第五節 謎の2人
うん、あれから3年。
あぁ、そう言えば父親と母親の名前を教えるのを忘れていたな。
父親の名前はサウザー・アスポロトスで母親の名前はイヤシス・アスポロトスだ。
両親の名前を知ったのはつい最近で、ニーニャに説教を受けている時に二人の両親(二人の本名をその時に出した)を見習いなさい!と言われたのがキッカケで知る事が出来た。
だって、二人とも普段はラブラブでお互いの事を愛称で呼ぶからなかなか本名を聞き出すのが難しいかったんだ。
因みに、俺の名前はダイワスレイヴ・アスポロトスだってさ。
此方も、ダインって呼ばれているから全然に分からなかった。
それにしてもダインスレイヴか…厨二臭い名前だけど俺は好きだなぁ…
因みに俺の容姿なんだけど、母親と同じ青紫色の少し伸びた髪に中性的(女性寄り)の容姿をしていた。
あぁ、そうそう実は…密かに練習していた魔法の勉強なんだけど両親にバレてしまった。
なんでも、ニーニャとアルマがコッソリと俺の魔法練習を覗きに来ていたのは知っていた。
そんなある日ーーいつものように皆んなで夕食を食べている時にアルマがうっかりと俺が魔術の練習を頑張っているんですよ!と漏らしてしまったのだ。
俺の魔法人生終わったぁ…と絶望に駆られていると、アルマがハッ!?ご、ごめんなさいダイン様…と誤って来たが、別に彼女を責めるつもりは毛頭ない。
いつかはこうなるだろうと思っていたし、それが予想よりも早く来ただけなので別に問題ないと言えば嘘になるけどね。
両親は俺を責める事はしなかった、むしろ「是非、見せてくれ!」と言って来た…
なので、覚悟を決めてとことんやってやろうと決意した。
そして当日。
両親に見守られながら、魔法のお披露目会が幕を開けた。
イヤシスは、「無理しなくていいのよ?」と言ってくれたけど…悪いな!
そんなこと言われたら、逆に燃えてきてしまう。
やる事は変わらない…いつもの魔法練習と一緒だ。
まず、右手を突き出す。
流石に、無詠唱なんて使ったら大事になると思ったので詠唱をする。
試すのは、中級の炎魔法にしよう。
もしも建物に火が飛び移っても、即座に水魔法をバレないように打てば問題ないだろう。
さて、始めようか。
「あぁ 熱き炎の祖よ 我が声を聞き届けよ! 吹くは灼熱の風 全てを喰らう螺旋よ 顕現せよ! ーー『螺旋の焔風』!!」
その詠唱と共に、ダインの突き出した掌より灼熱を纏った螺旋の炎風が現れると同時に家の壁を破壊し瓦礫を焼き巻き込みながら遥か空まで飛んでいった。
やっべ、やり過ぎた…
ダインはチラッとイアソン達の方を見て様子を伺う。
ニーニャとアルマは流石ダイン様!と言いながら拍手喝采してる。
何をそんな呑気に…ほら、イアソンとイヤシスは口をアングリと上げて声にもならない悲鳴を上げている。
「なっ、あっ、、、ま、マジかよ…」
「う、嘘…」
「流石、ダインですね。惚れ直しました!」
「ダー君なら当然ですねお姉様!」
もう何がなんだかわからなくなってしまっている。
ニーニャに関しては、幼児相手に何を言っているんだと言いたい所だが今は放っておこう。
「なぁ、今のって…中級の中でも扱うのが難しい魔術だったよな?」
「え、ええ…」
へぇー、そうなんだ。
この魔法は割とすぐに習得出来た物だったんだけど、扱うのが難しいのか…確かに、少しでも制御や威力を間違えたらこの部屋全部が吹き飛んでしまう可能性もあるな…
「凄い!凄いわぁ!ダイン!貴方ってば、魔術の才能があったのねぇぇぇええ!」
「ぐはっ!?」
イヤシスが泣きながら凄まじい速度でダインに抱きついて来る。
oh…我が母よ…胸が当たっております…
「ねぇ、いっくん!こうなったら、魔術の先生を雇って出来る所まで教えて貰わない!?」
「あぁ、まぁ、そうだな。でも、俺もダインに剣術や槍術を教える約束もしてるんだが…」
「日替わりで行えばいいのでは?、例えば、最初の1日は魔術の勉強で次の日は、イアソン様の武術の鍛錬という形でやってみては?」
「お姉様!それはいい提案ですね!」
うん、アルマお姉ちゃん…それは重労働ってやつなんですよ…でもまぁ、何だかんだで異世界って感じで悪くない。
「あ!それじゃあ…明日は街に買い物のついでに、魔術を教えてくれる先生を探そうかしら。て事で、みんな明日は出掛けるわよ!」
うわぁ、マジか…めんどくさい。
あ、イアソンがつい本音をポロリしたようだ…おお、大の大人を見事に投げ飛ばした…これは、素直に従うしかない。
ニーニャとアルマに至っては、何か良からぬ事をつぶやいているので少し心配だが…それに、街には行った事が無いから行ってみたいしいい機会かもな。
ーーー
翌日。
ダイン達、アスポロトス一家はエレシウス領にある城砦都市ガレス内で賑わう街へと訪れていた。
メンバーは、ニーニャ・アルマ・イアソン・イヤシスそして俺の家族全員で訪れた。
街の中は田舎に位置する領地だが、とても賑やかで多くの人達が行く先々に広がっている。
凄い…日本では絶対に見る事の出来ないような景色…少し感動してしまう。
「それじゃ、ダイン、ニーニャ、アルマは買い物をお願いね?私といっくんは魔術を教えてくれる先生が募集してないか確認してくるから。」
「了解しました。」
「わかりました。」
「はーい!」
とまぁ、そんな訳で両親と離れてこの3人で行動をする事になった。
そう言えば…驚くべき事にこの世界の食品と元の世界にあった食品に酷似している。
例えば、小麦に似たようなコヌギとか野菜も色は違えど形も名前も似方よっている。
ふむ…これは、工夫によっては元いた世界の料理を再現出来るかも知れないぞ!
「所でなんだけど…ニーニャ姉さんとアルマ姉ちゃん…手を繋ぐのは良いんですが…歩きづらいと言うか…」
「いいの!」
「ダインと手を繋いだ!繋いだ…次は…いや…まだよ!…まだ早いわよニーニャ!…」
怖い…このお姉さん凄く怖いっ!
やれやれ…と半ば諦めながら買い物を続けていると…前の方より歩いて来た外套を纏った人物と美しい純白の髪を靡かせた女性の二人組とすれ違った。
その時ーー強烈な頭痛が襲い掛かって来る。
「ッ!?」
「どうされましたダイン?」
「どうしたの?」
「あー、いや…何でもないですよ!行きましょうか。」
さっきのは何だったのだろうか…あの二人が通り過ぎた時に急に頭痛が襲って来たのは…考え過ぎか?
まさか、この時は思いもしなかった…あの二人が魔法の講師として訪れて来るなんて…
ーーー
「!」
「どうしたのかな?アルトリウス?」
美しい純白の長髪を夕日に靡かせた女性が、外套を纏った人物に不思議そうに話しかける。
「マーリ…いえ、メルリヌス…私の星剣が反応したのです。」
「!?それは、本当かい?誰とかな?」
「先程、すれ違った3人の中に居た一人です。」
アルトリウスと呼ばれた人物がそう言って指を刺す、メルリヌスはその3人をジッと見つめる。
「ふむふむ…あの背の高い可愛らしいお嬢さんかな?」
「いいえ、あの子です。」
「ほへぇ〜、それは予想外だねぇ〜…星剣が反応したと言う事はアレと関わりがある人物だと言う事だけど…あんな小さい子がねぇ、疑わしい。」
「聞き出しますか?」
「いやいや、キッカケが無いのに話し掛けるなんて変質者って間違われちゃうよ?そう、何かキッカケがあればいいんだけど…」
彼女がそんなことを思っていると、とある二人の男女に目が行った。
依頼や募集の紙が貼り出された掲示板を舐め回すように見る夫婦。
「アルトリウス、あの二人の夫婦とさっきの子供は恐らく家族だよ?纏っている"色"が同じだ。」
「何か、必死に探しているようですね。」
「ふむ、どれどれ!ここはこのメルリヌスにお任せあれ!」
メルリヌスは、何かを必死に探している夫婦の元へと駆け寄る。
「すみません、そこの御二方!」
「は、はい?」、「どなたでしょう?」
「私の名前はメルリヌスです!何かお困りですかな?」
「ええ…ウチの子供に魔術を教えて貰いたいのですが…中々に見つからなくて…」
「おっと、それならばここに居る私を雇ってみませんか?こう見えて、私…魔法にはそれなりの自信があるのですよ?」
「本当ですか!?」
「是非、お願いしたいです!給料は希望通りにお支払いします。どうか、ウチの息子に魔術を教えてやって下さい!あの子は天才なのです。」
「承りました!では、この私が必ずや息子さんを最高の魔法使いにしてあげます!」
「魔術では?」
「あ、そう魔術!」
その一部始終を遠くで見ていた、アルトリウスはやれやれと言った仕草を見せる。
(まぁ、彼女のお陰で近付く事は出来ましたが…もしも、あの子供が我々の探しているものと関わりがあるならば…その時は…)
アルトリウスは、深呼吸をして空を見上げる。
その時の反動で外套のフードにしっかりと仕舞っていた、金色の髪の毛が夕風にうたれて靡かれる。
そして彼女の翠緑色の瞳が夕日に照らされる…しかし夕の光は、その瞳に逆に飲み込まれる様に溶けてゆく。




