モモと住人達
地元の幼児達は会話に「ふん〜」を付けないと窒息してしまうようです。
軍用機の音が徐々に遠くなっていき、また、セミの自己主張が全く関係ない俺の耳に届き始る。
時折、国への就活を頑張ってる自己主張も聞こえるが、こちらは少々関係あるかもしれないので、しっかりと聞き流しておこう。
キッチンの方を見る、奥さんとモモはまだ食器を洗浄したり洗い流したりとイチャイチャしてる。
モモが現れてまだ1週間しか立たないが、その溶け込み具合に頬が緩む。
(…イチャイチャいいなぁ)
いや、この関係になれたのも、ひとえに娘と息子の事前の準備があったからこそなのだろう…、さすがはコミュ力お化け、本物のお化けを仲間にするとは…。
彼女の存在は、現れるその少し前から子供達に聞いて知っていた、なんでもよく遊んでくれていたんだとか。
息子なんか彼女のおかげで、将来の夢が増えたそうだ。…新手の宗教か何かかな?
小学2年生にして『ユーチューバーになってゲーム実況をするのが夢!』とか言ってた様な子
今では『恐竜を発掘する人になりたい、モモさんに見せるんだ』なんて言っている。
でもってその様子をYouTubeにアップするんだって、…やっぱりユーチューバーは目指すんだ。
でも、そんな『遊んでもらってるよー』や『やさしい』『キレイだよー』などを子供達から事前にきかされていたので、子供に良くしてくれる同居人(美人)というイメージで固まってしまい、マイナスのイメージなどは全く無かった。
ゆえに、オレも見えるようになった時は、ようやくか…と、恐怖より嬉しさのほうが先立った。
オレが、そんな【モモ】の存在を知ったのは2週間ほど前のこと、娘の言葉がきっかけだった。
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「トートーあのさーふんー、モーモーねぇねぇさーやさしいんだよー…」
連勤明けの休日、昼食がおわり手持ち無沙汰だったオレは、なにか面白い番組あるかと、リモコンを操作していた。
そこへ昼食のゴーヤーチャンプルーと格闘していた娘が、ついに完食し、話しかけてきのだった。
(んー、ん?
ねぇねぇ…?
モーモー、近所のお姉さんかな?)
言ってることが、きちんと伝わってこない…、けど
「へー、そっかー、モーモーがね〜」画面に出てきた番組表を確認しながら適当に相槌をうつ。
「もー、トートーきいてるのっ⁉」
パチン「!アガッ?!」
…太腿を叩かれた。
流石はゴーヤーを乗り越えし強者、イイ一撃を持っている…じゃなかった
(そーだねー顔見て話し聞かなきゃねー)
いけない、オレがいつも子供達に言っている事だった…娘に向き直り顔お見る。
「あのさーふんー、ねぇねぇさ、やさしいんだよー、あそんでくれるしさーふんー、そばにいてくれるんだよー」
…うん、知ってた、目を見て聞いてもよく分からないことは。
「そっかー、お姉さんとなかよしなんだ」
とりあえず、無難に返してあげた。
「うん!だからさートートーも、みてあげてねー、おはなししよー」
娘はリビングの端にあるソファーを指差した。
カウンターでスゴイのが返ってきた。
「え?、っ……?」追いつかない頭と目を回し周囲を見ながら考える。(え、今?そこにいるの!?)
「ニィニィも、少しなら見えるよー」
8歳になるの息子の声も横から聞こえてくる。
「声は聴こえないけどねー」とゲームの画面をタップしながら付け加えてきた、こして画面から顔を上げるとソファーの隅の方を指差す。
「あそこー!」
「は、え?、…どこよ?」
「ソファーのはじっこよー『チョット』居るさー!」
と息子。
チョットってなに!半分なの?
…上半身とかヤダなー。
左右半分はもっとイヤだけど。
子供達の話しを合わせて整理する。
モーモーねぇねぇ(?)がソファーの端リビングの隅の所にチョットいるとの事。
…オレには見えないんだが。
あー、
えー…、
ナニ?…怖っ!くわ、無いかな、
…見えないから、不安ではあるが…。
子供達は全然怖がってない、むしろ楽しそうに話している。
それに住み始めてそろそろ2年になるし、正直、今更感のほうが強い。