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アイを与えし聖女と番いの獣  作者: kettocer
第一章 一節 獣と行商人
10/10

青年——{とある村の王]

森から離れた場所にある種族が支配する平原地帯が存在する。

人々からは豚人(オーク)族と呼ばれている亜人種の彼らは、一見でっぷりとした体型をしているが、その実全身が筋肉の塊とも言えるほど強固である。熊程度なら肉塊に帰ることができるほどの力を持っているのだ。


普段は温厚な為脅威とはならないが、"村"に侵入して来た者にはその豪腕が振るわれることだろう。

そんな彼らが平凡に過ごしていたある日、森の方から突如として光の柱が出現した。

光の元からだいぶ離れているのにもかかわらず、感じる凄まじいプレッシャー。


村のオーク達は騒然とした。



"格"が違う。あまりにも圧倒的な力の差に恐怖し、荒れる者もいた。


「何だあれは!」

「俺が知りたいっ」

ざわつく民達。彼らも本能的に分かっているのだろう。



"アレ"には敵わない。



本能が逃げろと警鐘を鳴らす。


しかし彼らは誰一人として逃げ出す者はいなかった。

それは、彼らにはある掟があったからだ。

何があろうと村を捨てるな。

この村にいる者は皆家族で、誰一人として居なくなるのを許さない。


「……くそ、どけ!! 俺はこんな場所に居たくない! 逃げさせてもらうっ」

「まて! 部族の掟を忘れたか!」

「知るかっ。逃げて生きれるならそれでいいだろ!」

「ばかやろう。みんなで協力すればなんとかなるって」

「そんなレベルのことじゃないだろ! もういやだ、俺は生きたいんだ!」

彼はこの村でもかなり臆病な青年だった。

常日頃にビクビクとしており、不気味は雰囲気を醸し出している彼だが、知能も良く、様々な方法でこの村の困難を救っていた。

そんな彼であるが故に、あの光の元にいるそれがなんなのか悟っていた。

昔好奇心がまだ勝っていた幼少期。周りから行くなと言われていたにもかかわらず、中に入ってしまったことがある。


まだ昼なのに薄暗い森の中、最初こそ意気揚々と前進していた彼だったが、あるものに出会ってから、今の臆病者に変わってしまった。

あの森をナワバリとしているキマイラである。



あの光からはそのキマイラと……それを超えるナニカの気配を感じる。


どうにかなる? いや、もはやそんなレベルはとうに超えている。

逃げなきゃ……命がいくつあっても足りない。

彼を行かせまいと行く手を阻む友人を跳ね除け、彼が村の出口へ向かおうとした。


「っ!?」

悪寒が背中を走った。


慌てて急ブレーキをかけた瞬間、目の前を銀閃が通った。

視線を下げればそこには一振りの鉈があった。

頬に汗が伝う。


「どこに行こうというのだクルゥカイト。まさか、逃げる気じゃあるまいな?」


地面に深く刺さった鉈を簡単に抜き取り、肩に担いだその者こそ、この村の王。

全くの気配もなくそこに現れた彼の者にクルゥカイトは(こうべ)をたれる。


「申し訳ありません。私の処罰はいかようにでも。しかし……」

「わかっておる。あれは、ムリ(・・)だ」

王からの言葉に、ついには泣き崩れる者が現れた。



このまま滅びを待つしかないのか。誰もが絶望する中、王は続ける。


「だからこそ、我だけが行こう」

「なっ!?」

まさかの発言。その真意が測れない民達に優しく微笑む。


「我は長く生きた。そろそろ席を譲ろうと思っていたのだ」

「そんな、あなた様程の者はまだ現れていないというのに」



「危険ですっ」「お考えください!」「行ってはなりません!」皆一様に王に考えを改めるよう懇願する。


しかし、王は首を横に振った。


「既におるではないか。ココに一人。そして———()()()()()()()

クルゥカイトの頭に手を置いて軽く撫でた王は視線を一人に注いだ。


そこには、弱い幼い子供がいた。

「ウ、ヴヴヴゥ」

まだちゃんと言葉が喋れないのか、唸り声を上げているその子は、その身には合わないこの村の剣士が使う長剣を構え光のあったほうを睨んでいた。

親なのであろう一人が我が子の姿に声を上げる。


「ストライト!? な、何をしてるんだ危ないぞ!」

慌てて駆け寄り、ストライトから剣を取ろうとする。


「!?」

ピクリとも動かない。子供であるストライトから剣を奪うことができない。


「う、うぐぐぐぐ………っ! あっつぅ!?」

必死に子か取り上げようとした親は、突然手に走った熱さで思わず離してしまう。

自身の手を見れば、その手には軽い火傷の跡ができていた。呆然と見ていたストライトの親は何が起きたのかわからずにいた。


頬を撫でる風が暖かい。

みれば子供の周りに赤い揺らぎが。

それをみた村人たちは大きく目を見開いた。


若人達は謎の現象に子に対し恐れ慄き、対して老い人達はその正体に気づき、歓喜した。

クルゥカイトと王もそれが何か理解していた。


「まさか……」

「あぁ、そうだ。あの子が、次代の王だ」

そしてお前もと言われクルゥカイトは王を見る。


「俺、が?」

「そうだ。あの子は成長すれば俺と同格、いやそれ以上になるであろうな。だが、お前以上の知恵を持つ者もいないのも事実。故に、我から、さいごの………王命だ」


クルゥカイトとストライトを次代の王とし、『双王』としてこの村の発展を力を入れるのだ!!


王の言葉は、広場にいなかった村人にまで届き皆その場で傅き承諾した。

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