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第二十一節 家族との別れ

あの日から、数週間後。


俺の仕事が決まった…内容はまだ知らされていない。


おっと、そう言えばイアソンに呼び出されているんだった。

何の用なのだろう…説教では無さそうだし…いつも通りの剣術の鍛錬かな?


それにしても、鍛錬にしては朝早過ぎる様な気がするけど…まぁ、とにかく向かうとしますか。




ーー


「あの、父さま?これは一体、どう言う事でしょうか?」

 


俺の目の前には、木刀を構え強烈な殺気を放ったイアソンが立っていた。

剣を握れ。そう言わんばかりに…


一体、どうしてこんな事になっているのだろう。


「剣を握れ。」


イアソンから放たれた声はいつもの様な陽気な声ではなく、低く冷たい声だった。

分かる、彼は本気だ…


「いや、いきなりどうーー「いいから剣を手に持て!」


言い訳をしようとする俺を一蹴し、強烈な殺気を放ちながら俺の視界から消えた。


その瞬間ーー鮮明な"死"のイメージが脳裏に浮かぶ。


考えるよりも先に身体が反応していた、魔力を集中させ神経を研ぎ澄ます。

そして手を前に突き出し、『岩の絶壁(ロック・ウォール)』を発動させる。


イアソンと俺の間に岩の絶壁が現れる。


風魔法を前方に勢いよく発生させ後ろに飛び距離を取る。


しかし、流石はイアソン…かなりの硬度にしたロックウォールをいとも容易く破壊して再び迫り来る。

だが、俺も既に対策を取っている。


イアソンが、地に脚を付けた瞬間ーー泥沼に片足が埋まる。


そして足を取られたイアソンは、完璧に俺を捉えようとしていた剣が空を切った。

ブワッと言う風圧が俺の髪の毛を靡かせる。


(おいおい、あんなのまともに喰らったら死ぬって!)


そう文句を垂れつつ、イアソンに向かってフレアを放つが見事に全て木刀で真っ二つに斬られた。

そしてどんどんと距離を詰めてくる。


岩属性の中級魔法『岩剣山(ロック・ブレイ)』を唱える。


イアソンの走る先々に岩で造られた剣が地より生えるが…その全てを軽々と避け乍ら間合いまで詰められてしまった。

そして、イアソンの振るった木刀が俺の首筋目掛けて襲い掛かってくる。


俺は風魔法でイアソンの太刀筋を受け流し、片手に持った木刀に魔力を込めてカウンターを繰り出そうとした。

が、気付いたら俺の身体は地に倒れていた。


何をされたんだ…?


暫くの間。

何をされたのか分からずにボーッとしていたが、ようやく何が起きたか理解した。


受け流された瞬間に、身体を捻って体勢を立て直し回転の勢いを利用して木刀を俺の腹に当てた。

見事としか言いようが無い、完全に俺の負けだ。


「悪い、やり過ぎた…」


イアソンは先程の鬼気迫る表情が嘘かの様な申し訳なさそうな顔で俺に手を差し伸べる。


「ちゃんと説明して下さいよ…」

「悪いな、まぁ簡単に言えば別れの挨拶みたいなもんだ。」


別れの挨拶?

だ言う事だろうか…


「お前の仕事が決まったんだ。」

「仕事ですか?それと別れがどう繋がるんでしょうか?」

「それは…お前はこれから城砦都市ガレスのとある貴族の家で家庭教師をやって貰うんだ。」

「城砦都市ガレスで?」


それは予想外…しかも、家庭教師をしなきゃ行けないのか?


「そうだ。これは決定事項だ。」

「そしたら、セレーナやニーニャ達とも離れ離れになってしまうって事ですか…?」

「そうなるな。既に、セレーナやニーニャには話してある。セレーナを説得するのは大変だったが、ある約束を条件に何とか了承してもらえた。

そして、どうせお前は納得しないだろうから決闘と言う強行手段に出たんだ。」


なるほど、あの決闘はそう言う意味があったのか。


確かに、口頭だけなら俺は絶対に行かなかった…イアソンもそれが分かっていたからこんな事をしたのか。

負けてしまった以上、俺からは何も言えない…大人しく頑張るか。


「ほれ、迎えが来たぞ。」


イアソンは、そう言って俺の後ろを指差した。

指を刺された方を見ると、この村には似つかない豪華で派手なデザインをした馬車がコチラに向かって走って来ている。

馬車を弾いている馬もゴツい鎧が着せられている。


やがて、馬車は俺達の家の前に停まった。


そして、その馬車の扉が開き一人の人物が降りて来た。


う、美しい…第一印象は、え?黒ギャル?


ブラウンとグレーが均等に混じった長髪に、紅く光る隻眼の瞳。

制服の間からチラリと覗くヘソと鍛え抜かれた身体。

肉が少しはみ出た網タイツが良い味を出している。俺の性癖にブッ刺さっている。

日本の制服風の衣類を身に纏い、背中には弓矢、腰には一本の剣。


おぉ、素晴らしい女戦士のようだ。

まさに、theファンタジーを絵に描いたようで最高だ。


「やっほ〜、久しぶりじゃね?」


そのお姉様は、そう言ってイアソンに話し掛ける。

少し、低くそれでいて心地いい声…ギャル、なぜ異世界に?


それにしても、この二人は知り合いなのか?


「ああ、そうだな…ヒッポリュテ。」


一方のイアソンは、少しバツが悪そうな表情で答える。


何があったんだろうか…はっ!

ま、まさか…過去にイアソンが手を出して捨てた女の一人なのか!?

け、けしからん!ずるいぞ!


「その可愛い娘がお嬢様の家庭教師〜?」

「ん?ダインは息子だぞ?」


イアソンがそう言うと、ヒッポリュテと呼ばれた女性は驚いた反動で咳払いをする。


「うそー?まじでヤバい!まぁいっか!ボク〜アレにのろ?」


ヒッポリュテさんはそう言って、頭をクイッとさせて乗れ!と指示を出して来た。

馬車に乗り込むと、ちょこんとその場に座る。

おぉ、このクッションは心地いい…ん?2人は、何か話している様だ。


「イヤシスは、元気???」

「まぁな。」

「聞いたんだけどぉ〜、お前。

家のメイドと不倫して子を孕ませたんだって?。」

「それに関しては…少し違うが…まぁ、そうだな。」

「ま、あーしはどうでも良いが…イヤシスを泣かせる様な真似をしたら殺すよ?」

「分かってるよ。それじゃ、頼んだぞダインの事。」

「おっけー。出来る限りの事はする。ばいび〜。」


それから、話を終えたであろうヒッポリュテさんが馬車に乗り込んだ。

よし、まずは第一印象が大切だと師匠に教わった。


「初めまして、ダイワスレイヴ・アスポロトスと言います。

宜しくお願いします。」

「へぇ…ある程度の礼節は出来てるとかやばい。

ヒッポリュテでーす。」


掴みは成功かな…?

ふわぁ、ヒッポリュテさんが動く度にフルーティーな香りが…


「それでぇー、次はいつ会えるか分からんからな、別れは済ませておけ。

少し、時間をやる。」


馬車に付いている窓から家を覗くと…外にはペネロペを腕に抱えて嬉しそうに笑うイアソンとイヤシス…そしてアルマ。

ニーニャは、アーニャを抱えて少し寂しそうにコチラを見ていた。


そうだよな…


俺は、馬車を降りて"家族"の元へ駆け寄る。


まずは、ニーニャと俺の娘アーニャの元へと向かう。


「行ってらっしゃいませダイン様。少し寂しいですが、必ず帰って来ると信じています。

アーニャの事はしっかりと私が責任を持って育てます。」

「ごめん、ありがとうございます。

あぁ、これはアーニャにプレゼントです。こっちは、ニーニャに。」


俺は、そう言って可愛らしい包装に包まれた袋を手渡した。


アーニャに渡したのは師匠から貰った特別な魔法が刻まれた糸で縫ったフード付きのサメをイメージしたパジャマ。

ニーニャに渡したのは、半分のハート型のイヤリング。


この世界の風習に、片方が欠けた耳飾りを異性など大切な存在に渡す。

そして互いに再会し、その二つを重ね合わせるとその者達は必ず結ばれると言う意味があるようだ。


その意味を俺よりも理解しているニーニャは、涙を流しながら喜んでくれた。


「行ってくるよ、アーニャ。」

「あぅあ?」


当然、俺の言葉がまだ理解出来る年齢では無いのでアーニャはただ無邪気に笑うだけだった。


「ダイン、行ってらっしゃい。」


アルマは、少し寂しそうにそう言った。


「体調には気を付けてね?」

「はい、母さま。」

「頑張って来いよ?」

「はい、父さま!…あれ?セレーナは?」

「あぁ、セレーナなら…」





ーー


家の中に入り、とある部屋へと向かう。


この部屋は俺とセレーナが魔法の特訓や勉強をする為に両親が用意してくれた専用部屋だ。

イアソンは、セレーナはここにいると教えてくれた。


なんでも必り拗ねているらしい。


普段は、クールな印象だった彼女からはとても想像出来ない事だったが…取り敢えず、扉を開けよう。


ゆっくりと扉を開くと、薄緑色の輝きを灯しながらひらひらと舞う蝶々と戯れるセレーナの姿があった。

その瞳は泣き腫らした様に赤くなっていた。


「セレーナ…」

「どうして言ってくれなかったんだ…」

「それは、僕も急に言われたからーー「違う!そっちじゃない。」


彼女の声は今にも泣き出しそうな程に震えていた。


家庭教師と事じゃないのか…?

じゃあ、彼女は一体何に対して怒って…ああ、思い当たる節がある。


「叔母さんから聞いたよ…ニーニャとの事…」

「ごめん…」

「お前は最低だ!最悪だ!ろくでなしだ!馬鹿者だ!女たらしだ!」


さ、流石に言い過ぎでは…?


「ごめん…嫌いになりましたよね?」

「ああ、嫌いだ!でも…お前は私にとって掛け替えのない存在なんだ…初めて私自身を見てくれた大切な存在…本当は、大好きだ…」


彼女は、彼女なりに悩み苦しんだ結果、こう言ったのだろう…俺は何も言う事が出来なかった。


「帰って来たら、もっと文句を言ってやるから覚悟しておけ!」


セレーナは大粒の涙を流しながら、そう言った。



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