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第十四節 親子喧嘩

その日は、セレーナに魔法について教える事だけで終わった。

彼?はとても勉強熱心で俺の授業を真剣にメモまでして聞いてくれた。

これは凄く嬉しいな…先生もこんな生徒がいたら可愛がりたくなるだろうな。


更に、セレーナは呑み込みが早く帰って一度行ったことは全て網羅していた。


「うん、今日はもう日が暮れましたし…ここまでにしましょう!本格的な訓練は後日からで!」

「そうだな!ありがとう…」

「家まで送りますよ。」


俺がそう言うとセレーナ君は、遠慮気味だったが友達記念として送らせてくれ!と言ったら、渋々承諾してくれた。


彼の家は、この湖から少し歩いた所にポツンと建っていた。

外観はとても新しく恐らく新居。

俺の家に比べたら少しだけ劣るものの…この村に建つ家の中だったらダントツで大きい。


家の玄関まで送ると、家の中から父親と思われる人物が出迎えてくれた。


「おかえり、セレーナ…ん?其方の方は?」

「只今戻りました父上…この方は私の"友達"です!」


おぉ?

やけに"友達"を強調するではないか…うむ、苦しゅうない!

分かるぞ、分かるぞその気持ち!

互いに友達が居ない同士…友と言う存在はかなり嬉しいのだ。


「おぉ!遂に、お前にも友人が出来たのか!」

「そして命の恩人でもあります。」

「む?どう言うことかな?」


友の放った言葉に、父親が反応する。


「実はーー」


我が友は、ここに来るまでの出来事を包み隠さずに全て正直に話した。

話を終えると…父親は険しい表情を見せる。


「全く、あれほどあの森には入るなと言ったというのに…とにかく無事でよかったよ。

君にも感謝をしなければな。」

「いえ、当然の事をしただけです。」

「ほわぁ〜…」


…む?

どうしたのだろうか、我が友よ。

何故に、その様な惚けた声を上げているのだ?


「それでは、私はこれで…」

「最後に君の名前だけ聞かせてくれないかな?」

「ダインです!」


俺は、早く帰りたかったので良く皆んなから呼ばれている名称を名乗って友の家を去った。


随分と暗くなってしまった…これは、早く帰らないとニーニャやイヤシスに怒られてしまう。

イアソンは、『子供なら夜遅くまで遊んでこそだろ!』とお気楽に話すがイヤシスに頭をポコンと叩きながら注意する。


む?


家の前まで辿り着くと…イアソンが普段のお気楽な表情から一変して鬼の様な形相をしてその場に仁王立ちしていた。


おっと、これは不味いなぁ…俺って何かしたっけか?


は!

ま、まさか…部屋に隠していた師匠マネキンに本物の師匠の使用済み下着を履かせて居たのがバレた!?

そ、それとも…毎晩、ニーニャの俺の名前を連呼しながらオ◯ニーしている場面をこっそり覗いているのがばれた?


「遅かったな、ダイン。」

「すみません…」

「俺が怒っている理由は分かるよな?」

「い、いえ…」


取り敢えず、誤魔化そう。


「分からないか…お前が帰ってくる数時間前に、カースの母親からお前があの危険な森に入ったと、報告があった。」


ああ、そのことか。


カース…確か、我が友の話では…自分をイジめている集団のリーダー的な存在って言ってた奴か?

でも、何でそのクソ餓鬼がわざわざ…余計な事をしやがってクソが。


「で?森には入ったんだな?」

「ええ、入りましたよ、でもそれはーー」

「言い訳はしなくていい!」


は?


何だよそれ…少しくらい話を聞いてくれたっていいだろ?

理由も無く入った訳じゃない…それを話せばイアソンも分かってくれるだろう。


「確かに、森に入った事は認めます…でも、それはーー」

「言い訳はするなと言っただろ!」


チッ、人の話を聞けよ。


結局、お前も前世のアイツらと同じって事かよ。


謝るのも癪だな…それに、イアソンの怒り方はあまりにも理不尽過ぎる。

こんな事だと、お互いにとって良くない。


「はぁ…」

「おい、何だその態度は!ちゃんと、俺の話を聞いているのか!?」

「人の話には耳を傾けないのに、自分の話は怒鳴って聞かせるなんて…虫が良すぎるでしょう?」

「なっ!?お前っ!」


俺の一言が、よほど図星だったのか…イアソンはギュッと拳を握り殴りかかろうとしてくる。


「そうやって、手を出せば解決すると?子供に図星を突かれ何も言えなくなり困ったら手を上げる…さぞ楽しそうでいいですね。」

「ッ!?」

「父さまは言いましたよね?自分が正しいと思った事は、迷わず突き通せ…って。確かに、森に入った事は謝りますでも僕は自分がした事が正しいと思っています。

もしも、あのまま父さまの言いつけ通りに森に入ることをしなかったら僕は一生後悔していたので。」


これは本音だ。


現に、俺がもしもイアソンの教え通りに森に入る事をしなかったら今頃…セレーナは死んでいただろう。


「…何か理由があったんだな?」

「ありましたよ、でも、どうやら父さまにとってはどうでもいい様なので言いません。」

「す、すまなかった…何も知ろうとせずにお前を責めてすまなかった!」


そう言ってイアソンは、頭を下げる。


「僕も、すみませんでした…」


俺も謝る。


当然の事だ。


そして俺は、イアソンに事の顛末を何一つ隠すことなく全て話した。


いつものように、遠出をしていたら森の中で誰かの悲鳴を聞いた。

危険だと思ったのでイアソンの言いつけは分かっていたが、何かあったら後味が悪いので森へと向かって。


そして森に入り奥へと向かうと、やはり一人の鎧を身に纏った人物が巨大な魔物に襲われていたので助けた。

そこから、美しい湖を眺めながら魔法の勉強を教えていた。


「そう…だったのか…本当にすまなかったダイン…」

「いえ、父さまが怒るのもしょうがないと思います。僕も、少し言い過ぎてしまいました…」


うん、これで間違って無いはずだ。

まぁ、イアソンも一人の父親と言ってもまだ20代前半の若者だ…間違える事だってある。

俺だって、何度も間違えている。

多分…これからも…


だから、俺はそんな所も含めてイアソンは人間臭くて好きだな…少なくとも元の世界の奴等の様な腐った人間とは違って…


「では、仲直りの証としてハグをしましょう!」

「へ?」

「ほら、父さま!」

「お、おお!」


俺が、両手を広げると…イアソンはぎこちないながらも俺の方へと近付いて互いにハグをした。

これで、仲直りだ。











ーーー





◇【イアソン】◆


今日ーー息子を初めて叱った。


きっかけは、今日の夕方に村に住んでいるガキ大将のカースと母親が家に押しかけて来たのが事の発端だ。

何でも、息子がアレほど立ち入るなと警告したと言うのに危険な森に入ったらしいのだ。


その報告を聞いた俺は、深く溜息を吐くと同時に怒りが湧き上がって来た。

そして、ヘラヘラと笑って帰宅して来たダインを叱った…


そう、ここまではよかった…問題はそのあとだ…俺は怒りのままにダインを叱ったのだが…当の本人は何の事で怒っているのか理解していない様子だったのでそれにも腹を立ててしまった。


ダインが何かを言おうとしていたのは分かっていたが、その時は怒りで判断力が鈍っていたのでただの言い訳だと勝手に思い込んで怒鳴りつけた。


しかし…逆にダインに怒られてしまった。

動揺してしまった…ダインがあんなにも怒りの感情を露わにするのは初めての事だったので驚きを隠さなかった。


ダインの言う事は正しく、何も言う事が出来なかった…確かにな、息子の話は聞かない癖に…こっちの話を聞けなんて、都合が良すぎるよな…


親子喧嘩…思えば、俺の親父も今の俺と同じような感じだったよな…

まぁ、それ以前に俺にはあの堅苦しい家は居心地が悪かった。

そろそろ、家を出て冒険者にでもなって一旗上げようと思っていた矢先の父親との衝突。


あの日の事は今も忘れていない…後悔している、もう少し耳を傾けて互いに素直になっていたら何か変わっていたのかも知れない…短期で頑固…俺や親父にまともな姉…みんな揃って同じ性格をしている、そこに俺の息子も俺達と同じ血を受け継いでいる。


結局、俺は頑固な父や姉とは違う…そう思っていたが根本的な物は何一つ変わっていなかったと言うことだ。

だから、こうして理由も聞こうとせずに頭ごなしに怒鳴りつけてしまったのだ。


謝罪した、自分でも驚く程素直に言葉が出た。


ダインも俺と同じように言い過ぎたと謝罪した。


そして仲直りのハグをした…息子の身体は意外にも大きくなっていた。


心を入れ替えよう、そして息子に恥じない立派な父親としての役目を全うしよう。

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