第一節 儚き夢と謎の女神
ーー何も聞こえない
ーー何も見えない
目の前は真っ暗で…映画館で映画が上映する少し前の様な静けさに包まれている。
そう思っていたが、何か暗闇の奥の方から段々と景色が浮かび上がってきた。
見えたのは、豪華な鎧を身に付けた顔にモヤが掛かった騎士…その騎士達の目の前には、多くの屍の上で剣を天に掲げる見覚えのある人物。
次の映像は、彼等の本拠地と思われる大きな城が業火に包まれ、同じ鎧を着た者達が殺し合いをしている。
最初の夢に出てきた、12人の豪華な鎧の騎士達もまた殺し合いをしており…リーダーだと思われる騎士は、モヤ越しからでも分かるような涙を流し叫んでいた。
そして最後は…生き残った最後の一人の胸を突き刺し殺した。
ーープツンと映像が切り替わる。
辺り一面に咲き誇る美しい薔薇の様な花、その中心にポツンと建つ巨大な塔があった。
塔の中には、一人の女と一匹の獣が戯れていた。
塔の外からは、精霊の様な者達が訪れる。
とても楽しそうだった…皆で歌い、踊り、笑い合い、遊ぶ…子供達が公園で友達と楽しそうに遊んでいる記憶を思い出す。
幸せそうだった…また、映像が切り替わる。
映し出された映像は、地獄。
美しかった花畑は業火へと姿を変え、一匹の巨大な怪物が大きく叫びながら人々を蹂躙している。
その悲劇を止める為に、現れたのは黄金の輝きを放つ剣を持った一人の騎士と奇想天外な魔法を操る一人の魔法使い。
凄まじい戦闘だった、その影響で世界は崩壊を始めた。
最後は、騎士の放った黄金の一撃がキッカケとなって世界は崩壊した。
最後の映像は…見た事のあるような景色…何処かの路地裏だろうか…大量の血を流しながら独り寂しく生を終えようとする生き物。
映像が終わる。
最後に聞こえたのは…『私を殺しに来て』と言う願いでもあり呪いだった。
ーー
ハッ!
となって、目を覚ます。
今のは夢か…でも、何処か懐かしいような…
死んだと思ったが、どうやら生きているらしい。
夢ではあるのか?
辺りは、真っ白。
まるで、転生前に訪れた所に似ている。
それに身体も少し、大きくなった気がする。
まさか何十年も経過したとか?いや、それはあり得ない…だって今の俺の服装は、元の世界で見慣れた制服を着ていたのだから。
え、本当に死んだ?
死んだら元の転生前の身体に戻るのか?
それはー少し複雑だな…たとえ、本当に死んでしまったのなら悔しいな。
まだ、何も出来てないってのに。
まだ10歳だよ?
元の世界よりも、生きてる年が少ないなんて転生した意味が無いじゃないか。
まぁ、これも運命なら受け入れるしかないか。
「いーえ、死んでませんよぉ〜?」
ふと、聞き覚えのある声がする。
声のした方を振り返ると、そこには黄金の光に包まれた女性が立っていた。
フォルムが何となく女性ぽかったから決めつけただけだが、喋り方や声からしても女なのは間違いない。
「初めまして、ダインスレイブさん!」
初めまして?
いやー、初めましてにしては凄い親近感があるんですが…一度、俺たち出会いましたよね?
「ん、あ〜そうですね♪」
忘れてしまったのですかい?
あんなに愛し合った中だと言うのに!
「冗談も程々にして下さ〜い。」
すみません。
それで、俺に何か用かな?
「え〜?貴方が自分で此処に来たんじゃないですか〜…」
そうなのか?
でもこんな所に来た覚えはないぞ?
俺は確か、あの気味の悪い瞳の爆発に巻き込まれてそのまま意識を失って…目覚めたらこの場所に居たんだけど。
「それは凄い偶然ですね〜、私としても今回の事は予想外だったので驚きました〜、結論から言えば〜貴方は死んでません〜!一時的に、魂が此方の世界に迷い込んだのでしょう!」
ほう、神様でも予想外の事があるんだな。
それは驚きだよ、て言うかやっぱり俺は死んで無かったんだな。
「特別に用事がある訳ではないですが〜、貴方…とても面白いので〜この機会ですし、私が少しばかり力添えをして差し上げましょう。」
力添えねぇ〜…
それは、ありがたい。
でも、具体的には何をしてくれるんだ?
「これからの助言よ〜!」
助言ねぇ〜
なんか、期待してた答えと違って凄いテンション下がるんだけど…どうしてくれるの?
「ひど〜い!」
うわぁ…いるよねぇ、そうやってぶりっ子する女が俺は一番嫌いなんだよ。
しかも、あんた顔も見えないから凄く頭がおかしい人みたいだよ?
「捻くれすぎよ〜、本当なら貴方に力を与えようと思ったんだけど〜、私の力は今〜厄介な奴の所為で力のほぼ全てを制限されてるのです〜」
そいつは、お気の毒に…
てか、神様なのに何でそんな事になってんだよ。
悪さでもしたのか?
「いえいえ〜、女神である私の立場を奪おうとする厄介な存在が面倒臭い事をしてくれたお陰で、無駄に力を消費してしまったのです〜、だから、助言しか出来ないのです!」
ふ〜ん、それも胡散臭いけど良いや。
面倒ごとに巻き込まれるのはゴメンだからな…って言いたい所だけど、あんたの発言から察するに俺は面倒事に巻き込まれてるんだろ?
「ご明察!貴方は、現在ーーあの大規模な魔力厄災によって魔境大陸に飛ばされてしまったのです〜!
しかも、魔境大陸はかなり過酷な環境なので…知識が十分に無い貴方では生き残るのは難しいでしょう〜」
随分とハッキリ言うんだな。
まぁ、その方が俺としてはありがたいけどな。
そんなに厳しいのか?その魔境大陸ってのは…
「ええ!
少なくとも今の貴方では難しいでしょうね〜、あそこには強力な魔物やそれよりも強い魔王達がわんさか居ますから。」
魔王!
異世界ファンタジー来たぁぁぁあ!
良いねぇ、魔王…会ってみたい物だ。
「それでどうしますか?」
そりゃ、勿論お願いしたい所だけどさ。
一つ質問があるんだが…どうしてそんなに俺の事を気に掛ける?
「そうでねぇ〜、貴方が異世界人だからですかねぇ〜」
異世界人ってのは、珍しいのか?
「それはもう。だから、貴方がこれから何を成そうとするのか〜とか、興味があるんですよ。」
は〜、なるほどねぇ…
それが本心かは知らないが、まぁいいさ。
助言、頼めるか?
って、あれ?
何か、意識が…遠のいていく。
「貴方の魂をあの世界に引き戻します。
最後に、これから言う事に従うように。
『次に貴方が目を覚ました時、貴方にとって大切な友となる男が側に居ます。
貴方が貴方自身の命を大切に思うなら、彼に縋るのです。
さすれば、必ずより良い道へと進めるでしょう。』
女神とやらの、助言を全て聞き終えた時ーー俺の意識は再び暗闇へと消えていった。
「困ったものですねぇ〜、私の未来眼を持ってしても彼の未来にはモヤが掛かって居ますね…」
まぁ、良いでしょう。
現時点で、彼は脅威の対象にはならない。
引き続き監視は、しなくては…
三章、開幕です。




