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四話目 最弱猫ちゃん

 11月11日、跳躍に慣れた僕は、富士森ダンジョンの正面、イタチが原に挑んだ。

 イタチはやばいのが多い。オオカワウソとか、ラーテルとか。ラッコもイタチだけどね。猟虎。漢字だと怖い。

 ボスは当然ツキノワグマサイズのウルヴァリン。今までとは違う、ガチの勝負ですよ。


 腰丈の草原に入ると、中型犬サイズの普通のイタチが出て来る。機敏と跳躍で問題なし。索敵があるおかげで、草に隠れていても意味がない。

 ラーテルは威嚇してくるので、口に闘気弾撃ち込めば、背中がいくら丈夫でも関係ない。

 オオカワウソはでかくて見た目が怖いだけ。跳び尻尾打ちをしてくるビーバーの方が厄介だった。

 一番手強かったのは、入り口付近のイタチと変わらないサイズなのに、動きが良いマングース。猫鼬だけどイタチじゃないんだって。なんでここにいるの。ビーバーに至っては海狸だし。


 なんとか無傷で枯れ草ゾーンが見えるところまで来た。一回帰るも選択肢に入れないといけないんだけど、ボス前の掃討はやってみる。

 草原の敵を片付けたら、木の陰に隠れているビーバーを探す。こちらが枯れ草ゾーンに入るか、攻撃を受けるまでは動かない。

 ボス戦突入と同時に後ろから襲ってくるのだ。それまでは仲間(?)がやられても動かないので、一匹ずつ倒せる。

 三匹目のビーバーの鼻面に闘気弾を撃ち込み、トロイと見せかけるためにのこのこやって来て、跳び掛かって来たのを避けてバックラーで殴り飛ばす。


 落ちた時に「ぎゃ」っとビーバーとは思えない声がした。

 豹くらいの生き物が文句がありそうな顔で睨んでいる。顔は山猫。

 鼻に皺を寄せて「ぎゃあ」と威嚇してきたので、その口に闘気弾を返す。

 隠れていた木の方によたよた戻るビーバーはほっとく。

 

 飛び込んで猫顔の左目を突く。バックステップで避けられて刺さりはしなかったが、触った以上の感触はあった。目に掠り傷はないと、誰かが言ったね。

 もう一度闘気弾を撃ち、追い縋ってバックラーで頭を殴り、首筋を斬る。

 最弱猫ちゃんこと、索敵に掛からない「忍び足」のスキルを持つレアモンスター忍び猫だ。

 仇名の通り戦闘力はレアモン最弱部類。敏捷性が同じくらいのマングースよりは強い程度。

 最初の不意打ちを失敗すれば、こんなもの。


 引っ掻こうと上げてきた左前足を斬って、喉を蹴り上げ、首に止めの一撃を振り下ろした。

 崩れた結晶の中から、色付きの霊核が現われる。スキル入りではない。人体と融合して戦闘用の獣頭人身のもう一つの体「アヴァターラ」になるアヴァターラジュエルだ。

 最初にこれを見つけた、象牙色の角の黒山羊頭のミスターファースト、ブラックジョーカーがビシュヌ神の化身にちなんで名付けた。

 忍び猫は、一人で倒すと霊核がアヴァターラジュエルになる、アヴァターラモンスター最弱でもあった。


 アヴァターラは人間が生身の成長に限界を感じ出した頃に現れるようになった。変身するのではなく、体が二つになり、片方は特別な亜空間に収納される。

 最初に取得したものがベースになって、その後他のモンスターを倒しても多少カスタマイズが効くだけだが、次に手に入れられる可能性が未知数なので、出たものを融合しない者はいない。

 しかも、F級は最弱ゆえに最強への道が開かれている。


 やや赤いトパーズ様のジュエルを握り、融合を意識する。手の中の感触が消えて、技能取得の時に似た、体が膨らむ感覚の後、もう一つの体が四次元的な場所にあるのが判る。

 十代後半の女性の体に、耳の先の毛がないリンクスの頭が乗っている。足はほぼ人間だが、指には鉤爪が生え、足の裏に肉球があるのも判る。

 少し自分の好みに合わせて見た目を弄れるようだが、特に弄らなくていいように思う。


「チェンジ」


 言う必要はないのだけど、アヴァターラを使って配信している人はみんな言うのだ。変身もシフトチェンジと言うのが一般的。

 猫頭の体が現実に現れ、生身の体が四次元空間に収納される。エフェクトとかはない。

 意識がチェンジと同時にアヴァターラに移っている。武器は生身が持ったままなので、予備のバトルナイフを二本出して、両手に持つ。

 慣れない体でウルヴァリンと戦うのは止める。リポップはしないのだが、倒さなかったイタチにぽそぽそ襲われながら入り口から戻った。


「アヴァターラ?!」

「はい」


 警備の人(男)に声を掛けられた。通っているので顔見知り。でもこの顔じゃ判らないよね。

 猫の口からは人の声は出ない。ヘッドオーブと呼ばれている、額にある直径3センチくらいのアヴァターラジュエルと同じ色の半球体から音が出ている。


「おめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

 あ、まずい。生身にチェンジする。


「どうしたの」

「だって、裸ですよ」

「アヴァターラはロボットみたいなもんだから、気にすることないよ」

「いえ、気にしますよ。事務所行くんだし」

「女の子に女の体見せたっていいじゃん」

「そっちの方がなぜか更に恥ずかしいんですが」


 猫頭の裸が見たければ、高機動猫ちゃんの配信を見てあげて下さい。あっちはE級のハグレ猫だけど。

 知り合いでもなんでもないけど、動きの勉強に見せてもらってます。

 所謂見取り稽古ですね。


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