プロローグ
気に入らない気に入らない。なんなんだアイツは。私の勘が告げてる。絶対にアイツは転生者だ。ああ、気に入らない。
このまま愚痴を続けていても良いのだが、礼儀として自己紹介はしておこう。私の名前はギアス。姪はない。
これでも魔法を極めた賢者で、一応不老の身だ。歳は百を超えてからは数えていない。
昔、権力争いに巻き込まれそうになってからというもの、人との繋がりは最小限に抑え(というか誰とも会ってない)、山暮らしの生活を続けていたのだ。
しかし、最近私の居る山に侵入して来た不届き者が居たのだ。普通の山ならいざ知らず、私の居る山はとんでもない魔物ばかりの魔境だ。
どんな奴か気になり、千里眼の魔法で探ってみたが、そいつは黒髪で顔はイケメン、それだけでも腹ただしい(まぁ、私もイケメンなのだが)のだが、なんとそいつは山の魔物を倒した後に、魔物の死体を持ち帰ってこう言ったのだ。
「あれ? 自分、なにか凄いことしました?」
な? イラつくだろ?街の市民どころか、凄腕の実力者でも倒せない様な魔物を倒したにも関わらずこの言い草だ。
お陰で街は大騒ぎ、新しい勇者の誕生だと沸いている。
え? 千里眼じゃ音が聞こえないのに、どうしてそこまで知っているのかって?……そいつに興味が湧いていたからだ。私が人と関わっていた頃には見かけなかった程の実力者(私には遠く届かないが)だからな。久方ぶりに街へ繰り出して調べてみたんだ。
…結果的にこんな実態を知ってイライラする結果になったけどな! こんな非常識な奴、遥か昔に居たとされる異世界からの転生者ぐらいしか居ない! と、冒頭に戻る訳だ。
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