第九節 人探し
そんな訳で、俺たちは冒険者として初の仕事を受ける事にした。
と言っても登録してすぐに依頼を受けた訳では無い。
あの日は色々な手続きがあり思ったよりも時間が掛かってしまったので、日が暮れてしまったから宿で一泊する事にしたのだ。
とまぁ、無駄話はここまでにして依頼を受けた場所に辿り着きました。
魔都バビロニアは俺の思っている以上に広くて第一都市から第二都市に向かうまでに三時間ほど掛かった…都市と言っても人の作る様な街と違って高低差や足場が酷く歩きづらかった。
バビロニアの第二都市ウルルクを少し歩いたところに、依頼人の住む家があった。
家といってもとても立派とは言えない、木と土で造ったような構造で竪穴式住居みたいな感じだ。
少し凸凹した扉をノックすると中から「どうぞ」と言う女性の声が聞こえたので優しく扉を開く。
「失礼します、依頼で訪れた者です。」
中に居たのは、蝙蝠のような顔をした魔族の女性。
年齢は、40後半。
服装は決して綺麗とは言えない瑣末な物だったが、汚くも無い。
彼女は何処か、心ここに在らず見たいな感じでその顔には不安や焦りが見て取れる。
「お待ちしておりました冒険者様…」
「では早速、詳しいお話をお聞かせ下さい!」
ダインがそう言うと、彼女はゆっくりと依頼の内容を語り出した。
依頼の内容はこうだ。
2日前から、彼女の息子であるスーズが行方不明になったらしい。
息子は活発な子で良く外に遊びに行く事は多かったものの必ず夕暮れ時には帰って来ていた。
しかし、2日前に友達と出掛けてくると言ったっきりそのまま戻って来なかったようだ。
友人の家に泊まっているかも知れない…そう心を落ち着かせるのも束の間、息子と仲の良い友人も2日前から行方不明になっていると聞き…冒険者ギルドに依頼をしたようだ。
彼女は、焦りと不安の中でもゆっくりと此方に伝わるように話してくれた。
流石は、大人と言った所か。
しかし、なるほどなぁ…行方不明の子供の捜索と言った所か。
しかも話を聞けば、事態はお世辞にも良いとは言えない…急いだ方がいいだろう。
もしかすると、いやもしかしなくとも、これが単なる行方不明じゃなくて拉致されたって可能性も高いしな。
「分かりました、僕達【呪いの槍】が必ず貴方の息子さんを見つけます!」
ーー
さぁ、行方不明の息子さんを捜索する為に行動を開始した。
「さてと、どう思いますか?」
俺は、そう後ろからついてくる三人に向かって質問する。
「どう思うって何よ?」
「普通の行方不明って感じじゃ無いだろうな。」
「あーしもそう思う〜」
「わ、私もよ!」
俺の質問の意図にイマイチ理解できなかったクロセルがそう言葉を漏らすが、ヒッポリュテとセタンタは流石と言った所だ。
うん、クロセル…便乗するのは良くないよ?まぁ、可愛いから良いけどね?
しっかし…広いなこの街も…これは闇雲に探しても見つかる事は無さそうだな。
なら、心当たりがあって尚且つ、俺が最もあり得ると思う場所に向かうとしよう。
第二魔都ウルルクの街の奥へと進むと薄暗く、少しボロっちく、悪臭が漂う街に出た。
街、と言う言い方は少し語弊があるな…いや、正しいか?
まぁ、街と言ってもただの街って訳じゃない。
元の世界で言う所のスラム街って感じだ。
辺りから物凄い悪臭、負のオーラが漂って来て、その場に立っているだけで吐き気を催しそうだ。
だが、この行方不明が誘拐だった場合…大体がこういうスラム街とかに居る可能性が高いからな。
「ま、間違いなくココだよな。」
セタンタは当然のように、そう言った。
「ちょっと早く解決しよ〜?あーし、この場所は苦手って感じ〜臭いし、汚い〜」
oh、流石はバリバリのギャル筋肉美女様…思った事をハッキリと言う所は嫌いじゃ無いけどね?
まあ、確かに俺もそう思っていたけど口に出さないようにしてたんだけどな…
さてとそんなこんなで、俺達はスラム街を進んで行く。
街の治安は当然の如く悪く道中で何人かの魔族の暴走に絡まれたが彼等はなす術なくヒッポリュテとセタンタによってボコボコにされる事になる。
セタンタ曰く、この魔都バビロニアの数ある街の中でも最も治安が悪く犯罪が跋扈する危険な場所であるが故に何処で何が行われていてもおかしくはないらしい。
幾つもある路地を進んだ先にあったのは、ポツンと佇む一軒の建物。
外観は、壁が腐り所々が崩れ落ち。
蔓に似たような植物が巻きつき、今にも崩れそうな感じだった。
「ここだ。」
セタンタがそう呟く。
本当にこんな場所に子供が居るのだろうか…まあ確かに、こんなホラーめいた場所興味を惹かれる気持ちも分からなく無いが…わざわざこんな危険な街にまで訪れくるのだろうか。
クロセルも俺と同じようにイマイチ疑っている様な顔をしている一方で、ヒッポリュテは納得している…やはりここは人生経験の差が関係しているのだろう。
建物の中に侵入すると其処には、地下と続いているであろう階段だけがぽつりと待ち構えて居た。
「クロセル、ダイン…これから起こる事は全て俺とヒッポリュテの責任だ。」
「それな〜、だからなんも気負わなくていいっすよ〜」
ん?
2人は一体何の話をしているのかわからない…クロセルは、どうやらこの言葉の意味が理解出来たのか何処か悔しそうな顔をしている。
その数分後、俺は彼等の言った言葉の意味を理解する事になる。
そして同時に、やはりここは異世界なのだと思い知らされる事にもなる。




