を何処から得ているのか疑問だっが…まさか、この村でもそんな方法で金を稼いでいたとは…俺もそうしよう。
ーー
そんなある日、師匠にこんな事を聞いてみた。
「師匠は、ここに来る前に旅をしていたと言っていたんですけど…どうして旅をしてるんですか?」
「そうだねぇ、この広く儚く美しい世界を見て歩きたかったからかな?
私は昔…狭く不自由な暗い場所に引き篭もっていた事があるんだ。」
へぇ、それは以外だった。
こんな明るくてコミュニケーション能力が高い師匠が引き篭もっていたなんて信じられない。
「だけど、とある事がキッカケで籠から外に出てみたんだ…それがどんな物よりも美しくて素敵だった。同時に私は、もっと知りたくなったんだ、この世界を自分の力で歩いて旅をして…その終着点にどんな結末が待っているんだろうってね?
それが、幸福ならそれでよし。
それが、絶望ならそれでも良い…結果がどの様になっても気にしない…それが、私の望んだものじゃなくてもね。」
「難しいですね。」
「まぁ、今言ったことも勿論だけど…本当の目的は別にあるんだ…」
む?
どう言う事なんだろうか…旅の話はキッカケに過ぎないって事か?
「その目的を聞いていいですか?」
「君には特別に話してあげるよ、私はね元々、この世界の人間じゃないんだ。」
師匠のその一言に、俺は思わず「へ?」と間抜けな声を出してしまった…
この世界の人間じゃない…?つまり、転生者?
「私は、この世界の何処かで未だに彷徨っている災厄の獣を探しに来たんだ…この世界に来る前に、後一歩の所まで追い詰めたんだけどさ…しくじってしまったんだ。」
話が急展開過ぎてついていけない…つまり、師匠はその災厄の獣って呼ばれる獣を殺す為にこの世界に来た人間って事なのか?
「そしてもう一つ、隠していた事がある…あの日、君の両親に近づいたのは偶然じゃない…君と奴の間に何か関わりがあると疑い、あわよくば始末する事も視野に入れていた…結果として勘違いだった、すまない。」
「いえ、気にしないで下さい師匠。」
「…っ、君はこんな話を聞いても私の事を師匠と呼んでくれるのかい?」
「師匠は、師匠です!」
「そっか…」
ははっ、何を今更…
たとえ、師匠が俺にどんな意志を持って教師を務めていたとしても関係ない。
それに、俺だって師匠に隠していることがあるしな。
「師匠…俺も貴方に隠していた事があります…」
「その話は、君と私がもう一度再会した時に聞かせてくれよ!」
その日、俺と師匠は日が暮れるまで色んな話をして過ごした。
たまにはこういう日があってもいいだろう…それにしても…そうか、師匠はいずれ旅立ってしまうのか…それは少し、寂しいなぁ。
ーー
そしてまた月日が流れ…俺は5歳の誕生日を迎えた。
師匠曰く、『この世界では、それぞれの国によって子供の誕生日を祝う習慣が無い所と祝う習慣がある国があるんだよ!』とね。
こう言う所は元いた世界、日本とは違うんだな…まぁ、それもそうか。
あと因みに、誕生日は毎年祝うのでは無く決まった年齢に達した時にだけ盛大に祝うようだ。
その決められた年齢とは、5歳・10歳・15歳の時。
これはどの国も共通で子供の成人年齢は15歳と思ったよりも早い。
成人式は無い。
日本だったらまだ未成年で中学生の子供くらいだろ?すげぇな。
この村…いや、この国は誕生日を祝う習慣がある地域と無い地域がある。
我らアスポロトス家では誕生日は祝わない筈だったのだが、師匠やニーニャ&アルマの計らいで俺の誕生日パーティーを開く事になった。
そして何と、皆が俺の為にプレゼントを用意してくれたのだ。
イアソンは『ダインスレイヴ』と言う俺の名前が鞘に入った一本の高価そうな剣をくれた。
凄く嬉しかった、普通の人間なら「はぁ〜?剣かよ!」と思う所なんだろうけど…俺は剣道をやっていた事もあってかなり嬉しい。
「ありがとうございます、父さま!」
「おう!」
笑顔でイアソンに感謝をすると、彼はとても喜んで俺の身体を軽々と抱き上げた。
イヤシスは、新しい本をくれた。
うん、これも嬉しいな。
この世界の鉱物図鑑や植物図鑑…魔道具図鑑の三つをくれた。
おいおい、この世界では本はかなり高価な物だぞ?それを三つもくれるなんて…
「ありがとうございます!一生、大切にします♪」
「おめでとうダイン!」
ニーニャとアルマも誕生日プレゼントをくれた。
アルマは可愛らしい、自分で編んだと言う外套をくれた。
ニーニャに関しては…なんか得体の知れないモノを渡して来たのでスルーします。
そして、師匠は…布に包まれた長い棒状のプレゼントと小包に入った何かを渡して来た。
「おめれとぅ、きゃわいぃでちぃ~!プリャゼントをあけなしゃぁーい!」
酒臭っ!?
ま、まぁいい…早速、開けてみる。
布を開けて包まれて居たのはThe・魔法使いって感じの杖だった。
俺の身長よりも結構高い杖。
杖の先には綺麗に輝く三日月がついた、とても美しいデザイン…漢が持つには少し可愛らいと感じたが…師匠がくれた物なら何でも嬉しい。
凄い…三日月の部分は何で出来ているのだろう…繊細な魔力が収束して神秘的な光を放っている。
「この杖の銘は『夜を統べる魔杖』と言ってね、私の知り合いの凄腕の鍛治師が打った業物だ。その能力はーー」
「ありがとうございます師匠!」
「この杖は、君がもう少し成長したら使いなさい?重いし、大きいからね。」
「はい!」
ありがとう、みんな。
これは一生大切にしたいと思います。




