第二節 誘拐
えー、どうも元引きこもりのダインスレイヴで御座います。
私は只今、大変な事になってしまいました。
目が覚めると、薄暗く異臭が漂う倉庫らしき場所に手足を縛られて監禁されていました。
何と驚いた事に、氷の令嬢様も同じように攫われてしまったようです。
どうしてこんな事になってしまったのか?
それは、数時間前に遡ります。
ーー
翌日、騒々しい物音で目が覚めてしまった。
そうだ、俺は昨日からこの屋敷でお嬢様の家庭教師として働く事になったんだった。
昨日はだいぶ疲れたから、夜はぐっすりと眠れました。
「失礼致します、お食事をお持ち致しました。」
そう言って、猫耳を生やしたメイドさんが俺の部屋にやって来て美味しそうな料理とお水を持って来てくれた。
ご飯を食べ終わると、部屋を出て家庭教師の仕事が始まる時間までこの屋敷をぶらぶらしようと思う。
長い廊下を歩いていると、外から何かを打ち合う音が聞こえて来た。
気になって、窓から外の庭を覗くと…そこには、互いに木刀を持って打ち合っている二人の人物が居た。
一人は、ヒッポリュテ…おお!
木刀を振る度に、豊満なお胸が揺れてますわぁ〜!
服装は、スポーツウェアか?ありがとう。
朝から、とても気分が良い。
肝心のもう一人は…あのお嬢様だった。
凄い、まるで昨日の殺人お嬢様とは全くの別人じゃ無いか?
動きに多少の荒さがあるが美しい…スポーツウェア越しの喰い込み具合がこれまたけしからん!
ああ、そう言えばイアソンがヒッポリュテに俺にも剣の指導をしてやってくれと頼んでいたがどうなったのだろうか?
二人とも朝早くから元気だなぁ〜、俺は夜型だから朝は弱いんだけど慣れない環境もあってか早く目が覚めてしまった。
本音を言うと、今すぐにでもベッドで寝ていたい。
しかし、そう言うわけにもいかず…家庭教師の時間となった…胃をキリキリとさせながらお嬢様の部屋に向かう。
「これから仕事?ダイン。」
「はい!おはようございます、ヒッポリュテ!」
廊下を歩いていると、訓練終わりのヒッポリュテに遭遇した。
デ、デカい…色々とデカい…て言うか…こうやってマジマジと見ると筋肉凄いな…腹筋なんて六つに割れてるし、腕とか脚の筋肉も凄い。
流石、筋肉の化身。
「凄い、筋肉ですね…」
「そう〜?私の種族ではこれくらいが普通だし〜?」
どんな、種族だよ!
筋肉族とか?それだったら納得が行くよ!
「ヒッポリュテはヒューマンじゃないんですか?」
「ぶっぶ〜、私は、亜人族でもあり魔族の〜種族名は、アマゾネスで〜す。」
アマゾネス…って、あれか?
ギリシャ神話に出てくる女だけで構成された種族で馬術に優れた戦闘民族的なあの?
てか、噂のギャルピース何気に初めて見た。
「亜人と魔族の間なんですか?」
「そう〜。あーし達アマゾネスは、ある魔王と対価を代償に力を得ているんだ〜…亜人と呼ぶ者も居れば魔族と呼ぶ者もいる。そして、人族からはやっかまれる事が多いな、人擬きってね。私もそう呼ばれたことも少なく無いし。」
なんて胸糞悪い話なんだ。
人と違うから差別するなんて、どの世界でも人間は変わらないな。
「愚かだな…ヒッポリュテはこんなに魅力的なのに…あ。」
「………」
「はっ、すいません!思ったことが、つい!」
しまったぁぁぁあ!
心の中で呟いていたことが、つい声に出てしまっていた!?
引かれたよな?ん、何か顔赤くね?
「へ、へえ〜?、イアソンよりは女に気が使えるじゃん?ありがと。」
「因みに、何を対価にしたか聞いて良いんですか?」
「子宮〜。」
「え?」
それは、女性にとっては大切な物なんじゃ無いのか?将来、結婚して子供が出来た時とか…
まぁ、俺は例え子供が産めなくなっても見捨てたりはしないが…
「ああ、どうせ私は結婚する気も恋人を作る気も無いし。そもそも、私の様な女に発情する奴なんて居ない的な?」
「ここにいまーす!…はっ!?」
しまった、また声に出てしまった!?
ま、本当の事だけどさ!?
「変わった奴〜
まぁいいや、またね〜。」
「はい、また後で。」
すれ違い様に、汗の影響でより強くなったフェロモンを堪能しながらぐひひと笑ってみた。
そんな事に夢中だった俺は、その背後で顔を紅潮させた彼女に気付かなかった。
さてと…お嬢様の部屋に到着しました。
扉をノックする…返事が無い…まぁ、一回目は気付かない時だってある、俺だって時と場合によっては扉のノックに気付かないしな。
挫けずにもう一回扉をノックする。
今度は三回…
「…………」
うん、返事が無い。
流石に気付いてますよね。。
一応、念の為にもう一回ノックしますね?
「…………」
やってるわ、コイツ。
ほう?
君がそう言う手段を取るなら、俺には一つの必殺があるんだぞ?
喰らうが良い!我が必殺!
「ーー連続扉叩き!」
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン、コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンドリャァァァァァァァア!!
SEAIYAAAAAAAAAAAAAAAA!
まるで、ニョニョのきにょうな冒険の主人公の様な怒涛のノックRushをお嬢様の扉に向かって浴びせ続ける。
そして次の瞬間ーー部屋の扉が開くと同時に、無表情ながらも殺気を纏った般若が立っていた。
「こんにちは!」
動じるな!
ここで怖気ついたら本当の敗北になってしまう!
そう思った俺は、満面の笑みでお嬢様に向かって挨拶をする。
「…………」
お嬢様も動かない…しかし、殺気がさっきよりも膨れ上がっている。
そして次の瞬間ーー俺は危険を感じて顔を横に逸らした。
ブォンっと言うイカつい音を立てて、木刀が空を斬る。
「お、お嬢様?」
「殺す。」
その言葉を聞き、俺は再び一目散に逃げ出した。
今度はより早く、逃げる合間合間にメイドさん達があ〜れ〜とクルクル回ってしまっているがそんなことを気にしている暇は無い!
逃げろ、逃げろ、逃げろぉぉぉぉぉおお!
今日も、失敗に終わりました。
そして、夕方…溜め息を吐きながら廊下を歩いているとユージンの奥様に出会った。
「今日も大変だったねぇ〜?」
「ははは…そうですね…何とかして仲良くなりたいんですがね…」
「そうねぇ〜、この時間はぁ、あの子はランニングだからぁ、一緒に走って親睦を深めれば良いんじゃなぁい?きっと、好きな事ならぁ、嫌々でも付き合ってくれるかもぉ〜」
「わかりました。」
これも、仲良くなる為だ。
それに、ランニングは体力作りにとても大切だからな!
早速、準備体操をしているお嬢様の元に向かった。
「どうも。」
「チッ…」
舌打ち…
「僕もご一緒しても良いですか?」
「……勝手にすればよくて?」
あ、初めて口を聞いてくれた。
…って、速っ!?
不味い置いてかれる、急いで後を追わなければ!
俺は、そう思ってお嬢様の後を追い掛ける。
そこで事件が起きたのだ、お嬢様の後を追い掛けて走り街の中心を抜けて少し人通りが少なくなった場所を走っていると…お嬢様が道の真ん中で倒れていたのだ。
何事だ!?
急いで彼女の元へと駆け寄る…怪我は無い…息もある…たが、昏睡状態にあるのか?
って、あれ?
なんか視界が…急に眠気が…どうなって…あ…ダメだ…
俺はそのまま意識を失ってしまった。




