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第十二節 師との別れ

「いやー、本当に息子が世話になりました!ありがとうございます。」


と、イアソンは師匠の豊満な胸を見ながら頭を下げる。


彼の視線に気付いたイヤシスの鉄拳が無慈悲にも振り下ろされる。

ゴキッと言う鈍くエゲツない音を立ててイアソンが頭から血を吹き出して倒れる。


あー、こりゃ死んだな。


「本当に、ありがとうございますマーリン様!」

「いえいえ、私こそこの数年間お世話になりました!」


ああ、因みに両親が師匠の正体が超有名な魔法使いマーリンだと知ったのは今から一年前。

両親やニーニャ達は疑っていたが…師匠が神級の魔法を使ってみせたらすぐに納得した。


最初こそ、師匠の正体を知り酷く動揺していたが…師匠のフワフワとした性格が幸いして今では本当の家族の様に仲睦まじい。

特に、イヤシスとニーニャ&アルマに関しては女子会を偶に開いている。


「お別れだね、ダイン。

これは私からの餞別だよ、受け取って欲しい。」


そう言って手渡されたのは、綺麗なペンダント。

可愛らしい獣の周りに沢山の薔薇の様な花が咲いた様な模様が刻まれたペンダントだった。


「困った時にそれを見せれば、大抵の事は融通されるようになると思うよ?

例えば、本来なら厳重な検査を行わなければ入れない国に赴いた時にソレを見せれば何も無しで通してくれる。」

「ありがとうございます!」

「なんと、更に!そのペンダントには私の特別な魔法が施してある。

いざと言う時に、必ず役に立つと思うから肌身離さず持っている様に!」

「はい!師匠だと思って大切にします♪」


なんて完璧な師匠なんだ!

愛してるぜ!マーリンちゃん!


「アル先生もありがとございます。

いやー、この数年間の内に何百回も試合をさせて貰ったが一回も勝てなかったのは心残りだな。」

「いえ、こちらこそ。

貴殿の剣の腕は今まで相対した者の中でも群を抜いて強かった…」

「そう言って貰えるとありがたい!」


なんかこの二人は、剣士として意外にも仲が良いみたいだな。


それ以上に驚いたのは、アルトリウス先生の異次元の強さだな。

俺が勝てないあのイアソンが手も足も出ずに圧倒される様子は夢でも見ているかの様だった。


前なんて、俺+ニーニャ+イアソンの3人で戦ったのに完膚なきまでにボコボコにされたし。


しかも、アレで多分だけど半分も力を出していない。


「私としては、ダインには剣の素質もあるので剣士になって欲しかったのですが…マーリンが最強の魔法師にすると五月蝿いので諦めます。

が、魔法だけに頼り切らずに剣術の鍛錬は欠かさないように!」

「はい!」


確かに、そうだな…いくら魔法が使えても、近接に迫られた時の対応手段が無いと死に関わる。

剣の鍛錬はまぁ、イアソンがいるから絶える事は無いぞ安心してくれ!


「あー、少しだけ、ダインを借りても良いかな?」


急に師匠が真面目な顔でそう言った。


どうしたんだろう、あんな真面目な表情をした師匠は初めて見たな?

まさか俺って、何かやってはいけない事をしてしまったのだろか…師匠のブラジャーとTバックを盗んで毎晩、匂いを嗅いでいるくらいしか悪い事はしてないぞ?


まぁ、そんな事はさておき…俺と師匠は家から少し離れた所へと移動していた。


「どうしたんですか?」

「君に伝えたい事があってね…まずは、この数年間本当にご苦労様!

よくぞ私の厳しい授業について来てくれた!」

「ありがとうございます!」


素直にありがたいが…本当の目的はそんな事ではないのだろう。


「ここからが、私の言いたい事なんだ。真剣に聞くように!」

「はい!」

「いいかい、最高の魔法使いの私から見ても…君は天才だ。

それも、異常な程にね…単純な魔力の量なら私よりも多いよ?」


まじょか…


「その才能を妬む者も羨む者もこれから多く現れるでしょう…時には君の力を悪事に利用しようとする者も現れる。

君のソレはこの世界の魔術師にとって、尊敬すべき、畏怖すべき、恨まれる"魔法"の類だ。

いいかい?君は君自身の力を悪事に染めては行けない。その力は強大で簡単に人の命を奪えてしまうような代物だ。」


そうだ…俺の…この魔法は簡単に人の命を奪える言わば武器だ…人を殺そうと思えばいつだって殺せるのだろう。

悪事に使おうと思えば、簡単に使えてしまうだろう…だからこそ、慎重に考えなければならないと師匠は言いたいのだろう。


「ダイン…その力は誰かを守る為に使いなさい。

絶対に、その力を他者を痛ぶる為に利用しては行けないよ?」

「はい、心得ています!俺は、師匠の様に優しく弱者に救いの手を差し伸べられる様な魔法師になりたと思ってます。」

「うんうん、よく出来た弟子だ。

さてと、話したい事は以上だ、戻ろう。」


師匠の言葉で目が覚めた。


もしかしたら、俺は何処か心の中ではこの力を過信してしまっていたのかも知れない…気を付けよう。


師匠との話を終えた俺は、皆んなの元へと戻って師匠とアルトリウス先生を見送る準備をしていた。


「では、皆様…私達はこれで…」

「本当にお世話になりました!」

「寂しくなるなぁ…マーリンさん、アルトリウスさん…アンタらは俺達の家族の様な存在だから、困ったらいつでも寄ってくれ!」

「そうですよ師匠!アル先生!」

「私達はいつでも大歓迎でございます。」

「また来て下さい!」


こうして、二人は旅立った。




皆が二人との別れを悲しんでいる。




そりゃそうだ…二人は俺達にとって本当の家族の様に過ごして来たんだ。

悲しいに決まってるさ…これからいつ会えるかも分からないけど、きっと大丈夫…だよな。





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