出会い
夜の気温がある程度寒くなり始めたころ、そろそろ冬の支度を始めようということで、洞窟の棲家に暖房を作るに決めた。実際には、洞窟の入り口のもう少し下のほうに炭焼きの釜を使って、その煙が通る通り道を、洞窟の床の下に作り、洞窟の反対側から外に煙を出す穴を掘り、それは棲家の上のほうに煙突を作って排気するようにした。
冬の支度なので、薪木とか落ち葉とかを集めてきて、炭焼き窯の付近に集めておく。
天気がもう少し寒くなってから、実際に家の中で過ごすしかでき無い時に煙突の排煙が家に入って窒息でもしたら大変だ。なので、本当に寒くなる前に何度も何度も火を焚いてみて、あちこちの煙の匂いがするところにっ泥を塗ってって、煙が出てこないようにしっかり止めた。
そして煙突が通っている床のあたりはベッドのような何とも言えない形になったので、上の面をしっかりと作り、補強も入れてベッドの形にして、上で寝れるように藁をたくさん敷いた。
床暖房入りのベッドの寝心地がすごく良く、もう寒いからと温泉の中に浸かったまま寝るような事はしないでも良くなった。
暖房システムがある程度出来上がって一区切りがついたので、久しぶりに鳥のいる池のほうに立てた小屋の状況を見に行ったら、小屋の中で、アヒルと鶏が仲良く卵を抱いていた。せっかく自分用に建てた家だけれども、鳥たちの冬越えのために中に藁をたくさん敷いてあげて、小屋を譲ってあげることにした。できれば、春にはたくさんのひよこを見てみたいものだ。
毎日日時計を確認していると。ある日日の出が1番遅くて日の入りが1番早い日がなんとなく感じ取れたので、それが冬至だろうと言うことで、次の日にクリスマスの祝いをすることにした。今日が何月何日か何か全然覚えてないけれども、確か当時は12月23日だったはずということで多分雄のアヒルを1匹食べることにした。前回世田谷で拾ってきたネギを育てたものを干して作った乾燥ネギ、それから枝豆のような豆があったので茹でて塩漬けにしておいてなんとなく醤油の香りのするお味噌のようなものができているので、それと炭焼きの釜の中に火をくべて、蓮の葉っぱでくるんだアヒルを泥に包んだ、いわゆる乞食鶏風の料理である。そして秋に取ったぶどうを竹筒の中に貯めておいたものが、結構ぶどう酒っぽくなっているのでそれも一緒にいただくことにする。よし食べるぞと言うその時に、飼っている鳥たちが騒ぎ出した。何か野生動物とかがいるのかもしれないので、見回りにいちど行ってみたところ、この世界に来て、初めてのニ本足の生き物と会うことになったのだった。
なんだろう。人間ではない。猿ともちょっと違う。とにかく汚い。全身泥だらけだ。
「君はどこから来たの?」
と話しかけてみた。
すると、その小学校低学年位の身長の変な生き物は、いきなり驚いた顔になり、頭を両手でつかんで、
「あぁあぁ」
と変な音を立て始めた。
なので、もう一度聞いてみた。
「私の言葉がわかるかな?」
「わ... わ...」
「君はここの近くに住んでいるのかな?」
「こ...ち...」
「どこから来たの?」
すると、何か思い出したかのように言葉を返す。
「あああ、」
指で自分を指差しながら
「あたし私」
目線がはっきりと私の方を見て
「あっち来た来た」
何と言う事だ、どう見ても人間には見えないこのゴブリンのような子が日本語を喋っている。ちなみに服を着ていないので、男の子ではないなと一目でわかる。あれがないのだ。
手に持っていたぶどうのお酒を1口飲んでから聞いてみた。
「君も飲むか?」
「飲む飲む」
コップを見ながら1口飲んで、こっちを向いて目を合わせてからもう一度飲むと、すごく嬉しそうな表情に変わった。
「美味しい?」
「のむ、おいしい」
ということでコミュニケーションも取れるようなので、家の入り口の切り株のテーブルと岩の椅子に座らせた。
「ここ座って、ちょっと待ってて」
「づわった、まった」
ということで、とにかく焼き上がったアヒルが焦げる前に炭焼き釜から取り出して、テーブルの上に鶏の料理を乗せ聞いてみた。
「君も食べるかい?」
「食べる食べる」
と言いながらすごく喜ぶゴブリン。
なんで日本語が通じるのかわからないので色々と聞いてみたところ、自分から新しい単語を思い出して話すことはできないけれども、私から話した言葉はある程度理解ができるようで、今聞いた単語を思い出したという感じで、簡単な返答をしてくれる。
「食べた、おいしい」
などと、ある程度覚えている単語は組み合わせて言葉にしているようだ。
なので、ある程度コミュニケーションができるようになってきた。
ぶどう酒を4杯ほど飲み、鳥肉も半分ぐらいなくなった頃、ゴブリンはテーブルにうつぶせで寝てしまった。
ベッドに寝かせるのもアレなので、家の中に運んでベッドの横の地面に藁を敷いて寝かせてあげた。横にベッドがあるので、結構暖かいのだ。
こうしてゴブリンと私の共同生活が始まることになった。




