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プロローグ

俺の名前は斎川引人。


何処にでもいる平凡な男子高校生では無い…簡単に言えば俺は引きこもりだ。

そして、現在ーーそんな俺を体裁が悪いと判断した親に追い出されてしまった。


まぁ、どうでも良いがな。


俺も好きで引き篭もりになった訳じゃない…ここに至るまでにいろいろな不幸があった。

一番の原因は、人間関係にある。


俺には幼稚園からずっと一緒に育って来た幼馴染の男友達がいた。

そいつはいつも俺の後をついてきては、俺と同じような遊びをして笑い合っていた。

まぁ、大切な一人の弟みたいな感覚で家族とも言える関係だった。


そんな俺たちも成長してゆき、高校生になった。


自分で言うのもなんだが、俺はかなりイケメンの部類に入っていた…スポーツも人並み以上に出来てモテてた自負がある。

幼馴染もまた俺と同じように顔は整っていた。


俺達は剣道部に入って、共に汗水を流して日々部活に勤しんだのだが…そんなある日、遂に幼馴染に念願の初彼女が出来てた。

幼馴染の彼女の印象は、とても穏やかで人に気遣いが出来てそれでいてとても美しい美人だった。


最初こそ、二人は夫婦の様に毎日毎日イチャイチャを見せつけて来てこちらが馬鹿になりそうだった。

でも、ずっと彼女も作らずに俺の側についてきた幼馴染にもようやく大切な人が出来たのだと喜んでいた。


あの日が来るまでは…


ある日の放課後。


俺は、部活が終わった後に体育館の裏に来てくれと言う手紙が下駄箱に入っていたので書いてある通りに部活動を終えて幼馴染を先に帰らせて向かった。


体育館裏に向かうと、そこには一人の見慣れた女性が立っていた。


その子が振り向いた時に見えた顔は、幼馴染の彼女だった。


どうしたんだ?と質問すると突然、彼女は正面から俺に抱きついて抱擁しながら好きです…と告白をしてきたのだ。

俺は何が起きたのか分からずに、ひどく動揺して暫く固まっていた。


彼女は本気だった、だからこそ頭がおかしいのか?と思った。

「君は、幼馴染の彼女だよね?それは無理だよ。」と断っても…ずっと貴方の事が好きで幼馴染は俺に近づく為に利用したのだと暴露した。


その言葉を聞いて、心底腹が立って来た。

彼女に一言言ってやろうと、思ったその時…背後から何してるんだ?と言う少し涙混じりの声が聞こえてきた。


全身から血の気の引くような感覚が身体を襲ってきた。

その声の主には嫌と言うほど憶えがあった…どうか違ってくれと願うがその願いも無に帰す。


震える身体を必死に動かして、ゆっくりと背後を振り返る。

振り返った先に居たのは…憎悪と悲しみの感情が入り混じった様な表情をした幼馴染の姿だった。


俺が誤解を解こうと言葉を発する直前ーー俺の後ろで同じように動揺していた幼馴染の彼女は駆け出して奴に涙ながらに抱きついた。

そして信じられない事を言うのだ…「俺君に脅されて、強制的に関係を迫られて!従わなかったら貴方を虐めるって脅されてたの!」なんてクソみたいな出鱈目を言って見せたのだ。


は?何を言ってるんだコイツ?と、一瞬思考が停止したがすぐにちがう!と否定しようとしたが遅すぎた。

次の瞬間には幼馴染の拳が顔面に目掛けて飛んできた。


「ふざけるな!見損なったよ…君がそんな奴だとは思わなかった…もう2度と俺に関わらないでくれ!」

「違っ、違う…「黙れ!じゃぁな!」


そう言い残してやつは、踵を返して去っていった。


幼馴染のくそ女は、ふと俺の方を振り返って悪魔の様な笑みを浮かべてザマァと呟いた。

そこから地獄の始まりだった…幼馴染の彼女を脅して関係を迫ろうとしたクズと言うレッテルを貼られ精神的に追い詰められた俺はとうとう不登校になってしまった。


ずっと仲良くしていた幼馴染の両親からも息子には金輪際関わらなと言われ、実の両親と兄妹からも侮蔑の目を向けられた俺はもう何もかもやる気が無くなって引き篭もりになった。

しかも、精神病の影響なのか極度のストレスなのか分からないが…悪意を持った人間特有の色が視える様になった。


異世界物の小説やアニメが好きな俺は、一つの特殊能力を得たようで少しだけ嬉しかった。


暫くは同じ剣道部の一部の後輩や先輩が、事情を聞いて慰めに来てくれたがその時には人間不信に陥っていた俺は誰も信じる事をせずに突き放した。

やがて、俺の周りには誰も居なくなった…実の両親や兄妹とも一切顔を合わせる事は無く…食事は皆んなが寝静まった深夜にひっそりと作ってそれを部屋に持って行き食べる。


そこからはずっとゲームや小説を読む生活が続いていた。

性格も極度に捻くれ、疑心暗鬼に陥っていた俺はゲームでも本当に信頼度を深めた仲間以外のキャラクターは何かある毎に疑い追放したりする。

そんな自堕落な生活が高校一年〜三年生の三年間も続いていた…いつしか、このくだらない世界から消え去りたいと感じていた。


その矢先に、遂に今日…両親と兄妹が部屋に押し入って来て、家から追い出された。

荷物は、少しばかりのお金とお菓子と竹刀…数日は何とか凌げたが、遂に何もかも足りなくなって今にも死にそうだ…


これからどうしようか…と思いながら街中を歩いているとふと路地裏から犬の様な鳴き声が聞こえてきた。

その鳴き声の聞こえた路地裏に入ると、そこには大量の血を流した犬でも猫でも無いもふもふの可愛らしい獣が居た。


「怪我してるじゃないか…」

「ほむぅ…」


自分の着ていた服の布を千切って怪我をしていた獣の手当てをしていると、獣は少し悲しそうな声を上げる。

分かっている、この獣の傷は手の施しようがなくもうすぐ死ぬ事が分かっていた。


「そっか、お前も一人なのか…ははっ、辛いよなぁ一人って…そう言えば…意識が遠くなって来たなぁ…」


段々と、意識が遠のいてゆく…


すると、獣が傷付いた足を引き摺って俺の側に寄って来た。


遠のき消えゆく灯火を感じる中、最後に聞こえたのは一言だけ。


ーー私を、殺しに来て。


その瞬間ーー斉川引人の命は幕を閉じた。

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