モモと地元
地元バレしないように気をつけて書く。固有名詞を書かなければバレないという風潮…
青い空、白い雲。
照りつける太陽
あおい海、しろい砂浜。
南国の典型ともいえる呼び方でこの場所を表現すれば十分に伝わるだろか。
イヤ
あと、ムシムシとかジメジメも付け足しておこう。
観光客の方がわかりやすいようにパンフレットなんかにも書いておくと良いんじゃないかな…。
そんな気候から壁一枚手立てたリビングで、オレと冷房は朝から働かされ…、働いていた。
いつもは身に纏っている布を、小さく纏めては衣装ケースに詰め込むという作業を繰り返している、少し早めの衣替中だ。
先月…といっても、ついこの間だが、娘の卒園式が終わったばかりの春休み中、少し早いと思われるかもしれないが、今のうちにやっておかないと、梅雨が来てからでは遅いのだ。
…どういう事かと言うと
多量の湿度をお供に、体感温度をアゲアゲしちゃう梅雨は、迷惑パリピ野郎と言うことだ。(…多分ちがうな)
「モモ、そっちの子供たちのモノは、二階に持ってっていいよ」
「わかりましたートートーさん、ベットの下で良かったですか?」
「うん、お願い」
そう言って彼女は、指定された衣装ケースを抱え二階に消えていった。
育ち盛りの子供二人分の冬服、少し重いかと心配だったが、難なくこなしてゆく、その姿を見て安心しオレはまた衣類を畳む機械と化す。
涼しい室の外では、クサゼミ達が子孫を残そうと躍起になってアピール合戦を繰り広げており、それがさらに暑さを演出していた。
時折、セミの婚活を邪魔するかのように、顔写真や名前をデカデカと貼りつけた特別車が、貧困がどうの基地問題がどうのとスピーカーを震わしながら行き来している。
(今日も騒がしく頑張ってるなー)
感心しながらも今のオレは衣類畳マシーン、畳むをやめる事は出来ない。
ほどなくしてモモが戻ってきて、ニコニコしながらオレのそばに腰を下ろす、次の配達待ちのようだ。
さながら忠犬のよう…可愛いぜおい。
あ、(配達は黒猫さんか)
「モモありがとなー、働き者で助かってるよ」
尻尾があればブンブン振ってそうな彼女をねぎらおうと、頭の上付近に手を伸ばす、が〘触れられず〙手が空を切る。
「あれ、『簪』は?…今持って無いの?」
「あー、トートーさんあっちです。」
彼女の指差す方を見ると、ソファーの上に漫画が置いてありその隙間に挟まった『簪』を見つける
「『御神体』を栞になんかしていいのか?バチ当たるぞー」いや、宿ってる本人がそれでイイのか?
「読んでる途中だったんですけど、ちょうどいいモノが無くって…」やっちゃいました、と舌を出す。
許す!
めっちゃ許す。
テヘペロ可愛いじゃないですか。
『御神体』である『簪』を身に着けていないと、こんな風に生きているオレ達では触れられないのだ。
「もー、アンタだけモモとイチャイチャしてずーるーいー」
キッチンで洗い物をしている奥さんが、テヘペロ攻撃であっさりヤラれたオレを覗き見ブーブー不満の声を出す。
その声を聞いたモモは、
「カーカーさん、私も洗い物しますよー」と、漫画の栞を抜き取り、長い髪を結い『簪』に復帰させると、そのままワタワタと奥さんの方へ向かっていった。
…ええ子や。
そう思いながら奥さんと彼女の共同作業を眺める衣替えロボットのオレだった。
『『バタバタバタバタバタ…』』
ふと聞きなれた音が徐々に大きく聴こえてきた。
「にぃにぃみてー!」
続いて、庭にいる子供達の歓声が聞こえる。
「おー、オスプ…だー!今日…2機並ん………」
息子の歓声をかき消す轟音と窓を震わす振動を残し、軍用機が上空を通り過ぎていったようだ。
いつもの事ながら、その音と震えに下っ腹に少しだけ力が入る。
コッチも騒がしく頑張ってますなー。
まぁ、自前の戦力を放棄してる、この国にはしょうが無いコトなのかもしれないが…。
ただ、この島は、そのしわ寄せの集まる場所。
そうあらわす事もできる。