彼の存在の為の始まりープロローグの終わりー
少しだけあった書き溜めです。
ここから物語は展開されていきます。
温かく見守ってやってください。
―それはとある世界の狭間―
神と呼ばれているかどうかは分からない。
しかし、人が語るには畏敬の念を抱かずにはいられない存在がいた。
彼は飽きていた。
自分の様な存在はいくつも存在し、
それぞれが『世界』という名の箱庭を作り出し、
そこで起きる出来事を眺めながら暇を潰していた。
そう、暇潰しだ。
ただ、この永劫に続く退屈を少しでも紛らわす為に箱庭は存在するのだ。
どんなにおいしい食事も、美しい絵画も、はては音楽もこの永劫の牢獄の前には
ただ色褪せていくしかない。
どんなものも時間と共に慣れていく、飽きていくのだ。
心が磨耗し、鈍化し、不感になっていくのだ。
だからこその箱庭。
ここには悲劇も喜劇も、戦場も愛も恋もなんでもある。
いや、全てを用意した。
眺めるだけでどこかしらで物語が紡がれていく最高の舞台だ。
十分楽しめている筈だったが、
如何せん、私は他の同胞に比べても飽き性なのだ。
強い刺激が欲しい、私の永劫を慰めれるような刺激が。
しかし、どうしたものか―思い浮かばない。
何か思いつかないかと考えていたところ、
ふと遠目に他の箱庭からこぼれた粒があった。
ひょいとつまみ上げて見てみる。
そこには、他の箱庭にて彼、『鈴木 信仁』が過ごした生涯が描かれていた。
別にその存在は彼に同情はしなかった。
彼の人格、正確を評価することもなかった。
ただ、その存在の興味を引いたのは魂の核の渇望だった。
『健康な体、強い体、病にも誰にも今度は負けたくない、力が欲しい―力、健康な体、強い体、病にも誰にも今度は負けたくない、
力が欲しい―力、誰よりも健康な体、強い体、病にも誰にも今度は負けたくない、力が欲しい―力、健康な体、最強の強い体、
病にも誰にも今度は負けない、よこせ力が欲しい―力、健康な体、強い体、病であろうとも今度こそは負けたくない、力が欲しい―
力こそが全て、健康な体、強い体、病にも誰にも負けないでいたい、力が欲しい―力、力力チカラ―』
切実な彼の願いが形となり、
その存在の箱庭にて得るであろうスキルを映し出す。
スキル 【力●▲■】
面白い―。
ちょうど箱庭は戦乱、戦火の真っ只中。
役者は十分、舞台は万全、脚本は今から描こうじゃないか。
無論、アウトラインだけ。
細かな部分まで綴ってしまえば、その分遊びが無くなる。
それじゃ退屈だ。
予想を裏切られるカタルシスも無い。
どうれ、楽しみの為の準備をしようじゃないか。
摘みあげた粒を適当な形で自身の箱庭に送り出す―。
少々、箱庭世界での立ち位置はあれだが、
きっと彼も楽しんでくれるだろう。
存在は定着し、問題なく無事生まれる―。
さあ、プロローグは終わりかな。
諸君も一緒に楽しもうじゃないか。
この舞台『ノインシュライド』を。




