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第十節 四代流派

盛大な誕生日を迎えた次の日ーーいよいよ、剣術と槍術の鍛錬が本格的に開始される予定だったが…村の近くに魔物が巣を作って農作物を荒らしていると言う報告を聞いたイアソンは暫くの間はその対処に取り掛かるのでお預けを喰らった。


イアソンはあんなのでも、上級の騎士貴族なので村で起きた問題を対処するのも仕事なのだ。


少し残念だが仕方ない…そう思っていたのだが、どうやら師匠がそっちにもツテがあると言いい紹介してくれるようだ。


「では、紹介するよ♪此方は…私の一番弟子にして今日から暫くの間、君の剣術の先生を務める…アルトリウスだ!」


そう言って、師匠が隣にいる外套を羽織った人物の周りに魔法で花を降らせる。

この人が…師匠の一番弟子か…兄弟子と呼ぼう。


「ほら、挨拶して!」

「はぁ〜、分かりました。」


師匠にそう促された兄弟子殿はため息を吐きながら、深々と被ったフードを外した。

そこから現れたのは…美しい金髪の美少女だった。


訂正しよう…兄弟子ではなく姉弟子だ。


心地いい風に靡く金髪に翠緑色の瞳。

服装は胸元が空いた西洋の騎士風の鎧ドレスを着ている。

腰には、不思議な紋様が刻まれた黄金の鞘剣を帯びている。

如何にも真面目そうな感じの雰囲気を醸し出した女性。


「本日より、貴方の剣術の指導を務める事になりました…アルトリウスです。

宜しくお願いします。」

「はい!宜しくお願いしますアルトリウスさん!」

「あ、その…えっと…」


どうしたのだろうか…アルトリウスさんは急にもじもじし始める。

そんな彼女を見てやれやれと言った様子で師匠がポンと肩を叩く。


「まぁ、彼女は恥ずかしがり屋なんだ。要するに君が私を師匠と呼ぶように彼女も特別な名前で呼んで欲しいんだと思うよ!そうだなぁ、アルお姉ちゃんとでも呼んであげなさい!」

「はい!分かりました師匠!

改めて宜しくお願いします、アルお姉ちゃん!」

「は、はい…お願い…します…」

「やれやれ、本当に君は恥ずかしがりやなんだねぇ…夜の方だって私に任せっきりーー「マーリン!」


む?

おやおや、今何とおっしゃいましたか?

夜の方も…?


あ!

何か見覚えがあると思っていたけど、彼女は師匠と百合プレイを楽しんでいたお相手の方だ!


「それじゃ、そう言う事だから…午後は君に任せるよアル?

弟子よ、夜は私との座学だからそれまで体力は残しておくように!」


師匠はそう言い残すと…何処からともなく現れた杖を振る。

すると、さっきまでその場にいた筈の師匠は居なくなり…その場には一本の美しいピンクの薔薇が咲いていた。


「全く…まぁいいです。

それでは、早速ですけど始めましょう。」


そして、ようやく剣術の鍛錬が始まった。

アル姉曰く、『槍を使った鍛錬はあまり得意では無いので…まずは、私が最も得意とする剣術を教えてある程度慣れたら、教えます。』と。


まぁ、それはしょうがないさ。

人には誰しも得意不得意が存在する…俺だって不得意な事は多すぎる程にある。

だから、別に不満は無いし寧ろわざわざ、忙しい合間を縫ってこうして俺に師事してくれるんだ。


「剣術の鍛錬と言っても、初めから難しい事を教えても上達はしません。

なのでまずは基本から、一個ずつ慣れるまで時間を掛けてやって行きます。」

「わかりました!」


最初のメニューは、至ってシンプル。

木刀の素振りを最初は10本…次に20本と徐々に回数を増やしてゆき最終的には1000本を目指すらしい。

彼女を相手に、打ち合いを行い…足取りや体重移動の確認し調整する訓練。


彼女は初めての打ち合いにも関わらず手加減をしてくれなかった…そのおかげでボッコボコにされて数分で心が折れそうになった。


うん…この人はアレだ、師匠とは違って不器用なんだ。


まぁ、悪気があってやってる訳じゃ無いし…本気で教えてくれてるんだから投げ出すのは失礼だな。


アル先生が言うには、この世界では魔法は勿論の事…"剣術"は他の"弓術"・"槍術"などと比べてかなり重宝されている。


家にある書物を読んでも主に"剣"を使って成り上がったような英雄達が多い…弓や槍などその他の獲物を扱う様な本は一冊や二冊くらいしかなかった。


確かに、アル先生が実際に剣術の手本を見せてくれたのだが…剣に魔力を込めて斬撃を飛ばしたり、コンクリートよりも硬い岩を簡単に真っ二つにしてしまった。

この光景を見た後なら、確かに剣士にとって不利な遠距離の弓使いが相手でも斬撃を飛ばせば対処出来てしまう所を見れば、この世界で"剣術"そのものが重宝されるのは理解出来る。


ここは元の世界とは異なる点だな。

あっちでは、剣を思いっきり振っても岩は切断出来ないし…剣閃を遠くの敵に向かって飛ばす様な技術も存在しない。

その点に関しては、こちらの世界の方が剣術もそれ以外の武術は優れている。

何故か、それは"魔力"の恩恵が関わっているからだ。


こちらの"魔力"の用途は主に、身体強化や剣など獲物の強化を施す為のものだ。



「いいですか、大抵の人間は余程の達人でなければ岩の様な硬いものを切断する事は不可能です。

しかし、この世界に生きる全ての者が持つ"魔力"を使う事によって、本来なら不可能な事も可能となるのです。このように…」


そう言って、アル先生は木刀を握り集中する。

木刀を握る両手から刀先に掛けて、緑色の魔力回路が現れる。

この回路が"魔力"を具象化したもので、魔法を放つ時も同じように現れる。


そして先生は、マーリン師匠が訓練の為に用意していた大岩に使って魔力で強化を施した木刀を振り下ろす。

すると、大岩は見事に縦に真っ二つに切断される。


おぉ、すごい。


「とまぁ、このように…魔力を使えば本来なら不可能な事も容易に出来るのです。

マーリンの元で魔法を学んでいる貴方なら、魔力を扱う事は私以上に慣れていると思うので簡単でしょう。

では、少し小さめの岩があるので試してみましょう。」


よし、やってみますか。


木刀を握り締め、身体の中に存在する魔力を引き出す。


そして…魔力で強化した木刀を岩に向かって振り下ろす!


おぉ、上手く行ったな。


「上出来です。

この調子で、剣術の鍛錬を進めていきましょう!」


なるほど、アルトリウス先生は剣術の事になると普段よりもテンションが上がるのか。

可愛いな。


「そう言えば、アル先生の剣は何処の流派何ですか?」

「いいえ、私の振るう剣はこの世界にあるどの流派にも属して居ません。

ですが勿論、この世界にある流派は全て習得済みです。」


なんだ、天才か…

因みに何故俺が剣術の流派を知っているのかと言うと、家に本があったのでそれを少しだけ読んだからだ。


「私も貴方やマーリンと同じ加護持ちですから。

そのおかげで、私は一度見た剣術は例えどんなに習得が難しい物でも扱える事が出来ます。」


なにそれ、凄っ…


「貴方は、流派についてどのくらい知っていますか?」

「父さまから教えて貰ったのは、この世界には四つの代表的な剣術の流派が存在する事しか分かりません。」

「なら、簡単にこの世界の剣術の流派についつ説明します。」



と言う訳で、俺はアル先生による流派についての授業を受ける事になった。


まず、この世界には代表的な四つの流派に分かれている。


其の壱・身を守るならば、相手よりも速く剣を振るえばいい!

その名はーー"剣神流"!現在は雷神流とも呼ばれている。

極めて単純な流派、そこに美しき技術は無くただ相手に己の剣を迅雷のように素早くそれでいて確実に当てる為だけの剣術。

回避や防御を捨てて、攻撃に全てを賭ける。

その一撃は、天より落ちる稲妻の如く。

攻撃は最大の防御。

使用者は主に、冒険者や一部の騎士に多い。


至ってシンプルで実にいい!


其の弍・蝶のように舞、蜂のように刺す。

その名はーー"舞神流"

剣神流の対となる防御が主体となった流派。

迫り来る攻撃を舞を踊る様に受け流し、蜂のように相手を突き刺す。

カウンター特化の流派。

上級を超える腕前の者達は、大気に流れる"魔素(マナ)"の乱れを感知したり、微かな気配を察知し完璧なタイミングでカウンターを放つ。

使用者の殆どは、王直下の護衛騎士、有力貴族、後宮護衛などと言った主に防衛担当の職業に多い。


因みに、ニーニャも"舞神流"の剣を得意としている。

よくサウザーと剣の鍛錬を行なっているのだが、その時のニーニャは普段のヤンデレ女とは違って美しい。


其の参・卑怯?あるものは全て使うのも一つの手だろ?

その名はーー"戯神流"。

四つの流派の中でも極めて悪質で卑怯だとされている剣術。

生きる為の知識を戦いの中で応用しながら、相手が予想打にしないような戦法で相手を惑わす流派。

たとえ、どんな怪我をしようと己で自己治癒し戦闘続行するプロ。

剣を狙って投げたり、身体に隠した暗器などを相手に投げ不意打ちも得意としている。

主な使用者は、冒険者・傭兵・暗殺者に多く存在する。


其の四・自由に、ありのままに剣を振え!

その名はーー"我神流"

四つの流派の中でも最も自由な剣を振るう剣術。

他の流派と違い、己の戦いの中で会得した技術をそのまま体現した流派。

"剣心流"・"舞神流"・"戯神流"の三つが全部合わさった様な流派。

此方は他の三つと比べて、使っている人間は少ないらしい。

判明している使い手は、帝国の有名な騎士だそうだ。


四つ総称してーー"世界四代流派"と呼ばれている。


これらは、この世界にいるほぼ全ての剣士が四つの流派から使っている。


大抵の剣士は、一つの流派に絞る事は無く剣心流・舞神流・戯神流の三つを下級〜中級まで習得する。

一つの流派を極限まで極める人間は限られており、流派それぞれを齧る方が効率が良いのだとか。

尚、これを称して我神流と呼ぶ者も多いが、全くの別物らしい。


因みに、イアソンは元々貴族の出であり舞神流を主に主体としていたが、自分に剣術の才能があると気付いて剣心流と戯神流も上級まで習得した。


あぁ、魔法に階級があるように剣術にも階級が存在する。


例えば剣心流なら

下位・中位・上位・剣豪・剣王・剣帝・剣聖・剣神

    〃    (雷と付く事もある)

舞神流なら

下位・中位・上位・舞豪ぶごう・舞王・舞帝・舞聖・舞神


戯神流なら

下位・中位・上位・戯豪・戯王・戯帝・戯聖・戯神


我神流なら

下位・中位・上位・我豪・我王・我帝・我聖・我神


それぞれの頂点には、必ず"神"と言う称号が付けられる。


しかし、魔術師の称号は少し特殊らしい。

魔術のランクと魔術師のランクには違いがある、魔術の階級は剣術と同じ物だが、魔術師には階位が存在しておりかなり複雑なようだ。


が、この世界の魔術師の大半は扱えても帝級までであり…それより上の階級の魔術を使える者は魔法使いに最も近い存在、『冠位(グランド)』と名づけられる。


聖級〜神級の魔法が扱える者は、この世界でも指折りの強さを誇る"世界十二英傑"の中に一人ずついるようだ。

師匠…マーリンは、全属性の魔法を神級まで扱えるので『始原の魔法使い』と呼ばれている。


『始原の魔法使い』と呼ばれる者達は、魔術師にとっての悲願であり到達点と云われる"起源"を持ち魔術師協会に縛られず独自に行動を赦された枠外的な存在らしい。



やはり、師匠は化け物だと言うことが改めてわかった。


「なるほど…剣術も奥が深いんですね!」


やっぱり、剣術も楽しいな…元々、剣道が大好きでずっとやっていたから…

それに、たとえどんなに魔法が使えても近距離を対処する術を持っていなきゃ致命的だと思うから頑張ろ!



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