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第一節 氷の令嬢、見参!

あれから一日後ーーようやく城砦都市ガレスの門の前に辿り着いた。

本来なら、3日は掛かるらしいがヒッポリュテの馬のお陰でたった一日で着いた。


時刻は…日が沈んでいるから推測だが16:00〜17:30分の間だろう。

辺りはだいぶ、薄暗くなって来ている。


ガレスは、この辺りでも一際目立つ大都市らしく四六時中多くの人で賑わっているらしい。

一度だけ、このガレスに訪れた事があるけどその時よりも人が多い気がする…


それにしてもこの門、マジで大きいよな…少なくとも10メートルはあるんじゃないか?

門には、様々な馬車が行き来している。


ガレスの街には、多くの露店が建ち並んでいる。

商店街や宿屋が沢山あるな。


ヒッポリュテは、街をゆっくりと歩きながら何処がどんな店なのかを親切に教えてくれた。

武器屋・酒場・傭兵ギルド・冒険者ギルドなど元の世界では絶対に見る事が出来ない様な建物があって新鮮味が凄い。


都市の最初の方は、少し古い様な建物が並んでいるが…奥の方に進んでいくに連れて並ぶ店も豪華になって来た。

そして…城砦都市ガレスの中心部となる場所に一際大きく、存在感を露わにする建物。


「着いたよ〜、ここが今日からお前が住み込みで家庭教師として働く領主の館で〜す。」

「デカいですね…」

「まぁ。この都市ではな。」

「てことは、お嬢様もかなりの身分ですか?」

「まね。其処は気にしなくて良い。行くぞ。」


とは言っても、ここは城砦都市なのでその名の通りに…街の周りが壁に囲まれており戦争などの際には追い詰められた時の最重要都市にもされている。

なので他の領地を治める貴族の中では、発展していないらしい。


冒険者や傭兵が殆どなのも理由だ。


それにしても、デカいな…貴族は貴族、持ってる物は持ってるようだ。





ーー


館へと続く門を潜り、中に入る。


その中にも、館の中へと続く大きな扉が聳え立っていた。


ヒッポリュテが、扉をコンコンと二回ほどノックをすると…扉が開き二人のメイドさんが出て来た。

ん?

よく見たら、片方のメイドさんは犬の耳が生えている?確か、亜人族の中には犬人族と言う種族が居たのを思い出した。


でも、どうしてこんな人境大陸にいるのだろう。

亜境大陸は、ここよりも遥か南東にある筈だけど。


「お帰りなさいませ、ヒッポリュテ様。

そちらが、お嬢様の?」

「ああ、早速だが…ジュネーヴ様を呼んでくれる?」

「では、応接室にご案内します。」


そう言って、二人のメイドさん達は俺とヒッポリュテを応接室と思われる部屋に通してくれた。

ひ、広いな…俺の部屋よりも何倍も広い。


おぉ、まさかのソファーがある!

座り心地は抜群…はぁ、ずっと座っていたい!


「紅茶です。」


そう言って、メイドさんが丁度いい温度の紅茶をくれた。

うん…温かい紅茶を飲みながらエチエチなヒッポリュテを眺めるのは正に至高だ。


「入るわよ。」


すると、応接室の扉が開かれる。


部屋に入って来たのは、50〜60前半の女が入って来た。

まるで美しい氷の様に透き通った水色の髪の毛を後ろで束ね、獣の様な目をし、若干のシワが気にならない程に整った顔立ち。


一目、見ただけで分かる。

この叔母様がこの家の当主なのだろう。


俺は、ソッと紅茶の入っていたコップを置きソファーから立ち上がる。

そして、ピシッと姿勢を整えて深々と頭を下げる。


「お初お目に掛かります。ダインスレイヴ・アスポロトスと申します。

本日からどうか宜しくお願い致します。」


決まった!

我ながら完璧な自己紹介だ。


「ふん、あの馬鹿の娘の割には礼儀がなってるようね。」

「失礼ながら、ダイン殿はご子息に御座います。」


と、隣に控えていた女性執事さんが訂正を入れる。


「まぁ良いわ。私はエレシウス領の領主ジュネーヴ・フロッセル・アスポロトスよ。

貴方の馬鹿父親の叔母よ。

後の事は、私の息子に任せてある。」


そう言って、ジュネーヴ様は部屋を退室してしまった。


彼女が退室したとほぼ同じタイミングで、一人の女性と男性が部屋に入って来た。


「どうやら、あのお母様に気に入られたようですわね。」

「そうだね。驚いたよ。」


そう言って、金髪の髪をした美しい女性が向かいのソファーに座った。

男性の方は、ジュネーヴと同じ水色の髪の毛と瞳の人だった。

え?気に入られたんですか?あれで?


俺は先程と同じ様に、深々と頭を下げて挨拶をする。


「あらぁ、驚いたわぁ…」

「ほうほう、彼の娘にしては礼儀が正しいようだな。」

「息子ですよぉ〜貴方ぁ?」


この件、いつまで続くのだろうか…確かに、この容姿は女の子寄りだけど…そこまで分かりづらいだろうか?

それにしても…これだけで、関心されてしまうとは…イアソンは全くどんだけ問題児なんだよ。


因みに二人の名前は…旦那の方がユージン・フロッセル・アスポロトス。

妻の方が、リエッタ・フロッセル・アスポロトスと言うらしい。


「まぁそれは置いといて…イアソンから、どのくらい説明を受けているのかな?」

「お嬢様が満足するまで、勉強を教えなさいと…」

「あながち間違いでは無いが…娘はかなり扱いづらいからねぇ…相当の覚悟をしておいた方が良いよ。」


そう言って、トーマスは頭を抱える。


「これまで、何人も家庭教師が彼女に教えようとしたが…見事に全員辞めていった。

いくら、君が女好きでも…無理だと思うよ?正直に言って、絶対に不可能だと思うよ?

イアソンからは、女の子の扱いが上手いと聞いたから試してみようと思っただけだ。」


おうおう!

随分と、ハッキリ言ってくれますね。

なんか悔しいな…俺の高度テクニックでどんな女でも堕として見せるから覚悟しろよ!


「頑張ります…」

「期待してるわぁ〜」

「もし、ダメだったら?」

「その時は、一つだけ案があります。」

「ほう?それは聞いても良いかな?」

「秘密です。」


俺は、そう言って人差し指を唇に当てる。

するとユージンは、驚いた様に目を見開いて暫く経つと笑う。


「あ、そうそう。

娘に手を出そうとしたら、殺すからね?」


いや、怖っ!?


「だ、大丈夫ですよ…父さまでもあるまいし…」

「手を出すなら、ヒッポリュテにすると良い…彼女に手を出せたら、イアソンに自慢すると良い。」

「貴方ぁ〜?調子に乗らないでねぇ?」

「トーマス様、いくら恩人のアンタでも斬るぞ?」


あ、そうだヒッポリュテは居たんだった。

それにしても、このやり取りはイアソンを見ているようだ。


「よし、話はここまで…早速だけど、僕と妻の娘に会って貰うとするよ。」





ーー


早速、ユージンの案内の元…お嬢様が居るという部屋を開ける。


そこに居たのは…まるで晴れた空にポツンと輝く氷のようだった。


腰まで伸びた水色で透明感を持った髪…毛先は縦に巻かれている。

冷徹で全てを見下した様な瞳、こっちまで凍ってしまいそう。

青が大部分を占めたボディコンドレスを異世界風にした様な服装で、タイツ越しからでも見える純白の足はけしからん!


10歳だと言うのにそこら辺の大人の女性に劣らない美しさを持っている。


冷酷無情、そんな印象がより濃く醸し出された人物だった。


本能で察した…彼女はドSだ。


「初めてまして…本日から家庭教師を務めさせて頂くダインスレイヴ・アスポロトスです。」


まずは、挨拶だ。


「貴方、何歳?」

「7歳ですが?」

「冷やかしなら帰りなさい。私よりも年下の貴方が?この私の家庭教師?舐めるのも大概にしなさい。」


強烈ぅ〜、細かい事は気にするな!って、おっとついつい…

しかし、それにしてもいきなり冷たいなぁ…何も考えて無さそうって…


先程よりも、冷たく…針の様に鋭く睨んでくる。


「今、歳は関係ないのでは…」

「何かしら?」

「だから歳は…ぐはっ!?」


次の瞬間ーーほっぺたに強烈な激痛が襲い掛かって来た。

ふと、彼女の方を見ると…手には木刀が握られていた。


理不尽過ぎる…しかーし、いきなり手を出すとは良くないぞ?

俺ってば、やられたらやり返すんだぜ?


「えい!」


ぷにゅ…そんな少し間抜けな音が響き渡った。


部屋で一部始終を見ていた誰もが、言葉を失った。


ふむふむ…あと数日で10才になるとは思えない胸の弾力。



「はぁ〜…」、「まぁ、大胆な事ぉ〜」

「死ね!」

「グハッ!?」


幼女の胸の感触を味わっていた次の瞬間…彼女の握っていた木刀が以上なまでに逆方向に反りながら、俺のお腹に向かって叩き付けられた。


その凄まじい衝撃に身体が吹き飛ばされ、床に倒れる。


「ぶっ殺す!」


氷のお嬢様は、そう酷く冷たい声で無表情を保ちながら木刀を本気で振り下ろす。

俺は、風魔法を使って木刀の軌道を逸らす…バギィっと音を立てながら木で出来た床が粉々になる。


安心したのも束の間、追撃が襲いかかって来る。


命の危機を感じた俺は、再び風魔法を発動し彼女の身体をのけ反らせた。

少しの間、隙が出来たのを見て俺は一目散に部屋から全速力で逃げ出した。


これは本当に殺されるッ!逃げろォォォォオオオ!


はっ、丁度いい隠れ場所がある!


取り敢えず、此処でやり過ごそう。


はぁ…何だあの氷属性と凶暴性を兼ね備えた少女は!

身体中が痛いよぉ…


「逃げ足が早いわね…今度見つけたら絶対に後悔させてやるわよ?」


お嬢様は諦めた様子で、部屋へと戻っていった。


命拾いをしたようだ…






ーー


それから暫くして、俺はこれから生活する事になる部屋に訪れた。


おぉ、広い…流石は貴族の部屋と言った感じだ…しかし、俺はただ仕事で此処に訪れた客人の様な者なのにこんな待遇でいいのだろうか。


棚には、何冊かの高そうな本が揃えられている。

二人は入れる広さのベッド、勉強用の机と椅子。

豪華そうなランタンや装飾品が完備されている。


素晴らしい…しかも、これで料理もメイドさんが運んで来てくれる。

感謝、感謝!


この屋敷には、様々なメイドさんや執事さんが働いている。

兎人族、犬人族、猫人族などの亜人族が多かった…人境大陸の中でも特に異種族差別が根強いアムスフィア王国に居て大丈夫なのだろうか。


それはともかくとして…これから上手くやって行けるのだろうか…アレは俺の知っているイメージのお嬢様じゃない。

ただでさえ、心が折れそうな氷属性なのにそれに+して凶暴性がオマケについて来てるなんて…


俺のイメージでは、今頃は何だかんだで気に入られて明日から早速スタートって感じだったが失敗だ。


ユージンからは、諦めるかい?と言われたけどふざけんな!


しかし…次の作戦に出ようか…キッカケが有れば良いんだけどな…眠い、取り敢えず眠ろう。





ーー


その夜。


フロッセル邸のジュネーヴの部屋には、当主のジュネーヴ・息子にしてこの街を纏めるユージン・その妻、リエッタ・その彼女達と対面するヒッポリュテ・ジュネーヴの使用人が集まっていた。


「それで、報告があるんだろ?

聞いても良いかな?ヒッポリュテ?」


「ああ…最近、ここらで悪事を働いていた輩を捕らえて拷問し情報を聞き出した時に、妙な名と言葉を残して〜」

その辺りの情報に関しては、私よりも貴方達の方が知っていると思ったから報告しようと思ってね〜」

「その名前を聞いても良いかな?」

「確か、邪神解放教団と。」


ヒッポリュテが、その名を言うと…ユージンは、少し考える様な素振りを見せる。


「邪神解放教団…本当に存在していたとはね…」

「知っているの?」

「邪神解放教団とは、人境大陸・魔境大陸・亜境大陸・フランツェ大陸各地で人攫いなどの悪事を行う目的と正体不明の謎の組織よ。」

「怖いわぁ〜」

「それで、遺した言葉と言うのは?」

「ああ、一人のイカれた男がこう言っていた。『邪神の使徒…汝のガレス来訪を歓迎しよう。そして、『氷の令嬢』を生贄に汝は、邪神の寵愛を受けるだろう!』…ってね。」


「母上。」


いつものような、呑気な表情とは裏腹にユージンは真剣な顔で母であるジュネーヴに声を掛ける。


「邪神の使徒…ガレスへの来訪者…そして、氷の令嬢…とは、我が娘クロセルの事…」

「ガレスへの来訪者とは…僕の間違いで無ければ、イアソンの息子の事かな?」

「詳しい事は分からんが…お嬢様に手を出そうとするのならば、例え我が旧友の息子でも容赦なく斬り捨てる。」


「引き続き調査、あるのみだね。

さてと、ヒッポリュテ、君に頼みたい事がある。」

「何〜。」

「君には、イアソンの息子ダインスレイブから決して目を離さないようにしてくれ。」

「は〜い。」








ーー


「準備が整いやしたぜ。」


3人の傭兵らしき風貌をした男達が、目の前にいる黒いローブを纏った謎の人物に向かってそう言った。




「そうか。

ならば、決行は明日だ。」


その人物は、ただそう一言だけ発した。


「それで、成功した暁には…」

「案ずるな、既に()()()()に話は通してある。」

「ありがとうございやす!」

「抜かるなよ…?」


最後に、そう言い残してその人物は暗い闇の中に消えていった。


「流石の気迫だな…」

「ああ、『魔術師殺し』アルマロス…アレはヤベェ…」

「ふっ、コレに成功すれば俺達も教団の上層部へと駆け上がれる。何、しくじる事は無い。

俺は、戯神流の"上級"だからな。」


闇が、動き出す。


第二章開幕です!


早速、ヒロインの一角が登場しました。

この章では更にもう一人のヒロインが居ます。(既に一章後半に登場済み)



名前:クロセル・フロッセル・アスポロトス (10)

性別:女

性格:冷酷、凶暴

好きな物(人とか):ヒッポリュテ、冷たい食べ物、剣の鍛錬

嫌いな物:家族以外の人間、勉学(算術)

魔法:今は使えない。

剣術:雷神流・初級 

評価:総合C

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