第六節 感動の再会?
あれから、数日が経った。
その間も魔物や魔獣と戦闘を行い、野宿してを繰り返しながら大変な思いをしてようやく街の近くへと辿り着いた。
此処が、魔都バビロニア。
魔境大陸に存在する都市よ中でも最も大きい街。
かつて、亜人魔混沌戦争に於いて魔族の大群を率いた魔聖女帝ティアマレスが拠点としていた都市。
一眼見た感想は、めちゃくちゃ規模が大きい。
都市ガレスの何倍もあるかも知れない、魔都の周りは巨大な岩の大壁で覆われている。
壁にはティアマレスが、施した結界魔法と呼ばれる特別な魔法が掛けられていて、敵意を持つ魔族や魔物や魔獣がこの壁に触れると灼熱の炎に包まれるらしい。
何とも、物騒な壁だ。
魔都の中心部には、螺旋階段の様な形状をした巨大な古城が一際存在感を持って聳え立っている。
この城は、かつての戦争の影響で見るも無惨な事になってしまったがこの都市に住まう魔族が力を合わせて出来る限り再建したようだ。
偉大なる城と壁の中には、様々な屋台や建物が並んでおり最大の人数を誇る魔境大陸の象徴でもある。
そんな魔都バビロニアに入ろうとしたが、此処で一つ…問題が生じてしまう。
現在は、その魔都の城門の近くの場所で待機している。
どうやら、セタンタはこの街に入るにはかなり厳しいらしい…やはり、魔族の間でもボルーグ族は忌避されているようで入れるには入れるが…取り締まりや法則が物凄く厳しい事になっている。
一応、入れるのか。
「まぁ、入れるが…その代わりに、冒険者や傭兵が随時監視してくるがな。」
うわ、何それ。
スッゲェ厳しいな…なんか、脳裏にそんな光景が思い浮かぶよ。
まぁでも、入れるなら…少し工夫すれば対処可能かもしれないな。
そう言えば、師匠からプレゼントされためちゃくちゃ丁度いい物があった。
「それなら、何とかなるかもしれません。」
「本当か?そりゃ助かるよ、んで?具体的には、どうすんだ?」
早速、師匠から貰った帽子を手渡そうと思ったが…その時、辺りの空気が張り詰めるような感覚がした。
同時に、奥の方で何かがコチラに凄まじい速度で向かってくる足音が響き渡ってきた。
「ッ!?小僧、下がれ!」
セタンタの叫び声と共に、一つの落雷がセタンタへと堕ちて来た。
ガキンッ!と言う金属音が響き渡る。
「貴様…その小僧から離れろ!」
「おいおい、いきなり襲いかかって来てそりゃねぇだろ?嬢ちゃん?ーーっと、危ねぇ。」
セタンタを襲撃してきた何者かの横から、更に別の影が現れ彼に向かって剣が振り下ろされる。
が、セタンタはそれを既に予見していたようで見事に槍の尻尾よ部分で受け止めて見せた。
「なっ!?」
「その藍色の髪、顔に刻まれた赤き刻印…ボルーグ族だな?」
「そう言うテメェは、アマゾネスかい?そっちの嬢ちゃんは、人族か?ん?…まさか、テメェら。」
辺り一面に充満していた砂埃が晴れて、姿が露わになる。
驚く事に、姿を現したのは…何日、何週間も前に毎日の様に過ごして来た大切な家族、ヒッポリュテとクロセルの姿だった。
「2人とも、何してるんですか!」
「下がったろ、ダイン!コイツは、危険だ!殺されるぞ!」
「そうよダイン!今すぐ、コイツを殺して救って上げるから!」
「ちょっ!」
2人は、俺が何か言う暇もなくセタンタに襲い掛かる。
こんな時に言うのも何だが、クロセルが物凄く強い…ヒッポリュテとセタンタの異次元の攻防に必死に食らいついている…でも、流石はセタンタ…2人の音速を超える激しい猛攻を完璧なまでに防ぎ切っている。
殺す気で襲い掛かるヒッポリュテとクロセルの攻撃を紙一重で捌くだけで、反撃する気はないらしい。
て言うか、2人とも何か激しい勘違いをしている様だから流石に止めなければ…でも、どうやって止めようか。
声は、聞こえない。
あ、そうだ。
「おいおい、容赦無しだな!」
「ボルーグ族、やはり手強いな…」
「コイツ…私達の攻撃を全部、防いでる!」
「いい加減にしろぉぉぉおお!」
3人の間に割って入るように、魔法を花火のようにして打ち上げる。
ようやく、戦闘が止まった。
「2人とも辞めてください!彼は、僕を助けてくれた恩人です!手を出すのは許しません!」
「だが!」
「でも!」
「だがも、でももありません!全く…取り敢えず落ち着いて。」
その後も、30分くらいに及ぶ必死な説得で何とか2人を落ち着かせる事に成功した…はぁ、本当に2人とも頑固で大変だった…それにしても、さすがに騒ぎ過ぎた…人が集まって来ることを危惧して場所を変える事にした。
辺りは暗くなって来たので、魔都を少し離れた場所で野宿する事になった。
現在、俺はクロセルと再会を喜んでいた…どうやら、セタンタとヒッポリュテは秘密の話をするようで、少し離れた場所に居る。
「本当に、無事で良かったダイン…」
「クロセルも無事で良かったです。」
「もう離さないわよ!」
「はい、僕も同じく。」
本当に、2人が無事で良かった…ずっと無事か心配で心配で夜しか眠れなかった…
「ねぇ、あの人は本当に信用出来るの…?ボ、ボルーグ族なのよ?」
そう言う、クロセルの顔には恐怖の色が滲んでいた。
ま、これが普通の反応なのか…みんなが皆んな、俺みたいな感性を持っている訳じゃないのは分かっていたが…やはり、少し不便でやり切れない気持ちになる。
「はい、断言します。彼は、信頼出来ます。」
だからこそ、今俺が出来ることはこれくらいしか無い。
俺の言葉を汲んでくれたのか、クロセルは分かった。と言って納得してくれた。
まぁ、完璧に信用しろなんて言われても難しいのは分かってたし、取り敢えずはコレでいいだろう。
さて、あの2人は何を話してるんだろうか。
「襲い掛かっかっちゃってごみん。」
「気にすんな、そりゃボルーグ族が人族の子供と一緒に居たんだ。誰でも襲われると勘違いするだろうよ。」
「道中、ダインの護衛をしてくれた事を感謝する。それで〜これからどうする?」
「あん?そりゃ最後までアイツを送り届けるぜ。」
「そう、助かる〜。」
「俺達は、これから街に入って冒険者として生計を立てるつもりだ。アンタらは、どうする?」
「名案だな、あーしとクロセルも同行しよう。」
「うっし、なら明日さっそく村に向かうぞ。」
「ああ。」
それぞれ、話し終えたようだな。
クロセルから聞いた話では、2人はここから少し離れた東部の方へ飛ばされたらしい。
ヒッポリュテの魔境大陸の知識と地図力を頼りにして、魔都バビロニアに拠点を置き傭兵或いは冒険者となって資金繰りをしようとしていたらしい。
何がともあれ、2人が無事でよかった。
まぁ、あのヒッポリュテとクロセルなら俺よりも生き残れる確率は高いだろうしな。
魔都バビロニアへは、明日向かう事に決まった。
目的は、主に旅の道中での資金集めや名声を高める事。
一つ目の目的は、重要だ。
金が無ければ、何も出来ない…話に聞くと、ボルーグ族はどの大陸に行っても断られる事は無いが、船や馬車の代金がエゲツないようだから金を稼ぐ事が主な目的。
二つ目の、名声に関しては…冒険者として名を上げる事によって、もしかしたら俺達と同じ様に飛ばされた人達に出逢えるかも知れないしな。
まぁ、兎に角…やる事はセタンタと出会った時から変わらない…冒険者になって資金や名声を稼ぐ事だ。
今日はもう遅いし、皆んなで寝よう。
それにしても、本当に良かった…クロセルそしてヒッポリュテ…無事で良かった…ヒッポリュテは大丈夫だとして、クロセルは必ず守って見せる。
例え、この手を汚してでも。




