第九節 世界の歴史
あれから、一年経過した。
年齢的な面は勿論だが、成長したクロセル。
成長したのはそれだけではない。
この一年間で、見違えるほどに彼女は成長を遂げた。
まず、あの誕生日から数ヶ月後…クロセルは、雷神流(剣神)の"中級"へと昇格した。
僅か10歳の娘が、ほんの数年で中級になったのは異例の事らしい。
俺にとってはそこまで驚いていない、だってクロセルは剣に関しては天才だったし…近いうちに上級に行けると思う。
しかも、その実力は…模擬戦だが相性が悪いとされている舞神流の騎士を一方的にボコボコにしてしまうくらいに強かった。
一方の俺も中々に順調で、このまま鍛錬を続ければ中級に昇格してやっても良いとヒッポリュテに言われた。
どっちかと言ったら、舞神流の方が得意だったので習得するのにかなり時間が掛かってしまったけど問題ない。
勉強の面に関しても、同じ感じだ。
初めの頃は、何一つできなかった算術も中級レベルなら出来る様になったし、読み書きだって簡単な物から少し難しい物までなら出来る様になった。
魔法に関しても、順調だ。
魔法を教えるにあたって俺は、二人の苦手傾向の魔法はもう捨てて得意な魔法を行けるところまで鍛えてやろうと言う手段に出た。
そのお陰なのか、クロセルは氷魔法と雷魔法の両方は中級まで扱えるようになった。
ヒッポリュテも、雷魔法は上級まで扱えるようになった。
しかし、二人とも…無詠唱魔法だけは全く習得出来る様子が無い…これに関しては賭けでもあったから仕方ない。
師匠も、無詠唱が出来るのは本当に一部の天才に限られると言っていたし出来ないのが普通なんだと二人に言って聞かせた。
とまぁ、こんな感じで各々が各々のスピードでしっかりと成長している。
最近では、ヒッポリュテも本格的に俺達に稽古をつけている。
俺は、ボコボコにされてるんだけどね。
ーー
夜は、俺の時間だ。
最初に、行っているのは魔法を繊細に操りフィギュアを造る事で鍛える訓練をする頑張っている。
この頃になると、もはや魔法の扱いなどそこら辺の魔法師なんかよりも優秀だと自負出来る位には成長している。
因みに…師匠型のフィギュアを持ってくるのは不可能だったので…使用済みのTBackと黒タイツは回収して来た。
毎日、匂いを嗅いで寝るのが俺の日課になってる。
さすがに、この部屋に持ってくるとバレたらとんでもない事になりそうなのでニーニャとアルマに管理してもらってる。
訓練が終わると、楽しい読書の時間。
クロセルの誕生日で、ヒッポリュテとクロセルの二人から貰った本は嫌と言う程に読んでいる。
本の題名は『世界ノ歴史』と言う分厚い辞典。
これが、本当に面白くてタメになる。
元々、世界史や日本史が好きだった俺にとってこの本はまさに運命的な出会いだった。
二人には、これ以上ない位に感謝している。
何度も読んでいるので、内容は全て憶えている。
今日は、皆んなにこの世界の歴史の出来事について紹介しようと思う。
長くなるゾォ!?
ーー
この世界は、百万年前より存在していたらしい。
ひゃくまんねんまえ?頭がおかしくなりそうな位に古い…さらに、驚く事に元々、世界は八つに分けられていたらしい。
正確には、一つの世界を八つに分け各々の領域を"世界"とし管理したと言われている。
"世界創世時代"と呼ばれる古の時代には、それぞれの世界を管理する存在を"神"と呼んでいたようだ。
天世界を統べりし:天神
人の世界を統べる:人神
魔の世界を統べる:魔神
海の世界を統べる:海神
獣の世界を統べる:獣神
龍の世界を統べる:龍神
亞の世界を統べる:亜神
邪の世界を統べる:邪神
彼等を総して、『創世八神』と呼んだ。
先程も現した通り、本当に別々の空間に一つずつ世界があるのでは無く…元々一つに繋がっていた世界を龍神が各々の住まう領域に結界を隔てた事が始まり。ただし、本当かどうかは不明。
そして、各々の種族の頂点だった存在に龍神は役目を与えた。それが各世界を管理する種族の頂点"神"として君臨する事であった。
互いの存在を認知する者はごく僅かに限られた。
それぞれがそれぞれの生活を送っていた。
しかし、ある事件によって七つの世界は滅亡を迎えた。
《100万年前〜50万年前》
空白
《50万年前〜10万年前》
八つの世界の実質的なリーダーだった龍神の一人が世界を滅ぼし他世界の結界を破り侵略を開始した。
圧倒的な力を以った大虐殺により、八つの世界の内・海神世界・獣神世界・天神世界・魔神世界・亜神世界・龍神世界が滅んだ。
裏切った龍神に抗う為に生き残った他世界の神達と最強の配下達の一部が結成した共同戦線を張って…反撃に出る。
その戦いは壮絶を極め何万年も続いた。
圧倒的な力のぶつかり合いの果てに、龍神は討伐された。
しかし、その戦闘の果てに他の世界の神々も戦死し邪神世界も滅びを迎えた。
不思議な事に、神々の戦いに"人女神"の姿は見えなかった為に龍神に殺されたと記載されている。
残った、人神世界には他の世界から逃げ延びた種族達が集まった。
この壮絶な戦争の事を"世界終末戦争と呼ぶ。
《10万年前〜1万年前》
この時代は、争いの苛烈さが最も大きかった時代と言われている。
逃げ延びて来た他の種族が次々に己の世界にしようと戦争を繰り返し、自分達の世界を護らんとする人族との間で激しい殺戮戦争が続いた。
やがて、戦争の激化により種族そのものの絶滅を恐れた者達によって戦争は一旦、休戦された。
そして、格種族は元々の世界に似た棲家を見つけそこを支配するようになった。
元々、生活感が似ていた獣族とエルフなどの亜人族は協定を結び森を棲家にした。
海人族は、海を棲家へ…天使族は、他種族との争いや関わりを嫌い、大陸の何処かに存在する遥か高地に棲家を置く。
龍神族は、生き残りが極めて少なく滅多に現れないので不明。
人族は、地に居を置く種族を嫌い大陸を取り返す為に亜人族と魔族との間で争いを繰り返す。
魔族もまた、大陸の支配を広げる為に侵略を繰り返していた。
これこそが、これから永きに渡る亜人魔混沌戦争の始まりでもある。
《1万年前〜8000年前》
人族は順調にその数を増やしてゆき、あらゆる技術を発展させた。
人族の進化に危機感を持った亜人族…人族を滅ぼさんとする魔族…それらを迎え撃つ人族との間で戦争が勃発。
(亜人族は、両族からの侵略を防衛という形で参加)
これが、第一次亜人魔混沌戦争と呼ばれる。
戦争に参加したのは、人族、魔族、亜人族の他に獣族などの種族達も巻き込まれたとされている。
故に、混沌と付け足された。
《8000年前〜7000年前》
凄まじい戦争は、1000年以上も続いた。
戦争の長期化はまだまだ続くと思っていたが、魔族の撤退によって戦争は終結した。
戦争を終わらせたのは、妖精族と人族の血を継ぐ伝説の勇者と仲間達。
勇者の名はフィアナ・フィン。
そして、勇者の仲間達はフィアナ騎士団と名付けられた。
彼等は、魔族を率いていた《魔聖女帝》ティアマレスの幹部《七魔王》の猛攻を何度も防ぎティアマレスに怪我を負わせ、その内の二人を討ち取り勝利をもぎ取った。
その後。
フィアナはその功績と偉業を世界に轟かせる。
当時、バラバラだった土地をまとめ上げて国を建国した。
それが現在のフィアーナ王国である。
《6000年前》
戦争に勝利した人族は、その後もあらゆる所で戦争を繰り返していた。
敗北して捕えられた魔族は、人々の間で奴隷として扱われるなどの不当な扱いを受け続けた。
《5500年前〜5000年前》
第二次亜人魔混沌戦争の火蓋が切られた。
この戦いで、人族は敗北した。
魔族を率いたのは、勇者フィアナより受けた屈辱を晴らすために復讐を誓った《魔聖女帝》ティアマレスだった。
この戦争では、人族によって甚大な被害を受けていた亜人族を味方に引き込んで、他の種族と協定を結び、人族と戦争を行った。
《4500年前》
1000年間に及ぶ、第二次亜人魔混沌戦争が終わりを告げた。
凄まじい魔族の猛攻を受けた、人族だったがとある英雄の手によって形成が逆転した。
英雄の名はーー"勇者王"フィン・マックル
幼い頃からフィアナ騎士団の副団長を務め幾度となく人類を勝利に導いた若き神童。
一万を超える魔族の軍勢を前にして怯える兵士たちを奮い立たせ自ら前線に立ち一騎当千の活躍をして見せた。
たったその内の一万の敵を破る。
そして、《魔聖女帝》との一騎打ちを見事に制した。
戦いは凄まじいもので、彼の手にした龍剣モルガーンの一撃によって戦いは終結した。
《4000年前〜????年前》
ここからは、人間の醜さがより一層酷くなった歴史が語られている。
その中で、魔族への差別や扱いは更に悪化して来た。
戦争を起こそうにも、当時魔族最強と言われていた《魔聖女帝》を失った事で反撃する事は出来なかった。
やがて魔族は、度重なる人族の侵略により半数まで数を減らしていた。
挙げ句の果てには、魔族は中央大陸の東部まで追い詰められてしまう。
《2000年前》
魔族にとっての希望の光が現れる。
それが、かの"魔神王"ヴォーディガーンの誕生である。
魔神とは、魔族の中でも最上位の位に属する存在であり…後にも先にも"魔神"は現れていない。
ヴォーディガーンは生き残った魔王や魔族達を纏め上げると人族を滅ぼす為に戦争を行うと宣言した。
魔神の手によって育成された魔族は、それまでとは異なった力を以って軍を編成した。
《1000年前》
魔神戦争が始まった。
地形が変動した中央大陸からは、魔神王ヴォーディガーンが率いる魔族が侵略。
龍神山脈から唯一通れる道には、獣族の猛者達が出入り口を塞ぐ形で進軍し北部と南部による合流を封じた。
その結果、北部は魔神軍の別動隊の手によって全滅。
亜人族に関しては、隣接する人族の大陸を攻める事を託されたが…種族間による戦争が起こり離脱する形となった。
それは些細な事であり、魔神軍の勢いは凄まじく人族の抵抗虚しく人境大陸のほぼ全域が滅ぼされてしまう。
残ったのは、アムスフィア王国のある西部とフランツェ大陸のフランク神聖国のみとなった。
《500年前》
滅亡の危機を迎えた人族。
そんな窮地の中で立ち上がったのは八人の選ばれた最強の英雄達。
有名なのは、邪神龍討伐に大きく貢献した四人の英雄で他の四人はどこの文献でも詳しく書かれていない。
彼らは、必死な説得によって獣族や海人族を味方に引き入れることに成功した。
海人族の協力によって、大陸の外の回路を開放して貰うと船を使い魔族の手が無く、危険な魔物が住んでいる森林地帯を通って包囲網を抜けた。
そして獣族によって封鎖されていた、南東部へと繋がる道が開放されると…八英雄は、未だに被害を受けて居なかったフランツェ大陸に向かった。
フランツェ大陸はほぼ無傷に等しい状態で残っていた。
フランク神聖国の存在と比較的に大陸が侵略し辛い地形だった。
フランツェ大陸最強を誇る"神聖騎士団"と"聖女"が展開した"絶対人界領域の存在が大きい。
彼らの協力を得た八英雄は、最終決戦の舞台となる中央大陸へと進軍を開始。
フィアーナ王国の国王にして四大英雄のフィンは残り少ないフィアナ騎士団を集結させ、中央大陸に援軍に向かおうとする魔族軍に奇襲を仕掛けた。
その圧倒的な突破力で邪神龍の本陣を襲撃。
苛烈を極めた戦争だった。
英雄と呼ばれた殆どが戦死…彼等の力を以てしても殺す事の出来なかった邪神龍は、最終的に、とある場所に封印された。
封印された場所を知るのは当時の英雄達と限られた王族だけである。
この戦いで自身の命を賭けて邪神龍に深手を負わせたフィン・マックルは戦死した。
それ以外の英雄達も力尽きた。
『天龍』ジズもまた深い傷を負い、その傷を癒す為に天空塔城バビロンにて眠りに付いている。
戦争の終結後は、互いに戦力をすり減らした人族と魔族の間で協定が結ばれる事になった。
その影響で、これまでの魔族への差別や不当な扱いは全面的に禁止となった。
人境大陸は西部全域。
海境大陸を超えて北部全域が魔境大陸。
両大陸を繋ぐ道は存在せず、国境付近には巨大な防壁が築かれている。
元より酷かった魔族と人族の関係は此度の戦争にて完全に断絶された。
その後も気になる歴史が続いている。
特に、『災厄の魔女』は非常に気になるが…興味を惹かれたもう一つ、気になる歴史の出来事が見つかった。
《50000年前》
種族同士の争いが最も激しかった時代…各種族の大陸に奇妙な事件が起こった。
まず最初は、一つの魔族がその棲家ごと消えてしまう事件が起きた。《5000万年前》
次に、人族の国と土地が大きなクレーターだけを残して消えてしまった。《4500万年前》
中央大陸で戦争を繰り広げていた人族の軍と魔族の軍が、突如として現れた謎の物体が放った青紫色の光に包み込まれて消え去った。《4000万年前》
この出来事は、未だに未解決…現象が起きる前には必ず何かの唸り声が響き渡っていたと言われている。
何故気になったのか?それは、この間の夜にジュネーヴに会った時に聞こえた現象と特徴が一致していたからだ。
何か起きなきゃいいが…嫌な予感は当たるってのが世の常だ。
気をつけよう。
もう一つ気になった事は、魔族の中には何度死んでも蘇る権能らしき特性を持った者が存在しているということ。
かの《魔聖女帝》もその内の一人だったとか。
まるでゾンビだな。
いやー、世界の歴史って本当に楽しいな。
この本には、この世界の歴史の他に各種族の中で用いられる貨幣や言語なども記載されている。
どうやら思ったよりも奥が深いようだ。
神龍山脈;この世界に於いて最も有名な山脈。
まず、エレメシア魔国とアムスフィア王国を隔てる龍の頭が聳え立つ。
神龍山脈でも最も危険度が高い山脈で、地形が複雑で、Sランク指定の魔物や竜が常日頃から縄張り争いを繰り返している。
また神龍霊山と呼ばれる巨大な山脈が聳え立ち、その頂上には『龍の心臓』と呼ばれる迷宮が存在すると言う噂がある。
次に、アムスフィア王国からフェルグニル竜帝国まで続く神龍の胴体【ドラゴンロード】が連なっている。
此方は、山…と言うよりはド◯ゴンボ◯ルに出てくる蛇の道がアムスフィア王国まで続いている。
此方は少し複雑な造りになっており、東のフェルグニル竜帝国の国境付近にある龍神の胴体は巨大な凱旋門の様になっている
最後に、亜境大陸からフランツェ神聖国へと繋がる神龍の上尾と下尾に別れている。
下尾と上尾の途中までは洞窟のようになっていて、ある程度の場所まで進むと分かれ道が現れる。
上尾から大陸に続く道はかなり複雑になっていて、気温の変化や大気中の魔力濃度が濃く常人では決して登れないのであまり使われていない。
通るのは、十二英傑など基本的には人目を避けたい強者や悪人などが好んで使う。
下尾は、あたり一面が海中に覆われている。
この神龍の下顎と上顎はフランツェ大陸から亜境大陸・亜境大陸からフランツェ大陸を繋ぐ橋の役目を担っており、下顎では頻繁に物質や食材の取引などを行う商人などの馬車や観光客が通っている。
懸念点としては、徒歩でしか通行手段が無いので大陸から大陸まで着くまでに数日〜数週間も掛かってしまう。
この大陸と大陸を繋ぐ道は、魔瞳客車での渡航が困難で上尾と下尾の周りは、龍の翼や尾に備わっている棘の様な形をした巨大な山々が連なっている。




