第八節 座学
あれから何ヶ月か師匠との魔法の特訓をして行くと…中級の魔法は全て完璧に使える様になった。
その時に、師匠には全属性の魔法が使えると暴露したのだが…大して驚く様子は見せず「私も全属性使えるよ?」と言う衝撃の事実を教えてくれた。
もっと言うと、この世界では全属性を使える者は魔法使いの域でありそれが使える俺は普通ではないので気を付けるようにと首を刺された。
流石は師匠…尊敬の念は更に高まった。
師匠の魔法の授業はとにかく分かりやすかった…他の教師なら端折るであろう細かい説明もしっかり省かないで教えてくれるのでありがたい。
失敗してしまった時も責めずに励まし生徒にやる気を出させると言う正に教師の鏡だ。
そんな優秀な師匠に両親は是非とも座学を教えてやって欲しいとお願いした所、快く引き受けてくれた。
最近、始まった座学でも師匠の博識さは凄かった。
引き篭もる前まで、通っていた中学のクソみたいな教師なんかただ給料の為に適当に教える訳では無く、一つ教え終わった後は毎回内容を理解出来たか確認してくれ分からなかった所は復習に付き合ってくれる。
闇雲に難しい内容を教える事はなく、必ず最初は基本的な内容を始め理解が深まったら段々と難易度を上げていく。
師匠曰く、「始めから難しい内容を教えても、誰も理解なんて出来ないさ…まずは基本から入り理解を深めてから次のステップに挑戦させる。」と。
なんて、素晴らしい人格者なんだ…何でも、俺の前に教えていた弟子もそうやって立派な人間に育て上げたと言う。
更に、師匠は俺や両親でさえ知らない世界の事を多く教えてくれた。
「そう言えば、気になったんですけど…魔法…、魔術ってどうやって広まったのでしょう?やはり、エルフが最初に魔術を発明したとかでしょうか?」
「物知りだね!そうだよ、"この世界"では魔法は旧長耳族が創造した物だと言われているね。」
おぉ、予想通りこの世界には人間族以外の種族も存在しているのか!
ますます異世界感が増して来たなぁ…
この本に載っているエルフを見る限り俺の知っているエルフと同じ様な容姿をしているんだな。
「そのエルフって本当に居るんでしょうか?」
「うん、居るよ。新長耳族はね…この人境大陸の遥か南西に位置する亜人大陸と呼ばれる様々な種族が住まう大陸の深い森部に存在するんだ。
かつては、旧長耳族と言う古く誇り高き者達が、その容姿や技術を狙ってくる人間や他の種族に対抗する為に、森で共生する聖霊と呼ばれる妖精達と契約し魔法を操っていたみたいだよー!」
「なるほど…奥が深いですね…」
凄く分かりやすい説明だった…しかも、師匠はその説明をするに当たって魔法でその物語を再現してくれた。
「現在、使われている魔術はそのエルフが利用した物を模倣して…発展させたんだ。
それは紛れもない君や私達…人間の手によってね。
流石は人間って所だね、人間はそう言った発明や発展が大好きだからね。」
はへぇ〜、やっぱり人間はそういった事に関しては凄いんだなぁ…
「そう言った発明の中で出来たのが、四つの異なる魔法。
攻撃魔法・生活魔法・支援魔法・召喚魔法が増えた事で魔法士も一つに偏らず得意分野を極める者達が増えた。
例えば、攻撃魔法を専門とする魔法士これは変わらない、次に支援魔法を得意とする支援魔法士、召喚魔法を専門とする召喚士と言うようにね?
生活魔法は魔力のある者なら簡単に使えるけど、こちらは余り使われていない。」
「どうしてですか?」
「さぁ?私は普段生活魔法を使って身の回りの事をやってるからねぇ〜…まぁ、道具がある人は態々、詠唱して魔法を発動するよりも早いからじゃないかな?」
なるほどな…確かに、イアソンもイヤシスもニーニャ達は普段から魔法を使わないで火を起こしたり、洗濯物を干していたりしてるからな。
「他に何か聞きたい事はあるかい?」
「そうですね…魔物や魔獣の違いとか…他にも"亜人魔混沌戦争"の事とかも知りたいです。」
「うん、分かった。
"魔物"と"魔獣"は大して変わらない存在と言う事は頭に入れておいてね?
まず"魔物"はこの世界に存在する動物が、大気中にある魔力や又は魔石を喰らい突如として変異する事で生まれる生物。
その中でも、その一部の魔物が上手く適応し子孫を増やし、知識をつけたのが"魔獣"と呼ばれています。
簡単に言えば…"魔物"は知識も無く無作為に人を襲う厄介な存在。
逆に、"魔獣"は知識を持ち、考え無しに人を襲わない存在。
と、思ってくれればいいよ?」
「それじゃ、魔族はそのどっちかに分類されるんですか?」
「いいや、魔族は…うーん…分類が難しいのよねぇ…かつて起きた"亜人魔混沌戦争"に於いて人族と亜人族と純粋な魔族との混沌の争いの中で魔族に味方した種族の事をそう呼ぶのです。
あぁ、因みにその亜人魔混沌戦争はその遥か昔…遡ること5000年前に発生した人族・エルフなどの亜人族・そして魔族がお互いの大陸を奪い合った戦争の事です。そして、この戦争は500年〜1000年の間隔を空けて戦争を繰り返しているんだよ!」
「へぇ、歴史が深いですね。」
どうやら、この世界は俺の思った以上に歴史が深いようだ。
しかし、師匠は本当に物知りなんだなぁ…
「あ、師匠ってもしかして、エルフですか?」
「え、違うよ?どうして?」
「だって師匠、凄く綺麗じゃないですか…」
「あら?嬉しい事言ってくれるじゃない?さては、私に惚れたな弟子よ!」
「はい、最初から惚れてます。」
俺がそう言うと、師匠は暫く口を開けてぽかーんと固まってしまう。
おぉ、とぼけた様な顔でも師匠は絵になるなぁ…
「そうだねぇ、君が立派な大人になってもお嫁さんが出来なかったら、君を私の旦那にしてあげる。」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ドンッ!!
やっべ…嬉しさのあまりはしゃぎ過ぎた…母さまがお怒りのご様子です。
「あ、そう言えば気になったんですが…よく母さまが夜更かしをしている俺に『早く寝ないと、ボルーグ族に襲われてしまうよ?』って言われていたんですけど…ボルーグ族とは何でしょう?」
「えっと確かー…かつて魔境大陸に存在したとされている、澄んだ藍色の髪に、右目に紅い回路が刻まれた紋様が入った種族が…ボルーグ族って名前だった気がするよ。
私が知っている限りでは、かつて"亜人魔混沌戦争"に於いて魔族側につきながら、狂った様に暴れ回り…敵は容赦なく惨殺、味方もまた容赦なく惨殺、そして最後は種族同士で殺し合ったと言うイかれた種族として恐れられているんです。
現在は、その異常な程の危険さに恐れた者達によって討伐隊などが組まれその数をどんどんと減らして行ったんだよ。」
そりゃ、怖いな…
「もしも、遭遇したらどうすればいいですか?」
「大して問題ないよ?ボルーグ族ってだけで、偏見で侮蔑したり見下さなければ大丈夫だよ。
とは言っても、ボルーグ族に会うなんて事は滅多に無いからそんな心配もしなくていいよ。
よし、今日の座学はここまでにしようか♪」
「はい。おやすみなさい、師匠。」
俺は、師匠に一礼をして部屋を後にする…前に、少し扉を開けておいて師匠いる部屋の扉の隙間を覗く。
師匠は俺の存在に気付かずに、服を脱ぎ始める。
ここ最近、師匠を覗き見して分かった事なのだが…どうやら師匠は寝る前に必ず全裸になってから睡眠につくようだ。
いやー、しかし…いつみても師匠はええ身体をしておるのぉ…あんな最高の身体を持った女性が将来の嫁さんに…ぐひひひ
おっと、勘付かれる前に退散しようか。
また明日も、頑張ろ。




