第五節 算術の大切さ
結局、ユージンの話では俺達を襲って来たのは邪神解放教団の中でも選ばれし二十四の精鋭集団"二十四使徒"の第二十四徒"魔術師殺し"アルマロスと言う男だったみたいだ…
ひぇ〜、そんな化け物と俺は戦ってたのか?そりゃ強いわ。
俺とクロセルを攫った奴等は、雇われた傭兵で…ガレス以外の町でも人攫いなどの悪事を繰り返していたので死んで当然だったらしい。
ここに関しては、俺も文句は無い。
ああ、人が死んでもどうでも良いと言う訳でもなく…悪人の中でも更生の余地が無い悪人は死んでも仕方ないと思う。
あ、因みに今回の事件は全てヒッポリュテが対処したと言う形になった。
これには理由があり、まず五代アスポロトス家の中の一つフロッセルには"剣帝"ヒッポリュテが護衛として雇われていると言う誇示する事で手を出せば只では済まないと言う意思表明。
更に、俺の立場の問題。
まずイアソンの本名はイアソン・ディラ・アスポロトスと言って五つのアスポロトス家の一つらしく、ここでイアソンの息子がフロッセルの家に居るのを知られるのは不利に働いてしまうようだ。
ここら辺は、俺の知る所では無いがまぁ政治争いが酷いようでとにかく知られるのは不味いんだとか…
「と言う訳なんだ…分かってくれるかな?」
「勿論です、僕も目立ちたく無いんで…はは。」
これは本音だ、目立つのはゴメンだからな…俺は可愛い女の子を侍らせて優雅な異世界ハーレムを築きたいだけなんだからね!
まぁ、半分は冗談だけど。
いやー、それにしてもユージンもかなり偉い立場だと思っていたけどこの町のリーダー…つまり村長とかそう言った類の立場だったようだな。
「君には改めて礼を言わなければね。」
「いえいえ、それよりもその邪神解放教団ってのはなんなんですか?」
「ああ、僕達も詳しい事はよく分かっていないけど…」
邪神解放教団の邪神とは、数万年前…或いはそれよりも前の時代にかつて存在していた七つの神世界を滅ぼしたとされる邪悪なる生命体の事。
その復活を目論み、各大陸で暗躍を続けるのがその教団と言う存在のようだ。
「それは恐ろしいですね…」
それにしても、邪神…何処かで聞いた名前だなぁ…思い出せない。
「かの"世界十二英傑"の上位には、邪神の使徒としてこの世界に甚大な被害を及ぼした者がいるとか居ないとか…」
ふ〜ん、世界十二英傑ねぇ…
ーーコンコン
と、扉をノックする音が聞こえて来た。
ユージンは、どうぞと声を掛けるとジュネーヴが部屋に入って来た。
「話はユージンから聞きました、娘を助けてくれたようですね。此度は、感謝してもしきれません。」
「あ、頭を上げてください!」
「家庭教師の話ですが、本格的に貴方にお願いする事になりました。
クロセル、部屋に入って来なさい!」
ジュネーヴさんは、手を思いっきり叩く。
パァーン!とドデカイ音に俺は思わずビビって飛び上がってしまった。
その合図と共に、氷の令嬢ことクロセルが恐る恐る部屋へと入って来た。
「さぁ、クロセル。貴方が言いなさい。」
「ええ、お祖母様…えっと、ダイン…」
そんなにモジモジして、一体どうしたんだい?
しっかし…改めてよく見ると本当に綺麗だよなぁ…本当に10歳の少女か疑いざる得ない。
「私に…勉強を教えて欲しい…です。」
何この生き物、凄い可愛い、ヤダ惚れちゃう♡
なるほど…確かに、誰かに頼んで人にお願いするよりは自分から頼んだ方が誠意が伝わるしな。
流石、ジュネーヴさん、抜かりないね。
「条件があります。」
「何かしら?」
「しっかりと僕の授業を受けて下さいね?」
「わ、分かってるわよ…」
よし…これでようやく仕事が始まるんだなぁ…まぁでも、これはあくまでも勘たが…お嬢様は優秀そうな見た目をしてるし…意外にもすぐに仕事が終わったりして?
あ、ヒッポリュテにも教えないといけないんだった。
頑張ろう。
ーー
あれから一週間ほど経った。
クロセルもヒッポリュテも真面目に授業を受けてくれている。
俺の心配は杞憂だったようだ。
算術と読み書きに座学の授業には意外にも真剣に取り組んでいて分からない所をそのままにしないで聞いてきたり生徒らしい事をしている。
まぁ、未だに簡単な計算しか出来ていないけどね。
剣術の訓練では、逆にヒッポリュテが先生となって俺とクロセルに指導している。
初めてイアソンと剣の鍛錬をした時からかなり成長した筈なんだけど、クロセルは剣才と言うべきか…一度、言われたこと見た事は覚えてしまうので、追いつけそうで追いつけない。
俺はどっちかと言ったら舞神流の方が得意分野なので剣神流は、性に合わないのだろう。
ヒッポリュテも、お前は舞神流の方が良いかもなと言われた。
彼女は主に雷神流(剣神)を主体としているので舞神流を教える事は難しいと言われた。
これに関してはしょうがないと思う、ただアマゾネス特有の防御技術を教えてくれる事になった。
魔法の授業となると、クロセルもヒッポリュテも乗り気な様子で楽しそうに受けてくれている。
驚いたことに、クロセルは基本属性の雷以外の四つが苦手な代わりに氷属性に関しては俺よりも才能があるかも知れない。
氷の令嬢に相応しい結果なんじゃないのか?当の本人もとても嬉しそうにはしゃいでいる。
ヒッポリュテは…言わずもがなだ。
流石のポテンシャルと言った所だ…特に雷系の魔法は大得意のようです。
その光景を見たユージンやリエッタさんは、とても驚いていた。
何でも、歴代の家庭教師は彼女に近付く事すら不可能だったようで…とある男の家庭教師は、お嬢様を襲う為に部屋に忍び込み全身の骨を折られ無法街に捨てられたり…
あー怖い怖い…俺はよほど運が良かったようだ。
今までに、彼女が気を許した相手は幼い頃から彼女の世話をしているメイドさんとヒッポリュテに家族だけだったとか…
その中でもヒッポリュテは、大好きな様で何かある度に抱きついたりしている。
羨ましい。
ーー
休憩中が終わり、クロセルを探そうとフロッセル邸の周りを彷徨いていると…お昼寝をしているクロセルの姿を発見した。
無防備に、可愛らしいお腹がこんにちはしてますよ〜?
ヨダレなんか垂らしちゃって…少しくらい、良いよね?
ぐふ、ぐふふふふふ♡
まずはお胸を触らせていただこう…ふむ、思った通り10歳にしては大きいなぁ…触り心地も抜群…このまま成長すれば将来は…でゅふ♡
お次は…この透け透けの黒タイツ…及びむちむちの太ももを触らせて頂こう…あぁ、このサラサラ感が堪らない…お肉が良い感じに…あ…
ふと、クロセルと目が合った。
「こんにちは〜、クロセル〜?」
「死ねぇぇ!」
「ぐはっ!?」
凄まじい、かかと落としを喰らった…俺は鼻血を出してその場に倒れてしまう。
この変態!と吐き捨ててお嬢様は、家の中に消えていった。
パンツ…白だった…がくっ
その後は、暫くクロセルから無視されていたけど…氷魔法で氷の城を造ったら機嫌を直してくれた。
ヒッポリュテに、何をしたんだ?と聞かれたけど言ったら殺されそうなので辞めておこう。
ーー
それから暫くして、ブレークタイムへと入った。
そこで、何をしようか…と思った時、ふとヒッポリュテのこれまでの事が気になったので聞いてみる。
すると、快く受け入れてくれた。
「何処から話そうか…私は、種族の里を出て…自分の力だけで生きていけると思っていた…しかし、現実はそうでは無かった。」
こんな風に、話し始めた。
「私は、里を出てすぐに路頭に迷って〜…算術も読み書きも出来なかったせいで、食べ物も買えずに店から奪ったり、強盗紛いの事をして大陸を転々として来たんだ〜。」
おいおい、さらっと犯罪を暴露しないでね?
まぁ、時効だろうけどさ!?
「そして人境大陸に辿り着き、いつものように魔物の肉を喰らう為に狩場に赴いた先で奴らに出会った。まだ駆け出しだったが勢いのある冒険者パーティーって感じ。」
その冒険者ってのは、イアソン達の事なんだろうか…
「そこでは、あーしは戦闘メイン…細かい計算や消耗品の調整調達などは他のメンバーが行っていた。
初めは、あーしを含めて三人…一人増えて四人…最終的には八人パーティーになった。正確には、もう一人メンバーが居たんだが…半年で抜けてしまった。』
七人パーティーは、冒険者の中でも比較的にバランスが良いらしく各々が一つの役職に集中出来る為に基本的にはこの数の構成が多い。
主に冒険者の役職は、戦士・盾役・剣士・魔法師・僧侶・弓使い・盗賊などなど。
因みに、イアソン率いるパーティーの構成はこうだ。
イアソン:剣士(攻撃主体+タンク)
ヒッポリュテ:戦士(攻撃主体)
イヤシス:僧侶
ーーー:盾使い(壁役)
ーーー:魔術師(攻撃+サポート)
ーーー:魔術師
ーーー:盗賊
ーーー:弓使い(全体のサポート)
と言った感じで、ヒッポリュテに関しては剣術以外にもあらゆる武を達人レベルまで習得しているので戦士と言う役職になっている。
「いいチームだった。互いが互いの弱点を補い合う…抜群の連携で魔物を殺し続け、5年も経たずにS級の上、SS級冒険者パーティーとなった。パーティーの名は【英雄戦団】」
アルゴノート、英雄…良い名前じゃ無いか。
「だが、その僅か数年後にイアソンと交際していたイヤシスの妊娠が発覚。イヤシスは子育てに専念する為にパーティーを離脱した。イアソンは、あーし達に負い目を感じながらも引退。
その後は、残った私達だけで冒険者を続けていたが…すぐに解散したの。」
なるほど…最終的には、イヤシスを孕ませたイアソンはパーティーを辞めて結婚して俺が産まれたのか。
しかし驚いたな…イアソンの事だからイヤシスの寝込みを襲って妊娠させたと思っていたけど…違ったみたいだな。
剣士と戦士は似ているようで似てないんだとか。
剣士は、四代流派を習得しそれを使用する者がそう呼ばれる。
戦士は、剣を使って戦っていても四代流派以外の流派を使用している者やそれ以外の斧・槍・槌などの獲物を主体とする者の事を指す。
剣士には魔法も同時に扱う魔法剣士と言うのも居る。
騎士は、他の役職とは異なっており…国や貴族に直接指名された職業なので例え剣士や戦士だったとしても騎士と名乗る事になっている。
騎士になる者は、高貴な出の者が多い為に算術など基本的な学が無ければそもそも慣れないとか。
あと、プライドが高く傲慢なので嫌いだって。
その後も、ヒッポリュテは数々の冒険の話をたくさん語ってくれた。
その頃には、クロセルも目をキラキラと輝かせながら楽しそうに話を聞いていた。
たまには、こう言うのも良いな。
ーー
少し、算術の授業の内容を教えよう。
内容は小学生レベルの計算だ。
この世界では、貧困と富豪の差が激しいので学校に通いたくても通えない子供はたくさんいる。
クロセルは裕福だが、勉強が嫌いと言う贅沢な理由でしてこなかった。
だから、こうして一から教えている。
簡単な足し算から始まって少し難しい割り算を、分かるようにしっかりと教えている。
ヒッポリュテに関しては長い人生の中で算術や読み書きがどんなに大切かが分かっているから毎日、真剣に取り組んでいる。
最近では、中級者向けにレベルを上げて行っている。
お嬢様…クロセルもあと少し頑張ればヒッポリュテと同じ中級者向けの授業に入れるだろう。
生徒の成長を肌で感じるのは気分が良い…師匠もこんな気持ちだったのかな?
ーーー
ーー同時刻
ブルータル公国の王宮内。
宮廷魔法師マルジンの部屋。
「ふぅ〜、いやー…昨晩は盛り上がり過ぎたねぇー、アルトリウスはダウンしちゃったようだし…少し外の空気でも吸おうかな。」
マルジンは、特大豪華なベッドに裸で横たわる金髪の女性にキスをすると立ち上がる。
そして部屋の横に掛けてある衣服を取る。
まずは、網タイツを履き…肘の近くまである黒の手袋を付け、最後にゴシックドレス風の衣服を着る。
そして後は、鼻歌を歌いながらベランダに出る。
「今日もいい天気だなぁー…弟子は元気にしてるだろうか…早く会いたいなぁ…ん?」
そんな事を呟きながら、外を見ていたマルジンは先程の陽気そうな表情から一気に険しい表情に変わる。
「何だ?アムスフィアの方角からかな?妙な魔力が収束して行ってる…まさか、現れるのか…世界悪…その一匹が…」




