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平民魔術師リズ ~人生山あり谷あり~  作者: 炬燵猫


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『黒持ち』

 

 さて、ここで一度『黒持ち』について説明しよう。


『黒持ち』とは毛髪の色が黒、若しくはそれに近しい色を持つ者を指す。また、魔力適正が闇である者は毛髪の色を問わず『黒持ち』に分類される。


 闇属性は希少なため、多くの『黒持ち』は前者が圧倒的に多い。後者の場合は『灰』と呼ばれ区別されたりもするが前者ほど露骨な差別は少ない(闇属性としては恐れられる存在ではあるが)

『灰』の場合は身分証明の為のタグを身につけていればある程度自由な生活を送る事が出来る。だが、『黒持ち』とされながら比較的一般人と同等の生活を送れる事から前者の『黒』からは仲間とは見做されない。一般人からも完全に受け入れられることは少なく、『灰』は孤立した存在である。


(『黒持ち』は総称。『黒持ち』内では髪が黒の場合は『黒』と呼ばれ、属性で分類された者を『灰』と区別する。一般人がいう『黒持ち』のほとんどは『黒』を指していることがほとんどである)


 次に社会的立ち位置について。

『黒』の場合はっきり言えば犯罪奴隷と同等またはそれ以下の存在である。生まれながらに人権とは無縁の人生が確定されるのだ。前述の通り、『灰』の場合は身分証明さえあれば一般人と大差ない生活を送ることができる。ただし、能力制限をかけられた上での自由であり何か罪を犯してしまえば弁明なしで即日有罪が決定する。 黒持ち≦奴隷<灰≦一般人<貴族 このような身分関係だ。


 何故、『黒持ち』は差別対象なのか。

 それは大陸神話における魔族と人族との争いにまで遡る。


 圧倒的暴力と恐怖。魔族はその恐るべき力で世界を恐怖で支配していた。そして人族は非力だった。繁殖力と高い環境適応力で辛うじて種を保っていたのだ。


 ある時、一人の女性が魔族の男と出会った。

 二人は一目で恋に落ち、やがて女は身籠もった。

 人は女を罵った。

 腹の子ごと殺してしまえという者もいた。


 女は魔族の男と共に逃げた。魔族の住む地へと。


 そこで生まれたのが明確に人族に殺意を持った魔人、エルデ。

 母を迫害した人族の殲滅を掲げ、その牙を向けたのだ。


 人族との間に生まれたエルデは半魔族でありながら、純粋な魔族よりも強かった。

 それを知った上位魔族は人族を攫い、自身の血脈を残した。

 そうして多くの魔人が生まれたのだった。


 圧倒的暴力により人族は追いやられていった。

 追いやられるほど、憎しみは募り、恨み、憎悪した。

 魔族は人類の敵である。そうして人族は散り散りになりながらも魔族と抗戦し続けた。


 魔人の特徴として挙げられるのは皆総じて黒髪であったということ。中には瞳も黒である者もいたようだ。(瞳まで黒の魔人は魔人の中でも更に強かったらしい)

 魔力は髪に蓄えられる。魔族が住む地域は魔素の量が多く自然と体内に取り込むことで魔素が濃度が濃くなり髪に影響が出たと考えられている。


 やがて人は黒髪と見ると魔人と判断するようになった。

 人と混ざった汚らわしい邪悪な存在。


 それが今日の『黒持ち』のルーツである。


 要は遠い先祖に魔族がいるから『黒持ち』は人間とは違う存在であるということだ。

 私から言えばおとぎ話みたいなもんだし、何千年も昔の話なら純粋な人族なんて今現在存在するのかと問いたいものだ。それに、大陸を一歩出れば黒髪の人間なんてそんなに珍しいものではない。それどころかほぼほぼ黒髪のみの民族だっている。大昔の閉ざされた環境ならともかく、現在にその考えは合っていないだろう。


 ともあれ、現在の我が国では魔族との混血の証とされる黒髪は貴賎問わず差別対象である。


 よって多くの場合は生まれた瞬間に死産として処分するか、捨てる。しかし孤児院に出すとその後に血縁を巡り醜聞に繋がるケースが多々ある為、圧倒的に処分される事が多いのだ。『黒持ち』が生まれたと知れたら自分たちの生活は一変する。父母のどちらかが魔族の血を引いていることになるが故に、一族は迫害の対象となるのだから。


 なので私のように成人を迎えるような『黒持ち』は中々のレアだ。よほどの偽善者か変わり者に拾われたか、人に言えないような仕事をこなすために育てられたか。何せ多くは赤子の時に死んでいく。親の采配により生死が決まるのだ。


 私以外の『黒』も今までに出会ったのは二人だけである。『灰』は一人だけ見かけたことがあるが、彼は『黒』の私とは全く違う存在だった。


 話は逸れたが『黒持ち』は人類の敵であるとし、見つければ即処刑されていたらしい。『黒持ち』を殲滅し、自分たちの土地から追いやった事で討伐に加わった者たちの中から何時しか『英雄』と呼ばれる者達が現れた。

 彼らは人族をまとめ、国を作った。そして国王となり人々を平和へと導いた。


 な~んてお話は大陸の何処の国でも多少内容が違えど一定数存在する。そしてこの伝承を根拠に自らを『英雄』の末裔と称する者達も出てくる。



 この国の王族のように。




 *****




 挨拶の言葉がよくなかったのかと尋ねればそうじゃなかったらしい。殿下の魔力による雷撃をいなした事が原因だったらしいが、挨拶に問題無かったのなら良かった! 師団長がなんか言ってたけど今の私には右から左です!



「師団長、それより殿下を」


「む、そうだな」



 ミンスター卿ナイス!師団長の注意が殿下に向いている間に私も立て直さないと。結婚式だの何だので平常心を保てていない。


 喋らず、顔をみせず、跪く。本来の私の立場を忘れるな。


 波打つ心を落ち着かせ、凪いだ心で任務を全うする。私の評価はどうやっても低いが、だからと言って手は抜けない。今はこれで食べて行くしかないのだから仕事を熟さなければならない。


 落ち着かせる為、目を閉じ深呼吸をして目を開ける。……よしっ。



「殿下!?」


「!」



 ぽすんっ


 落ち着いたと思い目を開ければお腹に衝撃が来た。と言ってもかなり緩いが。腹に目を向ければ鳩尾に殿下が顔を埋めていた。WHY?



「殿下!? おやめ下さい! っ!?」



 バチィィン!


 騎士殿が殿下を引き離そうと試みるが雷撃が騎士殿を襲う。さっきに比べれば威力は段違いに弱いが触れれば痛いだろう。


 騎士殿の顔は驚きと絶望が入り交じっている。雷撃を受けた右手を左手で抑え呆然と立ち竦む。何故、どうして……と小さく小さく呟くが、本人も声に出ているとは思っていないようだ。


 その間も殿下は私の腹に顔を埋めている。小さな手で私の魔術師のみに着用が許されたローブに必死にしがみ付く。強く握っているせいか、はたまた別の理由なのか、その手は震えていた。


 平常心をとり戻してた私は一度師団長に指示を仰ごうと思い顔を向ける。師団長になら顔を向けても大丈夫だろう。それにこれからはそうも言っていられないだろうし。(目が合ったという理由だけで殴る蹴るは当たり前だから)


 師団長も驚き、目を大きく見開いていた。が、私と目が合えば直ぐさま宮廷魔術師団長の顔に戻った。



「殿下。まずは此方におかけください。その体勢は疲れるでしょう」



 フルフルっ



「大丈夫です。引き離そうとはしません」



 フルフルっ!



「……リズ、殿下を抱えてソファに座れ。このままでは落ち着いて話も出来ん」


「!……承知いたしました」


「!!」



 そうして腹に引っ付く殿下の脇の下に手を入れて抱き抱える。殿下は今年12歳と聞いていたが、平均的な12歳よりも随分小柄だ。よって体重も軽い。下手したら片手で抱える事もできるのでは……?


 ビクリと体を震わすが引き離そうとした訳でないと分かったようで、有り得ない事に首に巻き付いてきた。いや、いくら何でもダメだろ!



「殿下! お戯れもいい加減に! ()()は……っ」



 バリィィィ!


 またしても雷撃が騎士殿を襲った。しかもさっきより威力が高い。辛うじて当たらなかったようだが、騎士殿のダメージがひどい。信じられないと言わんばかりだ。



「殿下。本日より護衛魔術師としてこの二人をつける事になりました。陛下よりの命でございます。一日の内必ずどちらかがお側におります。ですのでご安心を」



 何事もなかったかのように話し出す師団長すげぇよ。

 だが、首に巻き付いてきたまま殿下は動かなかった。師団長の言葉も聞いているのか怪しいが、しがみ付いてくる位なんだから私が嫌ということはなさそうだ。



「大丈夫そうですな。それではフロイド。殿下の」


「いらない」


「「「!」」」



 ミンスター卿に後を託して師団長は退散する手筈だった。だが、それを遮ったのは言うまでもなくアデルハイト殿下だ。



「リズだけでいい。あとは要らない。……出て行け」



 そう言って顔を上げた殿下の瞳には一切の光がない。何処までも冷たく、暗い。まるで冷たい水底を見ているようだ。


 そう言い終わると再び首に巻き付いた。何とも言えない空気が漂う。視線がめっちゃくちゃ突き刺さる!


 騎士殿よ、なんでそんなに睨むの!? これは私のせいじゃないよね!? やっだ、もうっ!! 眼力だけで人殺せそう! そんな目を向けないで!


 長年殿下の為に仕えて来たらしい騎士殿は新参者の存在が許せないようだ。特に私の存在が。『黒持ち』だもんね。わかるよ。今までもそういう扱いだったからね……。はんっ!!


 殿下は生まれてすぐにこの塔に入った。療養という名の幽閉だ。そんな殿下も『黒持ち』とはいえ王族。本来なら秘密裏に里子になるか処分されるのが妥当だ。しかし陛下は『黒持ち』であろうと我が子に違いないと、生かすことを選択。信頼出来る乳母と最小限の護衛をつけて北の塔に匿ったのだ。


 子は病弱とされ外部との接触を絶った。だがしかし、プライドの高い正妃様は自身が産んだ子が『黒持ち』と判るとあらゆる手を使い、殿下を亡き者にしようと企てた。(完璧な正妃である自分から『黒持ち』が生まれてしまったことが許せないらしい。存在をなかった事にしたいのだ。)一度や二度の話では無い。暗殺者を向けられ食事に毒を仕込まれ、呪術師により呪われ、塔に火を放たれ……


 その度に守って来たのが今、絶望に染まっている騎士殿だ。12年もの間護衛してきた対象から『要らない』なんて言われたらショックだろう。


 とりあえず事情があるのは分かった。だがしかし? なーんで、殿下は私にくっついてくるの? そこんとこ詳しく!



「殿下、我々は殿下の護衛魔術師です。離れずお側におりますので一度離してやってくれませんか?」



 ミンスター卿ナイス! やっぱりこの状況って変だよね!

 さぁ、離して下さいな!しがみ付かれても何も出ないよ! むしろ私の精神力がガリガリゴリゴリ削られてるよ! もう死にそうだよ!!?

 殿下が離れるのを今か今かと待ち望む。たが、あぁ無常。



「やだ」


「やだではありません」


「……やだ」


「殿下、区別はつけねばなりません。我々は護衛。本来なら殿下に不用意にお触れすることは有り得ないのです」


「……」



 ギュッと更に抱きしめてくる殿下。離れない。これは無理っぽいなぁ。無理に離したら今度は誰も近寄らせない子になっちゃうのでは?


 殿下を抱え直していると、師団長が口を開いた。



「殿下、そのままで結構ですのでお聞きください」



 いやいや、私としてはこんなやんごとなき身分のお方を抱き上げたまま話し進めないで頂きたい! 切実に! 何かあれば処刑になるじゃん! 即逃げるけどね!



「先ほども申し上げましたが、今回の護衛魔術師派遣は陛下からの命に御座います。殿下が嫌がろうと二人の内どちらか一方は必ず着きます。また、ヴァレンタインに代わり身の回りのお世話も担います。塔から外へ出る事は叶いませんがそれ以外はご自由にお過ごし下さい。それと」



 師団長ってば諦めないでくださいよー。私今両腕に爆弾抱えてるみたいなもんですよ? 責任とれませんて。

 冷や汗ダラダラ流しながら抱えるこの両腕にこの先の私の人生がかかっている……! こっわ! って、ん? 師団長と目が合った?



「リズ。お前の身分は本日より子爵夫人だ。『黒持ち』としての身の振り方とは今から切り離せ。子爵夫人として貴族となったお前に対する理不尽は最早許されない。何かあればフロイドに相談する事だ。勿論、私にしてくれても構わない」



 殿下の護衛となればそれなりに身分がいる。それをあの結婚で補った。私は『黒持ち』だが子爵夫人。それも次期侯爵の妻だ。しかも陛下自ら後見人となると宣言して下さった。故においそれと手は出せない。


 しかし、私は『黒持ち』根性が身に染みている。それ故に弊害も出てくるのだ。



「発言の許可を頂けますでしょうか」


「良い。それもこれからは自由だ。顔をあげ、胸を張り、声を上げろ。自分の考えを口に出せ。理不尽には抗え。今の君にはそれが許される」



 それはそれは。



「好きに発言してもいいのなら結構です。勿論、時と場合、相手を見て判断します」


「ああ」



 任務のために結婚する羽目になったミンスター卿には申し訳ない思いでいっぱいだが、発言の許可は素直に有難い。なければ任務にも支障をきたすしね。まぁ、発言出来たはいいが私の声が届くかは別だな。『黒持ち』である事になんら変わりはないのだから。子爵夫人の地位も、上位貴族から見ればさほど厄介なものではないだろう。『黒持ち』が王族の護衛の為に仕方なく与えてやった身分。そんなのは明け透けだ。いくら陛下の後ろ盾があるとしても、水面下での嫌がらせは行われるだろう。


 やはりここで一番割を食うのはミンスター卿だ。彼にメリットは一切ない。

 仕事と割り切るほど責任感が強いのはわかったが、彼には今後幸せになってもらいたいものだ。



「殿下。我々二人が殿下の護衛を務めますが、休息も必要ですので交代で護衛にあたります。どうかご理解くださいますようお願い申し上げます」



 抱きつく殿下に話しかける。ゆっくりと体を離し、目があった。

 見事な藍色の瞳。光の角度によっては青にも黒にも見える。

 美しいと素直に思う。王族特有の瞳だ。その瞳は不安や寂しさを滲ませていた。



「リズ、……どこにも行かないで」



 ぎゅうっと再び抱きつく殿下。もしかして、乳母以外の女性は私が初めてかな?

 後日聞いてみたらそうだった。騎士殿は護衛任務でいるわけだから、抱きしめるなんてありえない。唯一抱きしめてくれたのが乳母でその乳母は騎士殿の姉君だったらしい。だけど殿下が4歳の時に儚くなったそうだ。


 以来、壮年の執事と騎士殿だけでこの塔に囚われていたのだ。真面目そうな騎士殿のことだから、雑談なんて仕事中はしなさそう。偏見かもだけど。執事さんも信頼されてずっとお世話をしてきたらしいが、年も年なので退職することになった。


 そうなれば、騎士殿だけで殿下を護衛するのはとても難しい。前述の通り、殿下は実の母からも命を狙われている。幾度となく暗殺の手が潜んでいたのだ。

 陛下は殿下の身を案じ、師団長を頼ったそうだ。陛下と師団長は学生時代の先輩後輩にあたり、現在も交流が続く仲であり、殿下が『黒持ち』であると知る数少ない人物だった。


 師団長の信頼できる人物で口の堅い人間。

 魔術師として宮廷に勤める人間のほとんどが貴族である。平民もいるにはいるが相手は王族。貴族家出身の魔術師であった場合、貴族間の勢力争いが激しくなる可能性が高い。魔術で誓約してしまえば安心だが、基本彼らは守られてきた側の人間だ。それも護衛対象が『黒持ち』だと知れば、不満が出るのは目に見えている。


 ならば、と白羽の矢を立てたのが半年前に晴れて魔術師となった息子のフロイドだった。

 真面目な彼ならば例え『黒持ち』だとしても任務をこなすだろうと。また、次期侯爵として王家に恩を売っておくのも悪くないという打算もあった。


 当初フロイドはというと、新人の自分が先人を差し置いて王族の護衛に就くというのは如何なものかと断った。しかし、陛下が第五王子の護衛を探しているというのを知った第一王子の進言もあり引き受けたのだ。一つ条件を付けて。



「殿下。護衛任務中なら私は殿下のお傍におります。引き受けたからには途中でやめるつもりはありません。もし仮に、私が嫌になったのなら陛下に申し出てください。そうすれば即日私は解雇されますので」



 条件は共に護衛の任に就く者をフロイド自身が選ぶというものだった。

 息子なら間違いない人選をするだろうと簡単に許可を出した師団長はその後我が耳を疑った。


 まさか同期の『黒持ち』を選出するとは夢にも思わなかったのだ。しばらくひどい頭痛に襲われた。

 考え直せと何度も言ったが、『ならば護衛の任は別の者に』というだけ。時間もなく、苦渋の選択だが条件を呑みリズを護衛魔術師とした。


 とここへ、例の第一王子が再び現れいらぬことを言い出した。



『どうやっても『黒持ち』となると身分が低すぎる。師団長よ。そなたの持つ爵位の一つをフロイドに譲り、その『黒持ち』と婚姻を結ばせろ。貴族位があれば任務もこなしやすくなるだろう』




 そうして婚姻まですることになったこの任務。怖くてどれだけの迷惑が掛かっているか考えたくもない!

 リズは『黒持ち』であるが故に人の感情を読み解くのは得意だ。顔色を窺い、時には媚びて時には道化となり生き繋いできた。

 師団長を含め、城のほとんどの人間はリズを蔑む目で見ていることは知っている。

 婚姻も、当初の考え通り任務を滞りなく進めるための必要経費にすぎない。任務が終了すればすぐに離縁だ。


 だからこそあの場で国王陛下からの後見をいただいた。

 この結婚は国王陛下から許された正式なものですよー。侮辱でもしたら国王への反逆ですよー。と、大々的に広めたのだ。


 それがあれば表立っての侮辱は許されない。これはリズの身を守るためのものでもあるのだ。

 リズにできることはフロイドに迷惑をできるだけかけずに任務を全うすること以外にない。


『黒持ち』と関わることでこの先のフロイドにどのような影響を与えるのか。

 何故多くの優秀な魔術師がいる中でフロイドがリズを選んだのか。

 恐ろしすぎてあまり考えたくないリズはフロイドからの視線を避ける。



「任務終了までの期間ですが、私にできる範囲で殿下にお仕えしお傍におりますのでどうぞよろしくお願いいたします」



 これは契約。任務。仕事。

『黒持ち』の私には贅沢すぎるほどの好待遇。


 だから、勘違いしてはいけない。私は『黒』。人並の幸せを得られるなどと思いあがってはいけない。


 例えミンスター卿……、フロイド様の私を見る瞳に狂おしい程の恋情が見えるとしても。


 ……きっと、勘違いだ。





最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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