第十一節 討伐依頼
魔境大陸で冒険者になって2日目。
早速だが、俺たちは昨日取引した相手と裏路地で会う事になった。
因みに、取引した彼女達の名前はカルとマルという蛇脚族の姉妹。
彼女達は、いい感じに昨日のセタンタとヒッポリュテの行った行為に怯えて言う事を聞いてくれている。
取り敢えず、裏切る事は無いと言えるだろう。
ま、そんな事はさておき。
俺達は冒険者ギルドで受けて来た依頼をトレードする。
まず、『呪いの槍』が受けたのは行方不明のペットの捜索依頼を三件。
そして、二人が受けた依頼は、魔物の討伐を三件。
討伐の内容はこうだ。
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依頼内容
スケルトンウルフの群れの討伐 ランクD〜C
出没場所:魔都外の荒野
期限:1日〜5日
依頼者:冒険者ギルド
報酬:鉄銭5枚
備考:討伐の目安は10匹〜25匹でお願いします。討伐証明としてスケルトンウルフの魔骨石をギルドへ。
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依頼内容
サンドガーストの討伐 ランクD
出没場所:魔境大陸の砂漠や腐地帯
期間:一週間〜三週間
依頼者:冒険者ギルド
報酬:鉄銭3枚
備考:サンドガーストの魔格、肉皮などをギルドへ
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依頼内容
死蝕砂芋虫の討伐 ランクC
出没場所:魔都バビロニア近郊の砂漠地帯や腐地帯
期間:1日〜5日
依頼者:魔都バビロニアの住民やギルド
報酬:鉄銭10枚〜
備考:魔都バビロニア近くの砂漠地帯に発生した群れの討伐、討伐数によっては報酬を引き上げ。
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以上の3つの討伐依頼を受ける事になりました。
そんな訳で、俺たちは魔都バビロニアの門を抜けて再び砂漠が一面に広がる外に出て来た。
暑いな…流石は、太陽が沈まぬ大陸…朝も昼も夜も関係なく気温は30度以上を超えるので水の魔法で常に身体を覆わなければ暑がりの俺は耐えられない。
水分補給もこまめにしなければな、魔法というのは便利だ。
「さてと、早速討伐に向かいましょう!」
「そうね。」
ふむ、クロセルさんや冷静な感じを装っているようですがウキウキが抑え切れてませんよ?
この辺りだったら、まずはスケルトンウルフが狙い目だな。
他の二つの討伐対象は、常日頃から姿を現す訳では無い。
滅多に姿を現さず、基本的には砂の中や腐地帯の腐池の中に潜んでいる確率の方が高いようだ。
魔物図鑑、様々だな。
この事を考えるとやはり、狙い目はスケルトンウルフだろう。
魔境大陸でもトップクラスにその出没情報が高く、最も村々での被害が多い魔物だ。
セタンタと出会ってすぐに遭遇した魔物もスケルトンウルフだったしな。
なので、サンドガーストと死蝕砂芋虫に関しては道中で運良く遭遇したらって感じだな。
幸い、依頼期間は長いので急がなくても良い。
「お?」
おやまぁ、噂をすればスケルトンウルフの群れがゾロゾロと現れた。
爛れ落ちた皮膚を垂らした犬骨頭。
2メートル程の巨躯に鋭い骨犬歯。
カタカタカタと言う、如何にも骨らしい遠吠えを上げる骨犬。
ざっと数えただけでも、50匹は居る。
自ら狩られに来てくれるとは、忠犬ハチ公の名を与えよう。
と、そんな事を考えていると…後方の砂漠の砂が火山の噴火の如く上がり、砂埃の中より変な生物が現れた。
腐敗し爛れた皮膚、芋虫。
大きな体躯は8メートルほどあるだろうか。
様々な毒々しい色を持つ数百の毛が触手の様に動き、口らしき部分からは酸性の液体が漏れている。
死蝕砂芋虫で間違いないだろう。
数は2体、うわぁ…気持ち悪い…戦いたく無い。
っておいおい、今度は何だよ…
俺達の左右を囲むように、砂漠の中からチンアナゴの様に人の手らしき物が顔を出していた。
砂の中から這い出て来たのは、バイ◯ハザ◯ドやその他の映画などでよく見るようなゾンビがいっぱい出て来た。
ざっと、15体ほどか?
なんて、幸運なのだろうか。
狙っていた魔物達が、一斉に現れてくれるとは…数が多いな…いや、みんなと分担すれば良いのか。
「僕はスケルトンウルフを担当します、クロセルはあのゾンビ、あ…サンドガーストをお願いします。
ヒッポリュテとセタンタは、死蝕砂芋虫を!」
俺がそう言うと、三人は頷きそれぞれが獲物を構える。
みんな心なしか楽しそうに見える、まぁ俺もウキウキしてる。
魔物相手なら、殺しても心はさほど傷まないしな。
そんな訳で、魔物対『呪いの槍』の戦いが始まった。
まずは俺の戦いだ。
スケルトンウルフの群れは、まず俺たちを識別し最も弱そうな獲物を見定めて襲ってくる習性がある。
その獲物に選ばれたのは、予想通り俺らしい。
魔物にも舐められるとは…少し、悔しい。
スケルトンウルフ…魔境大陸ではさほど危険度が高く無い魔物だが油断すれば簡単にこちらがやられてしまう。
俺は、油断も慢心も絶対にしない。
あまり、長期戦になるのも面倒なので一瞬で仕留める。
殲滅戦は、得意だからな。
俺は、師匠から授かった陽を統べる魔杖を構える。
魔境大陸の環境は俺の魔法にとって好都合と言える。
理由は、この杖は日が昇っている時間帯は持ち主の魔力の量と威力を底上げしてくれるだ。
お陰で、最小限の魔力でも相手を簡単に葬るほどの威力を持っている。
「ーー起動」
そう呟くと、ダインの周りには空間が歪み始め、炎の槍・氷の槍・風の槍・岩の槍・雷の槍が数百個ほど展開される。
その光景を見た、他の面々は目を見開く。
「なるほどな…小僧は、魔法使いってやつかい。」
「師匠がマーリンだと言うのは、本当だったぼい?ウケる。」
「流石はダインね!」
よせやい、照れるだろ。
「ーー穿て!
ーー『五重連魔弾』
その合図と共に、まるで機関銃のような勢いと威力を持って五つの属性の魔法が銃弾のように放たれる。
ドガガガガガッ!!と言う凄まじい音を立てて、スケルトンウルフを跡形もなく蹂躙していく。
常人ならば、これほどの魔法(魔術)を撃てば簡単に魔力枯渇を起こして気を失ってしまうだろう。
最も、普通ならば五つの属性を同時に操る事さえ魔術師としての範疇を超えている。
凄まじい、ガトリングの様な魔法の応酬を掻い潜った数十匹のスケルトンウルフがダインの元に向かって駆けてくる。
それを予見していたダインは、地面に手を添えて魔力を流す。
刹那ーー砂漠の砂が先端が鋭く尖った岩へと変化し、スケルトンウルフの体や脳を貫いてみせた。
次に動いたのは、クロセル。
凄まじい踏み込みで一気に近くにいたサンドガーストへと間合いを詰め腰に帯びた鞘より剣を抜き横に薙ぐ。
スパンっと言う綺麗な音を立ててサンドガーストの首が宙に舞う。
「剣神流奥義ーー『嵐電』!」
放たれた斬撃は、凄まじい速度で嵐のように吹き荒れると次々に魔物の首を堕としていく。
迫り来るゾンビの群れに恐れを知らず、クロセルはただただ剣を振り続ける。
その美しき顔に返り血を浴びながら。
最後…同時に動き出したのは、ヒッポリュテとセタンタ。
また彼等が動き出した瞬間に、死蝕砂芋虫もまた動き出す。
「キャラがぁぁああらァァァァァァァァァァァァア!!!」
その気色の悪い雄叫びを上げ、身体に生えた全ての触手が迫り来る獲物に向かって伸びる。
四方八方から襲い掛かってくる触手を、2人は物ともしない。
ヒッポリュテは、その触手に飛び乗り、飛び移りを繰り返しながら獲物に近付く。
そして、「ふぅぅ…」と深く息を吸う…すると彼女は徐に背に掛けた弓を手に取り、矢を引き絞る。
弓がギリギリと軋む音を立て、折れ曲がってしまう程に引き絞る。
自身の背丈よりある弓矢を、扱うその腕はアマゾネス特有の強靭な筋力によって成せる技だろう。
「シッ!」
刹那ーーありったけの力で放たれた5本の矢が、巨大な芋虫の魔物に向かって飛来する。
その矢に込められた力は凄まじく、一本一本が一つの竜巻のようにして芋虫の魔物の身体を破壊する。
射抜くのではなく、破壊した。
「ぎぃねすおしつけひあううえぇぇぇえええ!」
声にならない悲鳴を上げ、身体のほぼ全てを破壊された死蝕砂芋虫は身体が崩れ落ち絶命する。
「ハッ!流石だな!」
セタンタはそう言いながら、槍をヌンチャクの様に振り回して全ての触手を撃ち落とす。
と、地面を大きく蹴り芋虫の魔物よりも高く飛び…槍の尻部分を握り魔力を込める。
そして、狙いを定めて一気に投げ放つ。
手から投擲された槍は、荒々しい衝撃波と共にミサイルのような勢いを持って死蝕砂芋虫の身体を見事に貫いてみせた。
ふぅ…なんとか倒せたみたいだな。
やはり、個々の戦闘力が強いメンバーが集まっているお陰なのかその後も次々とさほど苦戦せずに魔物を倒す事に成功した。
無事に依頼を終えて、カルとマルと合流する。
取り敢えず手に入れた素材などを一旦、トレードしそれぞれギルドに報告する。
さて、今回手に入れた報酬は色々追加報酬もあり…鉄銭40枚。
さらに、ランクもEランクからDへと昇格した。
彼女達もしっかりと働いてくれている。
驚いた事に、彼女達はこれまでの仕事で貯めたお金で店を始めたんだとか。
まぁ簡単に仕事内容を説明すると、何でも屋って奴だ。
意外にも、かなり稼げるらしい。
いずれは、冒険者を辞めてそっち一本で仕事をやりたいと言ってきた。
俺達としてもあと一つ、ランクを上げればそれなりに報酬の高い討伐依頼が受けれるので問題ない。
ーー
とまぁ、依頼のお陰でかなりお金を稼げたのでご褒美に魔都バニロニアで買い物をすることにした。
見に来たのは、これからの冒険に必要になるであろう装備を買う事にした。
主に、俺とクロセルのだ。
まずは、クロセルの装備。
装備と言っても、あまり重々しい物は避けたいな。
クロセル本人も、そういうガチガチの鎧は性に合わないって言ってるしな。
「これなんか、どうでしょう?」
そういって俺が、手に取ったのは少し綺麗な刺繍が施されたブレスレットだ。
店の店主の説明では、「こいつは、なんでも不死身の魔王の身体の一部が使われた物らしくてな…纏う魔気の質を高めて、火・雷・水の魔術に耐性があるって噂だ。」かなり便利だ。
「可愛いわね、買うわ。」
「はいよ、鉄銭10枚だ。」
必死な値切り交渉によって、5枚に値下げ出来た。
「どう?」
「似合ってますよ!」
「あーしも欲しい!」
「分かりました。」
+5枚を支払ってお揃いの物を買った、折角なのでみんなでお揃いにした。
あとは、クロセルに心臓を守る為に胸当てなどを買ってあげた。
クロセルがお返しにと、鉢金をプレゼントしてくれた。
全く、俺に鉢金を渡す時のクロセルの表情は恋する乙女だったよ…いやー、氷の令嬢と呼ばれていたのが懐かしいよ。
結構、金を使ってしまったな…でもまぁ、冒険者ランクも上がって受けれる依頼も増えたし。
彼女達の協力もあって、資金の方は問題ない…が、節約は必須だ。
旅の途中に一文無しになって、飢え死にするなんて冗談じゃないしな。
しかし…思ったよりも魔境大陸での生活も順調だ。
大丈夫、やっていける。
クロセルは絶対に家族のもとに送り届けないとな、守ってみせるさ。
ヒッポリュテは俺なんかよりも強いけど、俺だって守ってみせるさ。
セタンタは…まぁ大丈夫だろう、友達だしな。
うん。
頑張ろう!




