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魔法世界のセデイター 4.フィリスのセデイト研修  作者: 七瀬 ノイド
第七章 待ち伏せ
28/34

7-1 おとりは誰が?

 濡れたり汚れたり洗ったりしてきた浴場から、魔法省九課へ直帰してきた三人に、早速サンドラから話があるという。そこで、実質密談室となっている課内の視聴覚ブースへ、毎度のごとく立て籠もる。

「おとり作戦の件だけど」

 切り出された話は、リンディの予想どおり。

「で、どうなった?」

「とりあえず、各方面に話は通した。どこでやるかは未定」

 けっこう仕事が早い……ていうか、ちゃんと仕事してるんだ……。課長の顔を、リンディはまじまじと見る。

「……そう。ギルドの近くのじゃなきゃいいや」

 見つめられて、サンドラは訝しむ。

「なんで?」

「明日から通う」

 この女神アリステァの体が毎日公衆浴場で入浴すれば、間違いなく、そっちのほうが噂になってしまう……。憂慮するサンドラ。

「……風呂、壊れた?」

「違う。張り込みだよ」

 というか、待ち伏せ。

「ならいいけど」

 内心、課長はほっとする……。あちこち根回しをした計画を変更せずに済んだ。せっかく仕事したものを無駄にはしたくない。

「毎日、夕方からふたりで張り込みます」

 こういうことが初めてのフィリスは、けっこう楽しみにしている。

「場所変えるのは面倒だし、浴場なら必ず覗きに来るでしょ」

 マスターの手短な説明に、助手がうなずく。

「初めての街のようですしね。スルーすることはないでしょう」

「……そうだね」

 覗き魔の行動パターンは読めないものの、課長はひとまず同意。……駄目だったら、例のおとり作戦がある。

「わたしもついていっていいですか?」

 自分も張り込みとかやってみたい……。手を挙げているナユカを見ながら、サンドラは考える。

「あー、そうだなぁ……」

「だめでしょう。研修中ですよ」

 いつもの駄目出しをした健康管理責任者を、異世界人が見つめる。

「邪魔しないから」

「ま……二、三回……見学だけならいいかな」

 課長のこの決定に、フィリスは不満だ。

「だめですよ。ねぇ? マスター」

「あたしは別にいいけど」

 単独行動が好みのはずのリンディにしては、意外な返答だ……。助手をつけた効果だろうか? サンドラが聞き返す。

「いいの?」

「ユーカは逃げ足、速いし……今日みたいな感じなら、心配ない」

 本日のリーダーに、課長が即、食いつく。

「今日、なんかあったわけ?」

「え?」墓穴。ばれるといじられる……。「あ……うーん……なにもない」

「ふーん……」リンディをじっと見るサンドラ。「ま、いいや」

「とにかく、ユーカの見学は許可する」

 決定を下したマスターが期待しているのは、たまに起きる助手の暴走を、ナユカに止めてもらうこと。言わなくても、同行すれば結果的にやってくれるはず……。

「ありがとうございます」

 内心喜びながらも、異世界人は冷静に答えた──フィリスへ配慮して。

「まぁ……マスターの意向なら……助手は従いますけれども……」

 不満は多少……より、割増であっても。

「じゃ、頼んだ、ユーカ」

 リンディはその肩に手を乗せる……が、本人にはわからない。

「え? なにを?」

「あー、つまり……」フィリスを……とは、もちろん言えない……そこにいる。「なんかあったら逃げろってこと」

「ああ、はい」セデイターへ微笑む、快足娘。「それは任せてください」


「じゃ、話を戻して、おとりの件ね」

 課長は本題へ。

「ああ、そうだったよね……」

 もとより、あまり期待していないセデイター。そもそも、自分が関われることはないし……。都合よくターゲットが現れたら、セデイトするだけ。

「それで……ちょっと……言いにくいんだけど……いちおう言っとく」

 サンドラがこんなに躊躇する……。嫌な予感がするリンディ。

「……なに、それ」

「つまりね……あなたが……」

 言いたくないので、引っ張る課長。聞かされるほうは、嫌な予感しかしない。

「あたしが……?」

 もう、早口で一気に言う。

「おとりやってくれない?」

「いや」

 完璧ボディは食い気味に即答。……冗談じゃない。

「うん……だよね。わかってる。断って当然。それでいい」

 サンドラは何度もうなずいている。

「じゃあ、なんで聞くかなぁ」

 いちいち断るのも面倒。そもそも、「断る」というのは、気分のいい行為ではない。

「『リンディちゃん』を誘うってのを、協力する条件にした奴がいてね……」

 根回しした「上司」の一人。サンドラとしては気分が悪い……。誘われた当人はなおさら。

「やるわけない」怖気が走る……。「それより、誰、その変態? そいつこそ痴漢でしょ」

「まぁ……痴女だな」まったく……くだらないことさせやがって、あのバカ。「声はかけたから、この件はおしまい」

 意外とあっさりしたサンドラの口ぶりに、リンディは拍子抜け。

「なんだ、それ?」

「ということは、作戦はなしですか?」

 尋ねたフィリスに、課長が答える。

「『誘った』でしょ。これで条件はクリアしたから、作戦は立案できる。あとは、向こうにきっちり働いてもらう」

 そもそも、勧誘が成功することは、そいつも期待していない。「リンディちゃんがOKしたら、一緒にお風呂入るぅー」とか言ってたけど、そうはさせるか。思い出してイライラが表面化しているサンドラに、フィリスがおずおずと確かめる。

「さ、誘いさえすれば……いいんですね?」

 断られても……。もとより、人権上、無理強いできない。

「そもそも、リンディにやらせる気はないよ」

 課長はきっぱりと言い切った。だから、最初から話を渋っていたのだろう……。ナユカはほっとする。

「そうなんだ」

 やっぱりリンディのことを大切にしているんだと安心していると、サンドラが声を落として口走る。

「……ばれたらユリーシャに怒られる」

「あー、そうかも……」

 意外にも、妹が同意。しばらく一緒にいたナユカには、そんな姿は想像できない。

「……ユリーシャさんも、怒るんですね」

「……そりゃ、もう……ねぇ?」

 サンドラが向けてきた視線を、リンディが受け止める。

「そうだよ、ね……」

「もしかして、怖いんですか?」

 フィリスは面識がないが、ナユカの知る限り、その対極だ。

「まさか。ユリーシャさん、すごく優しいですよ」

「でも、怒ると……ね」

 サンドラの視線をリンディが受け、またも視線が合わさる。

「うん……まぁ……」

「え? ほんとに?」驚くナユカ。もしかして、人格が豹変するとか……? それだと怖い……それ自体が。「ど……どんな風に?」

「見つめる……」

 言いながら、サンドラはナユカを見つめてきた。

「見つめる?」

 互いの目が合う。

「悲しげな目で……いや、悲しい目で」

「……」

 それは恨めしげとか、そういうものなのだろうか? どう怖いのか、ナユカにはピンと来ない。

「そうすると、こっちが全部悪いんだって気に……」

 視線を落としたサンドラに、リンディがうなずく。

「うん……」

「罪悪感が……つらい」

 伏し目がちの相手に、妹も倣う。

「あの気分は……ね」

「だから……なにをされるよりも……」その先の表現は口にせず、首を振るサンドラ。「いっそ、怒鳴られたり、引っ叩かれたりしたほうが、まし」

 すると、リンディがぱっと顔を上げる。

「そんなこと、おねーちゃんは絶対にしないけどっ」失礼だな。「だいたい、サンディには効かない。それだと、ダメージゼロ」

「まーね」

 胸を張る筋肉課長。……そこは威張るところか? ナユカの視線が刺す。

「ユリーシャさんに同情します。せいぜい、罪悪感に苛まれてくださいね」

 この異世界人はこんな表現もできるようになったんだと思いつつも、サンドラには刺さった。

「……この……厳しい」

「そうなんですよ、ここのところ」

 というフィリス。リンディも思い当たる節がある。

「そうかも……」

 もともとまじめなようだが、最近、ちょっと険がある……。対して、本人は……。

「そんなこと……」

「ないって言える?」

 否定を同居人に先回りされた。

「……」

 沈黙のナユカに代わり、リンディが一例を挙げる。

「ボッコボコとか」

「ぐ」

 これは、フィリスの罪悪感に刺さった。言った方は、さすがにしつこかったかと思い直す。

「あ、今のなし」

「……スチョ」動揺して噛んだ医師。「……ストレスが影響しているのでは?」

「どっちかっていうと、フィリスにストレスがありそうだけど?」

 課長の見立てに対し、健康管理責任者は弁明。

「……それは……今日だけです……たぶん」

「ふーん」

 サンドラはフィリスをじっと見る。

「わ……わたしのことはともかく、ユーカのことです」

「別に、わたしは……」

 本人が否定する前に、またも否定される。

「ないわけないでしょ。異世界に来てるんだから」

 医師の指摘に反論。

「……だからって、イラついたりなんてしてない」

「わたしはイラついているなんて、言ってないけど?」

 医師は、最近「厳しい」と指摘し、ストレスの影響を提示しただけ。

「え?」

 結局、自分でイラついていることを暗に認めたことになる……かもしれない。そんな異世界人を、フィリスが見つめる。

「……帰りたいって思うこと……ない?」

「だって、わたしには知りたいことがあって……だから……」

 ナユカにしては、ぼそぼそとした答え方だ。健康管理者が念を押す。

「それは承知してるけど、帰りたいって思うこともあるでしょ?」

「それは……でも……だって……」うつむくナユカ……。筋肉姉さんが近寄って、無言のまま軽く抱き締めると、その柔らかい部分と柔らかくない部分が、異世界人の心をほぐす。「あるけど……ない……」

「……わかりやすい本音だねぇ」

 リンディは苦笑い。たぶん、「帰りたいと思うことはあるけど、帰る気はない」ってことかな……。

「あなたはちょっと……溜め込みすぎね。まじめだから」

 静かに諭したサンドラは、抱き留めたまま。

「いくら、神経……」言い直すリンディ。「肝が……あー、その……」

 思いつかない……ので、撤退。引継ぎの目配せは、サンドラへ。

「だから……」ゆっくり体を離して両腕に手を触れたまま、ナユカと目を合わせる。「たまには、吐き出したほうがいい」

「……聞いててあげるから」

「まぁ、なんでも言って」

 フィリスとリンディから許可を得て、ナユカがおもむろに口を開く。

「フィリリン……」

 本人に向き直った。

「……うん」

 医者だから……それとも、ため口の仲、そして、同居している間柄だからだろうか……自分に向けて気持ちを吐露してくれるようだ……。それは、うれしくもあり、照れくさくもあり、誇らしくもある。さあ、なんでも打ち明けて。うちに戻りたいとか……寂しいとか……向こうの親御さんや友達に会いたいとか……。どんなことでも、受け止めてあげる……。

 慈愛の女神のように微笑むその姿へ、正対したナユカから言葉が発せられる。

「フィリリンは……ちょっとはしたない」

「……はい?」

 なんだ?

「美容券、美容券って……もう少し、慎みを持ったほうがいい」

「え? あ……うん」

 あれ? えーと……そういう話? こっちの想定と違う……。

「それに、『イケメン、筋肉、紳士』って……騒ぎすぎ。ちゃんと、中味を見るべき」

「あ、はい……そうですねぇ……ごもっともです」

 かしこまるフィリスを置き去りにして、ナユカは次へと移行する。

「リンディさん……」

 本人に向き直る。

「え? あたし?」

 こっちも? まぁ、「なんでも言って」って言っちゃったしな……。

「リンディさんは……食べ物のことばっか。食い気だけじゃくて、色気にも興味を持ちましょう」

「……左様で」

 頭をかくリンディを簡単に終えて、すぐにその次へ。

「サンドラさん……」

 そして、本人に向き直る。

「は、はい」

 こっちまで来た。

「筋肉、すごいです」

「はぁ、どうも……」間が空く。「それだけ?」

「はい」

「えーと……他にあれば……」

 最初に吐き出せといったのは自分だし……。

「いえ……とりあえず、すっきりしました」

 ナユカは顔を上げる。その表情は、確かに晴れやか……。ストレス解消にはなったらしい。

「まぁ……それなら、よかった……」課長は、医師を見る。「ね?」

「ええ、まぁ……」

 駄目出しの多かったフィリスには釈然としないものがあるが……。


「……で、結局……おとりはどうするの?」

 セデイターがいきなり本題に戻したので、課長は頭の切り替えが追いつかない。

「え? あー」

「筋肉がやるの?」

 リンディから不意打ちされ、筋肉が反射。

「わたしはやらない……誰が、筋肉だ」乗り突っ込みになってしまったじゃないか。「まぁ、探すよ……ていうか、誰かいない?」

 作戦の責任者としては、やはり噂だけではなく、実際に「絶世の美女」……でなくとも、それなりの美女がいたほうがいい。

「誰かねぇ……」

 すでに拒否しているリンディだが、また蒸し返されると嫌なので、脳内サーチする……。

「ちゃんと謝礼も出るよ」課長権限で、九課から出す。「……相応の金額で」

「そう言われてもね」

 謝礼が出ようが出まいが、検索はヒットしない……。その脳内をしっかり探させようと、サンドラが挑発してみる。

「まぁ、友だち少ないもんね」

「はぁ? そんなこと……」

 なくもないけど……。それにしても、そもそも、友だちの定義ってなんだ? 抽象的な問題のほうへ思考が逸れてゆく、友だち少ない人。

「魔法省の外にいる?」

 サンドラは、この街でリンディから友人を紹介されたことがない。

「……」

 本人は考え中。傍らのナユカとフィリスは……うつむいている。

「あ」まずった。課長は自らフォロー。「ふたりは、この街にきて間もないから……」

 今のところ、ふたりとも状況的に友達作りは難しい。ナユカは秘密を抱えているし、フィリスは一緒に来た友人のニーナがまだリハビリ中で、手が掛かっている。加えて、両者ともに母語ではないセレンディー語の砕けた表現を、どちらもまだ使いこなせず、互いの間でしかため口を使っていないことも、影響しているかもしれない。

「と……友……ていうと、チェ=グーとか」

 リンディがまずひねり出したのは、マッサージ店のマスター。サンドラも、当人とのいきさつと関係性は聞いている。

「それ、ちょっと趣旨が違うんじゃない」

 いうなれば、「漢」の「友」という感じだ。

「確かに……」向こうの自分への扱いが一方的にそうなのだが。「なら、ルーヴェイとか」

「え」

 その名を出すなんて……。なんだかんだで気の多いフィリスは焦る。それをサンドラは横目で確認しつつ、リンディに視線を向ける。

「へー、友だちでいいんだ? 恋人じゃなく?」

 視線の先ではなく、実はその横をからかっている。

「ぬっ」

 フィリスのうめき声。

「あー、はいはい」

 リンディはサンドラを適当にあしらったのだが、フィリスには通じない。

「……どっちですか?」

「え?」さすがに、リンディもこの病気には慣れた。「……友だち」

「ですよね!」食い気味に反応したイケメン中毒に、今さっき自分を説教したナユカの視線が刺さった。「あ、その……ただの確認だから」

 誤魔化そうというフィリスを、ナユカが斜に見る。

「ふーん」

 ……後でまた説教しよう。

「で」大きめの声を出し、課長は自ら脱線させた軌道を修正。「……どっちも男なんだけど」

 それにしても……少なくとも友達とみなしてもらえたのなら、ルーヴェイもヒロッコ店長とデートする甲斐があるだろう。五日後か……地獄を見るのは……。それを乗り切れたら、「漢」と見なしてもいいかもしれない。サンドラが多少なりともルーヴェイに肩入れをし始めたところ、リンディが声を上げる。

「……あ、そうだ! フローラさん」

「あなたの憧れの店長ね。彼女ならおとりに……」

 ファンは怒る。

「させるわけないでしょ! なに言ってんのさ」

「いや……だから、おとりの話でしょうが」

 ……そうだった。

「……あ、そうそう……アマミエルがいた」

 おとりと言われて、この口からその名が出されるとは……不憫。苦笑するフィリスとナユカを目にし、誤解したサンドラは眉をひそめる。

「誰? それ」

 見かけに問題あるのか……? 

「友だち……みたいな」

 ついに、リンディから「友だちみたい」に認定された。ギルドでは「友だちじゃない」ときっぱり否定されていたのが、かなり昇格したといえる。アマミエルも喜ぶだろう……これが単なるこの場の都合でなければ。

「『絶世の美女』なわけ?」

 冷ややかな課長……。その皮肉にフィリスが事実で返す。

「……体が、すごいです」

 素っ裸でぶっ倒れたときに見た……やばかった。

「リン……」同意見のナユカは、リンディにちらっと目をやる。「女神のように……」

 本人を前にして、どちらの名も口にするのはやめた。

「え? それは……」

 まさかという表情のサンドラに、フィリスが説明する。

「身長が高いので、かの女神のイメージとは少しずれますが……」

「女神アリステァ……」

 サンドラも、リンディの体に対して同じ認識を持っている。

「その分、ダイナミックだともいえます」

 続きを聞かされて、目を見開く上司。いわば、女神の体、拡大版……または拡張版……いや、もしかして、増強版か……? 

「なんてこと……」

「なんのこと?」

 リンディのみ話が見えないが、課長は即決。

「採用」

「はい?」

 聞き返した女神の体に、作戦責任者が頼む。

「その、アマミエル……だっけ? 連れてきて」

「あ、そうなの?」

「おとりにするから」女神の体、拡大版を。「大丈夫。外から見られないように、きっちり対策する」

 ……自分は見るけど。筋肉姉さんでも、女性美への探究心はある。

「でも、やるかなぁ」

 自分で名前を出したものの、あのアマミエルがやるとはリンディには思えない。フィリスも同じ印象だ。

「すごく恥ずかしがりですしね……」

「でも、リンディさんが頼めば、やると思いますけど……」言っておきながら、悪魔のささやきをしてしまったような気がするナユカ。「あ、やっぱりこういうのは……」

「よし、頼んだ」

 課長は、リンディの肩に手を乗せる。

「あぁ……まぁ……声は掛けてみるけど……」

 気乗りがしない……ようなので、サンドラがいつもの手を講じる。

「ああ、食事ね。はいはい」

「それならやる」

 食道楽の条件反射。「おごる」とすら言ってないのに……。ナユカは自らの提案を撤回する機を、完全に逸した。

「ああ……」

「これで、作戦成立だ。面目も立った。恩も売れる」

 喜ぶ課長へ、リンディがにやっと笑う。

「おぅおぅ、お主も悪よのぅ」

「いえいえ、そちらさんほどでは」

 笑い返すサンドラ。

「あっはっは」

 極悪コンビが高笑い。そこへ冷たい目を向け、ナユカがつぶやく。

「……下衆の極み」

 どこでこんな古い表現を覚えたのだろう……。不思議に思いつつ異世界人を見つめ、フィリスが漏らす……。

「やっぱり、厳しい……」




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