嫌がらせ作戦その1
さて、まずは街で転生者を観察する情報収集の時間だ。私は実力にかまけて情報収集を怠り、無念にも散ってしまった愚か者を何人も見てきた。
そしてその理論は今も変わらない。もしかしたら、少しボケているだけのアホの子なのかもしれない。だったら私の寛大なる心で見逃してやっても……!!
なんて甘い考えをしていたその時、私は見たのだ。奴の周りに、美少女が数人ベッタリと密着しているのを。
明らかにメイドなどと言った主従の関係ではない。楽しそうにしているところから見て、恋人の関係に違いないだろう。
ま、まさかこれが『はーれむ』というやつか。
なんという羨ま……けしからんことをしているのだ。男が一人、女も一人。そして二人が愛し合うからこそ祝福に値するのではないのか!?
それを奴らは穢しやがった……許せん! 許せんぞ!!
よーし、決めた!私はアイツに嫌がらせしてやる! 私が持ちうる賢者の力全てを使って全力で嫌がらせしてやるぞ!!
そう意気込んだ私は、しばらく考えた後に作戦を考えついたのだった。ああ、楽しみだ。あの生意気な転生者に鉄槌を下してやる!
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嫌がらせ作戦その1
『転生者を泥まみれにして恥をかかせちゃおう作戦!!』
さて、呑気にデート気分なのかは分からないが、奴らは和気あいあいと大通りを歩いている。大きな街の大通りなだけあって、そこそこの馬車が通っている。今回私はそれを利用する。
具体的な作戦はこうだ。馬車が通っている大通りに、私が魔法を使って泥沼を仕掛ける。後は簡単。馬車がそこを通るだけで泥が跳ね、転生者はドロドロの汚い男に早変わりという訳だ。
魔法をピンポイントな場所に的確に発動させるその技術! 魔法が流れる様に発動できるその技術! 生半可な者には出来ぬ集大成だ!!
「ぬ?邪魔だ!!」
いざ発動しようと考えたその時、私の隣にほんの少し強そうな奴が現れた。どのように現れたのかは知らないが、どうやら狙いは私と同じ転生者らしい。
邪魔だったので、一瞬でボコボコにして路地裏に捨てておいた。もしかしたら力加減を間違えたかもしれんが……まぁ、邪な存在だったから別に大丈夫だろう。
それじゃあ気を取り直して……くらうがいい!!
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side転生者
俺の名前はラインハルト。最近は勇者とも呼ばれているな。そんな俺が持っている、ハーレムのみんなにすら話していない秘密はただ一つ、俺が転生者という事だ。
信じられるか!? 地球では冴えない男だった俺が、こっちの世界に転生した途端最強ハーレムだぜ?俺がちょっと力を振るうだけで強い魔物がバッタバッタだ。
まったく、コイツらは俺が守ってやれなきゃどうしようもないんだな……やれやれだぜ。勇者として、頑張ってやるとするかな?
そんなことを考えていたその時、突如俺の斜め前に泥の沼が発生したのを、俺は見逃さなかった。
このままではハーレムメンバーも含めて、みんな泥まみれになってしまう。なので俺は急いでバリアを張った。
ふっ、この程度のアクシデントは、異世界チートを地で行く俺にとっては楽勝だな。よし、気にせずデートの続きと行こうか!
ちなみに、何故かこの後俺が魔族を倒した事になってた。まったく覚えがないんだが、もしかしたら俺の溢れ出る力で知らぬ間に倒してしまったのかもしれないな。
まったく、強すぎるのも困ったものだな。はーっはっはっはっは! 異世界最高!!
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