その獣は困惑していた 5
話の都合上、かなり短いです。
突然の光に目を潰された。
不意のそれにまぶたを閉じる暇もない。
資格を奪われた今、頼れるのは己の鼻と耳、そして尾にある熱感知器官だけのようだ。
臭いは特に変わったところはない。耳に入る音も静かだ。
では熱感知はというと、周囲にちらほらと小さな熱を感じていた。
これは、小さき物どもか。
アレだけの戦闘があったというのに、なぜここまで近くにいるのかという疑問が頭をよぎる中、一つの大きな熱の塊を感知。これは、我に向かって人族のものだ。
そして小さきものたちのように小さく、だが孤立した一つの熱が、近くにあるのが分かった。
これは、我が狙っていた赤子のものか。
忌々しい光があった方向と同じ場所に存在してるということはつまり、そういう事なのだろうがいったいアレは何だったのだろうか。
いや、それは関係ない。今すべきことは元凶らしき、赤子を、早く殺さなければ。
そうして一歩踏み出したキマイラは、違和感を覚えた。
こんなにも歩きづらかっただろうか。何故尻の位置がこんなに高いのだ。
そう思い下げれば、膝が地をついた。
自身の体がおかしいことに焦りを覚えたキマイラは、目の焼き付く痛みがいつの間にか消えていたことに気づいた。
ゆっくりと目を開ける。その目に最初に映った景色は地面。そして、人の両の手。
こんなものあったかと前足を動かそうとすると、なんとその手が動いた。
ビクりと体が強張る。
まさかと思い、体を見る。
人の体だった。もごう事なき、屈強な、一物のついた人族のそれ。
そして慌てて立ち上がると、まるで昔から知っているかのように簡単に立ち上がる。
困惑するキマイラ。しかし頭は冷静に己に起こったことを把握していく。
どうやら、我は。人間になったようだ。




