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第二十節 師匠の手紙と贈り物

「お?ダイン、マーリン様から手紙が届いたぞ。」


うそ!

俺は早速、イアソンから師匠の手紙を受け取った。

その手紙は可愛いシールが貼られた師匠らしい…さぁ、中身を読んでみよう!


師匠の動向も気になるしな。


『拝啓 私の可愛い弟子へ


やぁ!元気かな可愛い弟子よ、病気に掛かったりしてない?ま、健康児の君なら大丈夫だね!

君と別れてから数年経ちましたが…私は只今、大変な状況に追い込まれています。』



な、なんだと…?

まさか、旅先で何かあったのか…すごく心配だ。


『なんと、資金が底をつきました!そこで私とアルトリウスちゃんは君のいるエレシウス領の東部にあるブルータル公王国で宮廷魔法師兼王の家庭教師マルジンとして少し旅賃を稼いでいます。

給料はかなり良いですが…夜遅くまで人が多いので私とアルちゃんの夜の営みが出来ないのが不満ですね。

魔法や座学を教えている王子だけど、彼も筋は悪くない。

君には数倍も劣るけど教え甲斐がある。

偶に、君の様に私にセクハラをしようとしてくるけど…最近は雷魔法で黒焦げにしたら収まったよ。


まぁ、私は元気だよ。

魔法の研究もやりたい放題だし、適当に教えているだけで金が入るから楽でいいよ。

旅の方もかなり順調に進んでいる。

いつか君と再会した時に、沢山の土産話を用意しておくね?

あ、そうそう。


もしも、エレメシア魔術塔に通いたいなら私から推薦状を送っておくよ!

もし、推薦状が届いてなかったら魔法使いマーリンの弟子です。って言えば簡単に入学出来るよ…多分。


それじゃ、愛してるぞー!私の可愛い弟子さん!

世界一の美女にしてバッキュンボンのナイスバディを持った最高の女マーリンより


P.S. 君が私のTバックやブラジャーを盗んだ事は知ってるよ??この手紙と一緒に私が3日間履いたホカホカの黒タイツを送ったから受け取ってね!』


まず色々とツッコミ所があるが…まずは、師匠は元気そうで良かったよ。

確か…ブルータル公王国ってのは…人境大陸の南部の東端に位置する国だっけか?

ここからだと、かなり遠回りしなければ辿り着けない。


近道しようにも、この人境大陸には飛竜山脈は爀翼飛竜(レッドワイバーン)などの飛竜が住まう危険な山脈なので通れない。


ここから、師匠のいる国まで向かうには最短でも数ヶ月はかかる…すぐに会える距離でも無いししょうがない。


次に、エレメシア魔術塔だが…こちらも遠い。


向かうにはかなりの距離を迂回して西北西の道を進まなければならないので何ヶ月も掛かってしまう。


最後に…師匠の神器を盗んだ事がバレていたのか…それはもういいけど、まさかの師匠からのプレゼント!

手紙の中には小さな花柄の革袋が入っていたので、開けてみると…少し蒸れて湯気がモワッと出た黒タイツが入っていた。


うぉぉぉぉおおお!


使用済みのタイツ!師匠の履きっぱなしのタイツぅ!

ん?折り畳まれたタイツの中に小さな紙切れが入っていた。


『特別な魔法で、いくら放置してもこの鮮度を保ったままになるようにしたから好きに使うといい!』


ああ、女神か?あの人は女神なのか?


ありがとう、この女性がずっと履いて蒸れたタイツの匂いを十分に楽しんだら師匠フィギュアに履かせますね!


取り敢えず、返事の手紙を書いて師匠に送ろう。

『P.S.師匠、次はアル先生のモノも宜しくお願いします。』と付け足しておいた。





ーー


「エレメシア魔術塔か…確かに、お前なら通えるだろうが反対だ。」


見事に、一蹴されたな。

まぁ、そうなった理由はなんとなく理解出来る。


「そうね、私も少なくとも"今"は反対よ。」


イヤシスも、暫く考えてからそう答えた。


「理由はちゃんとある。

まずお前には、ニーニャとその間に生まれた娘を支える為に働いてもらう。

もう、伝手はとってある。

二つ、お前はまだ未熟だ。

剣術もそうだが、知識はあると言ってもお前はまだ7歳の子供だ。圧倒的に経験が足りていないお前を通わせる訳にはいかない。

三つ、金銭面だ。

まず、エレメシア魔術塔ってのはかなり学費が高い。ウチの財産ならお前を通わせる事は可能だが、どうせお前はセレーナと一緒に通うと言い出すと思う。

確かに、ウチは金はあるが富裕層でも無いから二人も通わせる金も無い。」


その通りだな。

いくら知識や魔法の実力があったとしても所詮、俺は7歳の子供。

イアソンや他の大人達に比べたら圧倒的に経験値が足りない。

俺がイアソンと同じ立場だっら同じようにそう言うだろう。


「だが、ある程度お前が稼いで…15歳の成人を迎えたら考えてやる。」

「!」


15歳で成人か。

そうだ忘れてた…この世界では15歳になると成人として一人の男又は女として認められるんだったな。

後、8年か。


「わかりました。」


「私からも条件があるわよ。」


おっと、これは予想外。


話が一段落ついて安心した矢先にイヤシスが口を開いた。


「貴方がもし、将来エレメシア魔術塔に通うと言うのならニーニャと娘のアーニャを連れて行きなさい。」

「奥様?」

「アーニャは貴方の子よ、自分の娘の育児を母親だけに任せるのは良くないわ。あっちで結婚して暮らしなさい。

それか、エレメシア魔術塔を卒業したら安定した職に就いて実家で暮らすのもありよ。

将来的にはもう一人、お嫁さんが出来るかも知れないけれど其処は置いといて。

とにかく、それが私からの条件よ。」

「はい、分かりました。」


そうだな…責任は取ると決めたし仕方がない。

それに、ニーニャは俺には勿体無いくらいの女性だ…将来の妻にはもってこいの人物だ。

心の中では絶対的に師匠が一番だが、ニーニャは大切な人だ。


ここに来る前まで高校生だった俺には、荷が重過ぎるが覚悟はしてる。


「なら私からはもう言う事はありません。さぁ、食事を再開しましょう!」

「そうだな。」

「かしこまりました。」「はーい!」

「あぅ、あぅあ!」「あぃや!」





ーーー


◆【イアソン】◇


ふむ…今日、息子が初めて俺達にちゃんとしたお願いをして来た。

いずれはそう言い出すと思っていたが、まさかこんなに早かったのは予想外だった。


やれやれ、ウチの事はとびきり優秀で鼻が高い。

だが…あまりに早過ぎる。


ダインはしっかりしていて優秀だが、所詮は7歳の子供だ。

圧倒的に経験が足りないしな。

それに、俺もダイン程の年齢では無いがガキで家を飛び出したが何度も自分の経験不足を痛感したしな。


それに、ダインには娘のアーニャがいる。


これも本当に予想外の出来事だった。


俺の血を色濃く受け継いでいると思ったが…ありゃ、受け継ぎ過ぎだな。

この究極の女好きだった俺でも、女に手を出したのは11歳の頃だ。

あの様子だとこれからもアイツは俺よりも酷い女たらしになるに違いない…現にアイツには、セレーナやマーリン様という絶世の美女が近くにいる。


ダインは、その二人にも卑しい目を向けている…ニーニャもその事に気付いている様だけど大して気にしていないようだ。

ま、そんなことはどうでもいい。


とにかく、アイツには色んな事を経験して貰いたいと思っていたから今回の騒動はいい機会でもあった。

丁度、少し前から話が来ていた家庭教師の件を任せてみよう。


給料も高いし、アーニャの子育て費用には多過ぎるくらいだ…それにアイツにとってもいい経験や刺激になるだろう。

だが、少し心配なこともある…あそこには俺の冒険者時代の仲間にして最高の筋肉美ボディを持った奴と家庭教師を務めるお嬢様様がいるんだ。


いや、いくらアイツでもあの頑固でくっそ堅物な奴を堕とす事は無理だろうな。

この俺が無理だったんだし。

あのお嬢様も中々と言う噂がある。


少し心配だが、優秀なダインなら立派に役目を果たせるだろう。


それにこれは、セレーナとダインの為でもある。


あの二人は、異常に中が良過ぎる。


いや、正確に言えば…セレーナの方がダインに軽い依存状態に陥ってしまっている。

彼女の気持ちも理解できる。

あの危険な森でたった一人、絶対絶命に陥った時に颯爽と助けてくれたカッコいい男に惚れない理由はない。

年齢と背は彼女の方がずっと高くて年上だが、遠くから見てると兄を慕う妹の様に見えて心睦まじい。


彼女の両親も、ダインになら娶られても大歓迎だ。と言っている。

セレーナがあの事を知ったとしても嫌いはならないだろう。

だが、俺としては心配だ。


だからこそ、少し心細いがこれも二人の為だ。


無論、ニーニャにはしっかりと承諾を得ている。


そして最悪の場合も伝えたが、それはそれで仕方が無いと言っていた。


送られて来た手紙に了解の旨を伝えさせて貰おう。


早速、手紙を送ったら直ぐに迎えを送ると返事が来た。


後は、アイツに伝えれば終わりだ。


もし、断ろうとしたのならその時は実力行使だ。


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