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新百合ヶ丘高校文芸部☆  作者: m8eht
はじめての物語編
37/67

第11話 「はじめての物語」2

 「ルルック王国物語・第4話」 牧野ひなた


 1、ロッタです!


 はじめましての方は、はじめまして! お久しぶりの方には、お久しぶりです!

 ロッタです!

 もうすっかり春ですね! みんなはどんなふうに過ごしていますか? 私はこの春、2匹の子ネコちゃんに出会ったんですよ! そのときのお話、聞いてください!!


 と、そのまえに! はじめましての方に自己紹介させてくださいっ!

 私の名前はロッタ・ストーン。ルルック王国の都ルーレルティアのスイナヤ通りでお父さんお母さんと一緒に道具屋をやってる、15歳の女の子です。

 ルルック王国は四方を海に囲まれた国で、その都ルーレルティアもスウェッテ湾を臨む場所に初代国王ペールテ1世様が造られたんですよ。朝日が昇るときは、それはそれは綺麗なんです。

 私はそんな都にあるスイナヤ通りで、両親と一緒に道具屋を営んでいます。

 優しいお父さんとお母さん、物知りのおじいちゃんに、親友のアリアちゃんとファナちゃん、それからガキ大将のカイくんとその一の子分ティムくん、それから……とにかく! 色んな人たちに囲まれて、私は毎日、楽しく暮らしています!

 それでは、聞いてください!


 2、出会い


 今日は私がお店当番の日。でも、ぽかぽかとした春の陽気に眠気を誘われて、私はレジ台の上でこっくりこっくりとお船を漕いでいました。そこへ……。

「おい! ロッタ!!」

 どん!!という音とともに、カイくんの声が頭の上から降ってきました。

「な、なあにぃ……?」

 眠たい目をこすってみてみると、布のしきつめられた箱の中には、白い子ネコが2匹、入ってるじゃないですか。よりそって、お鼻をくっつけるようにしてるのが、とってもカワイイ! でも、なんだかちょっとぐったりしてる???

「わあ! どうしたの、この子ネコちゃんたち?」

「保護したんだよ。俺たちが。迷子の子ネコちゃんになってたからな」

「そうそう!」

 カイくんとティムくんが胸を張りました。

 カイくんは、このあたりの子どもたちの間ではガキ大将で通ってるワンパクな子。やさしいところもちゃんとあるんだけど、ちょっと乱暴なのが玉にキズ。

 ティムくんは、そんなカイくんの一の子分。二人でいるときはいっつも何かイタズラのことを考えてるんです。これまでもいろんなことがありましたよね。

 カイくんは12歳。ティムくんは10歳。二人とも私より年下なのに、私のことを「ロッタ」って呼び捨てにするんです。たまには「ロッタお姉ちゃん」って呼んでくれてもいいと思うんだけどなぁ……。

 あ、話がそれちゃいました。

「首輪をしてるから……たぶんどこかの飼い猫さんなんだよね?」

「だろうな」

「なんだかちょっと元気ないみたいだけど……大丈夫かな?」

「こういうときは、のどが渇いててお腹がすいてると相場が決まってるだろ。水となんか食い物やってくれよ」

「わかった!」

「うちの母ちゃんが言ってたが、ネコに牛乳はよくないらしいな。水だ! 水を持って来い!!」

「はいはい、了解~」

 ネコに牛乳は良くないなんて、はじめて聞きました。もし言ってくれてなかったら危なかったかも?

「食い物は肉がいいな!」

「もう! それはカイくんでしょ?」

「バカ、知らないのか? ネコは肉が好物なんだぞ?」

「そうなの?」

「オマエ! なんにもしらねーんだな!!」

 ティムくんまで私をからかいます! もう!

 さっそく私は水を入れたお皿と、すりつぶしたラム肉を入れたお皿を持って、子ネコちゃんたちの前に置きました。

「おい! 起きろ! メシの時間だぞ!!」

「カイくん! 乱暴なことしちゃだめだよ! ほら、ネコちゃん。起きて。ごはんだよ」

 頭をなでるようにして子ネコちゃんたちを起こします。一匹がふらふらと立ち上がって、お水を舌でぴちゃぴちゃしはじめました。

「わあ、かわいい!」

 思わずそんな声をあげてしまいました。でも、もう一匹はまだ眠ったまんまです。

「こっちのネコちゃん、大丈夫かな?」

 と、元気なほうの子ネコちゃんが、まだ眠ってる子ネコちゃんの顔をぺろぺろ舐めました。うっすらと目を開ける子ネコちゃん。そんな子ネコちゃんの前に元気なほうの子ネコちゃんがお水の入ったお皿をくわえて持ってきます。そうして、二人仲良く飲み始めました。ラム肉のお皿も指先で突っついてオススメしてみたりして。元気な方の子ネコちゃんが、さっそくぺちゃぺちゃと食べ始めました。

「きっと双子の姉妹なんだね! 元気な方がお姉さんで、おっとりした方が妹なのね!!」

「うむ。気に入ってくれてうれしいよ。というわけで、あとは頼んだぞ」

「ええっ!?」

「ウチやティムの家じゃ飼えないって言うからさ、お前のとこに持ってきたんだよ。まあ、えさ代くらいは俺のこづかいでなんとかしてやってもいいぜ?」

「うんうん!」

「ちょっとぉ! そんなの聞いてないよぉ!?」

「バッカ!! お前、『わかったわ!! 私がこの子たちのお母さんになる』とか言うくらいの根性みせろよ!! 女だろ!?」

「そうだ! そうだぞ!!」

「えええーーー!!?」

「それじゃ、たのんだ!!」

「たのんだ!!」

 カイくんとティムくんはバタバタとお店から駆け出して行っちゃいました。あとに残されたのは、私と、2匹でなかよくお肉をたべてる子ネコちゃん。どうしよ? でも、うん。かわいいから、ま、いっか!!


 3、名前をつけよう!


「それで、押し付けられちゃったってワケね?」

 腕組みして呆れた顔で私を見てるのはアリアちゃん。とっても頼りになる私の親友です!! でも、怒るとちょっと怖かったり……。今もちょっと怖い感じ?

「押し付けられたっていうか……でも、ほら、こんなにかわいいよ!」

 子ネコちゃんたちの鼻先をちょんちょんって突っついたら、「やめてよ~」みたいに、首をふりふりしました。それを見てアリアちゃん、ちょっと笑ってくれました!

「はぁ……。ま、アンタはそれでいいんだけどね。いいわ、私も手伝ってあげる!」

「ありがとう! アリアちゃん!!」

 二人で二匹の子ネコちゃんを見守ります。子ネコちゃんたちは、お腹がいっぱいになって落ち着いたのか、まったりしてる感じ。また指先を近づけようとすると、元気な方の子ネコちゃんが、私たちから大人しい方の子ネコちゃんをかばうように前に出ました。

「あっ、ごめんごめん!」

 私はあわてて指をひっこめます。

「でも、いいよね~。元気な子が大人しい子を守るようにして。仲、いいよね~」

「そうね」

「私たちみたいだね!」

「な、なに言ってるの?」

「えへへ」

 ちょっとからかってみちゃいました!

「ねえ、ロッタ。この子たちに名前、つけてあげない? いつまでも、元気な子と大人しい子じゃかわいそうよ?」

「うん、そうかもしれないけど……。でも、飼い主さんから本当の名前をつけてもらってると思うし……」

「でも、私たちだって呼ぶときの名前がないと困るでしょう?」

「うん。そうだよね。それじゃあ、なんて付けようか?」

 それから二人でいろいろ相談した結果、子ネコちゃんの名前が決まったんです!

「それじゃ、元気な方がお姉ちゃんのミイちゃんで大人しい方が妹のミウちゃんにけって~い!!」

 はい、拍手~!!

「ようし! 今日から私がこの子たちのお母さんがわりなんだよね! がんばるぞぉ~!!」

「話は聞かせてもらった!!」

「もらった!!」

 ドバン!!!という音とともにドアがいきおいよく開いて、やってきたのはカイくんとティムくん。

「ちょっと!! 女の子の部屋に断りもなく入ってこないでよぉ!!」

「は? 女の子の部屋? お前、ロッタだろ? なに言ってんだ?」

 ……ときどき、とても理不尽なんです、カイくんは。

「ちょっと! なにしに来たのアンタたち!?」

 そうだそうだ! いけいけアリアちゃん!!

「お前たちが困ってるだろうと思ってな。手伝いに来てやったぞ」

「そうだそうだ!」

「元はといえば、アンタたちがロッタにお世話を押し付けたって聞いたけど?」

「押し付けたとはシンガイだな。テキザイテキショと言ってほしい」

「そうそう!」

 カイくんの言い分にはアリアちゃんも呆れてしまったみたいです。そんなことにはおかまいなく、カイくんはふところから一冊の本を取り出しました。

「これを見ろ! これこそネコのお世話の仕方がちくいちわかりやすく書かれてるとウワサの伝説の書!!」

「わざわざゴンじいの店で買ってきてやったんだゾ!!」

 私とアリアちゃんは顔を見合わせて「どうしよう?」「まあ、ゴンさんのオススメの本なら、きっと役に立つと思うけど……」そんな会話をしたのでした。視線で。


 4、ネコの飼い方・入門編


「それじゃ、さっそくはじめよう!」

 本を片手のカイくんがさっそく講義をはじめます。ミイちゃんとミウちゃんは二人よりそって成り行きを見守ってるみたい。

「え~ネコを飼うにあたって……」

 最初の方のページをめくるカイくん。

「必要なのは、寝床と遊び場……それにトイレか!! よし、さっそくこれを準備するぞ!! 寝床はもうそれでいいんじゃないか? 俺たちが作ったんだぞ!!」

「だぞ!!」

 カイくんがそれと言ったのは、今、ミイちゃんとミウちゃんが入ってる箱のことです。浅い木の箱にいらなくなった服や布の端切れが敷き詰めてあります。

「うーん、まあ、たしかにこれでいいかも? あとで毛布も敷いてみるね」

 ミイちゃんとミウちゃんも気に入ってるみたいだし。それに、私のベッドでミイちゃん、ミウちゃんと寝てみたいなぁ、なんて野望があったり、なかったり?

「ええと、次に遊び場、と。『ネコにとって大切なのは上下の運動』……つまり、登ったり降りたりする運動だな……それと『狩り』か」

 そう言ってカイくんは部屋の中をぐるりを見回すと、

「うん、まあ、この部屋で好き勝手やらせれば、運動になるだろ」

 ひ、ひどい……。

「ここ私の部屋……」

「ねえ、思ったんだけど、その本を私たちが直接読んだほうがはやいんじゃないかしら」

「アリア、お前は何もわかってない。俺がお前たちにレクチャーするからこそ、お前らの足りない頭に有益な情報が刻み込まれるんだろうが。俺の講義は静かに聞くように」

 口の減らないカイくんです……。アリアちゃんもふうとため息。

「ええと、最後にトイレだな。『ネコは誰かに排泄行為を見られることを本能的に嫌っていますので、ネコ用のトイレは人目につかず、人の出入りのあまりない静かな場所に置きましょう』……ということだ」

 それから、カイくんはなぜかニヤリと笑いました。なんだろ、イヤな予感……。

「それから、『子ネコのうちは、母ネコが子ネコの陰部をなめて刺激を与えないと排泄が起きません』と」

「ええ!? そうなの!?」

「そうだぞ!! ほらちゃんとここに書いてあるだろ」

 一瞬だけ、開いたページを見せるカイくん。

「ほら、書いてあるよな?」

「うん、書いてある!!」

 ティムくんにも確認をとるカイくん。

「というわけで、ちゃんとやるように」

「ええ~……」

「オマエな!! さっき、『私がお母さん代わりになって頑張る』って言ってたじゃねえか!! いいか!? やれよ!?」

 ニヤニヤとうれしそうなカイくんが、うさんくさそうな気がしてきた……。

「ちょっと、それ、見せて」

「おい、やめろ」

 アリアちゃんがカイくんから無理やり本を取り上げて、その部分を読みました。

「『生後1ヶ月までの子ネコは』って書いてあるじゃない。この子たちはどう見てもそこまで小さくないわよ?」

「ちっ、ばれたか……」

 カイくん……。

「とにかく、まあ、そういうことだ。その本は貸してやるから、ちゃんと勉強しろよ? それから、あとでネコじゃらしと鳥の羽を持ってきてやるよ!! それじゃあな!!」

「あばよお!!」

 台風のように、カイくんとティムくんは私の部屋から走り去っていきました。

「ほんとに、あいつら……」と、アリアちゃん。

「とにかく頑張ろうよ! ……あれっ?」

 見ると箱の中のミイちゃん、ミウちゃんがおねむになってました。

「この子たちも今日は疲れたのかもね。あいつらに振り回されて」

 アリアちゃんのそんな感想に私たちは顔を見合わせて笑いました。


 5、はじめての一夜


 お父さんとお母さんの了解を得て、ミイちゃんとミウちゃんは正式に我が家のお客さまになりました!

 ミイちゃんとミウちゃんは、夜になってもすやすやと眠ったままです。

 カイくんたちが大騒ぎしたせい? ううん、それよりも、飼い主さんを探してずっと歩き回ってて疲れたのかもしれないよね。今はそっとしてあげよう。ゆっくり休んでね、ミイちゃん、ミウちゃん。

「ロッタ、きたわよ」

 アリアちゃんがやってきました。私一人でミイちゃんとミウちゃんの面倒みれるかなって心配だったから「お願い~」してみました。そしたら、枕持参でやってきてくれました。さっすが、アリアちゃん! やっぱり頼りになる!!

 ミイちゃんとミウちゃんの眠っている箱をそっと私のベッドの上に置いて、その箱をはさむように私のアリアちゃんが寝っ転がりました。これが「川の字」ってものですね!!

「よく眠ってるわね」

「うん」

 ミイちゃんとミウちゃんがよりそって眠ってるのを見ると、ほんとに仲良しさんなんだなぁ~って思えてうれしくなります。かわいい。例えばお母さんも、私が赤ちゃんだったときは、そんなことを思ったりしたのかな? とかなんとか思っちゃったりして。

「どうしたの?」

「え、ううん。なんでもない」

 空想をはじめちゃうと、いつも顔に出ちゃう。それが私の悪い癖。あわてて話題をそらします。

「カイくんからもらった本を読んだんだけど、ネコってチョコレート食べちゃダメなんだね。最悪、死んじゃったりする場合もあるんだって」

「へえ」

「あとたまねぎも食べちゃダメなんだって。血のまじったおしっこが出ちゃうからって」

「そうなの?」

「うん。知らないことがたくさんあったんだなぁって思ったの。ネコって身近な存在だけど、あらためてちゃんと知ろうとすると、知らなかったことがたくさん出てくるんだね」

「それはそうよ。人間だって、そうよ」

「うん、そうだよね」

 いまちょっと大人っぽい会話しちゃってます。アリアちゃんとは時々こういう話もするんです。アリアちゃんの考え方は、いつもとっても大人で、私はいっつもすごいな~って思ってます! これは口に出しては言えませんけど、私はアリアちゃんにちょっとあこがれちゃったり、しちゃったりしてます……。

「明日から、飼い主探し始めなきゃね」

「うん。どんな飼い主さんなんだろう?」

 ミイちゃんもミウちゃんもつやつやの毛並み。お手入れが行き届いてる感じがします。首輪も糸をよった手作りだし、きっと大事にされてたんだよね。だから、きっと今頃、飼い主さんはすごく心配してるよね。はやく見つかるといいな……。

 そんなことを考えてたら、アリアちゃんの寝息がきこえてきました。私もそろそろ寝なきゃ。明日も頑張ろう!! おやすみ、アリアちゃん、ミイちゃん、ミウちゃん!!


 6、お店の看板娘


「これでよし!!」

 お店の前に尋ね人ならぬ尋ねネコのポスターを貼り付けて、準備完了!! 私の似顔絵も捨てたもんじゃないでしょう!? けっこう似てるよね!? これで飼い主さんが見つかるといいんだけどなぁ。

 今日も私がお店番。だからミイちゃん、ミウちゃんには売り場にいてもらうことになるんだけど……まっ、大丈夫だよね! ふたりともとってもお利口さんだし。

 ミイちゃんは私のお店の品揃えに興味津々。耳をピンとたてて売り場をうろうろ。一方、ミウちゃんの方は、レジ台のすみっこに丸くなってまったり。同じ姉妹でもぜんぜん違うよね。

 と、そんなことをやってると最初のお客さんがやってきました。

「おはよぉ、ロッタ!」

「おはよっ、ミーアちゃん!!」

 やってきたのはミーアちゃん! このまえ初めて一人でお使いに来て以来、すっかりお馴染みさんになってくれました。ついこの間7歳の誕生日を迎えたところ。とってもかわいい女の子です!

「ねえ、ロッタ。おもてのはりがみ、なあに?」

「尋ね人ならぬ尋ねネコの張り紙なんだよ。ほら、この子たち!」

 この子たち、とは言ってみたものの、ちょっとミイちゃんが見当たりません。とりあえず、レジ台のすみにいるミウちゃんをミーアちゃんに紹介しました。

「ほら、この子がミウちゃん!」

「わあ、かわいい!!」

 レジ台の椅子の上に立って、ミーアちゃんはようやくミウちゃんとご対面。

「ねえ、なでてみていい?」

「うん、いいよ。やさしく、なでてあげてね」

 ミーアちゃんがミウちゃんをそっとなでていくと、ミウちゃんはちょっとミーアちゃんのことを見て、それからまた気持ちよさそうに目をつむりました。

「わ~」

 ミーアちゃんの口から感嘆の声がもれます。

「みゃぁ~」

 あ、ミイちゃんがひょいっとレジ台の上に上がってきました! しっぽをぴんとたてているのは、ええと、たしか、カイくんから貸してもらった本によれば「かまって」の合図だったはず!

「こっちがミイちゃんだよ」

「うん……」

 ミーアちゃんがそーっとなでようとすると、その手をぺこっと軽く叩くミイちゃん。

「わ、わ……」

 驚いて笑顔になるミーアちゃん。なんどペコペコ叩かれても、手を伸ばして、ミイちゃんの頭からしっぽの根元までをすい~っとなでました。ミイちゃんはとっても気持ちよさそうに伸びをします。

「わ~」

 また感嘆の声がミーアちゃんの口からもれました。

「かわいい……」

 そんなふうにいわれて、きっとミイちゃんもミウちゃんも大満足だよね。結局、ミーアちゃんはお使いに来たはずなのに、20分以上もミイちゃんミウちゃんと遊んでから、「あとでまた来るからね」って後ろ髪をひかれるようにして帰っていきました。

「たくさん遊んでもらえてよかったね。ミイちゃん、ミウちゃん」

 ミウちゃんはまたお昼寝モード。今度はミイちゃんもミウちゃんによりそってやっぱりお昼寝。本当に気持ちよさそうにねむっています。

「じゃますんぞ!!!」

 ガラガラした大きな声とともに筋骨隆々な大きな男の人が入ってきました。

「ふにゃっ!?」

 これにはミイちゃん、びっくり! 体をぺたっと地面につけてなんだか警戒しているみたいです。ミウちゃんのほうはと言えば、薄く目をあけて扉の方をみると、また目を閉じてしまいました。貫禄、あります……。

「お、これが迷子のネコか」

 その人は太い声で言って、二人のほうへ手を伸ばしました。

 この人はデールさんといって、大工の親方さんをしている人なんです。胸板がとっても厚くって、私が本気でたたいてもぺちんという音さえしない感じ? 二の腕なんか私のお腹まわりくらいありそうです。一見とっても怖そうですけど、本当はとってもやさしい人なんですよ。

 ミイちゃん、あごの下を人差し指でくすぐられながら、固まっちゃってます。怖くないんだよ? 今度はミウちゃんの方へ手を伸ばすデールさん。するとミウちゃんはデールさんの手にある傷(修行時代についたものだとか?)を舌でぺろぺろと舐めました。

「わっはっはっは!!」

 デールさんが豪快に笑いました。

「こっちの怠け者はなかなか肝が据わっとるな!!」

 機嫌よく笑いながら、デールさんは傷薬をいくつかお買い上げくださいました! 毎度ありがとうございます!!

 デールさんが帰ってしまうと、ミイちゃんがミウちゃんに覆いかぶさりました。それが「こわかったよ~」って抱きついてるみたいに見えて、なんだかかわいい……。


 午後になると、どうやらミイちゃんとミウちゃんのうわさが広がったみたいで、ふたり目当てのお客さんも見えはじめました。若い女の人はふたりを抱きしめたがるし、ちっちゃな子は二人とあそんだりして。年配の方たちは二人を膝の上にのせてうれしそう。人気者だね、ミイちゃん、ミウちゃん!!

 忙しい時間があっという間にすぎて、お客さんの流れもひと段落しました。と、そこへ招かざる客……と言ってしまうとちょっとかわいそうですけど……のカイくんとティムくんがやってきました。

「よう! 迷子の子ネコちゃんを商売に利用するとは(ここで、左手で右手の腕をぱんぱんと叩いて)やるじゃねえか!!」

「もう! 人聞きの悪いこと、いわないで!!」

「アンタたち、何しに来たの?」

 あ、アリアちゃんが来てくれました。これで百人力だね!! アリアちゃんの後ろからはミーアちゃんも顔をのぞかせます。また来てくれたんだ!!

「こいつを作ってきてやったんだよ。ほら、見ろ!!」

「見ろ!!」

 カイくんが取り出したのは、釣竿? 釣竿の糸の先には鳥の羽がくっついています。

「それ、なあに?」

「まあ、みてな」

 カイくんはミイちゃんの前に鳥の羽をたらして、ミイちゃんがちょいちょいしようとすると、ひょいっと上へ逃がします。ちょいちょい、ひょい。ちょいちょい、ひょい。

「ふにゃあ!」

「とまあ、こんなふうに、ネコじゃらしの強化版なわけだな」

「わけだな」

 カイくんとティムくんは得意そう。

「うりうり」

 カイくんは鳥の羽をミイちゃんの顔に触れるように釣竿を動かします。

「や、やめてあげてよっ」

「そうだよ」

 アリアちゃんとミーアちゃんがカイくんに非難の声をあげます。

「ふにゃっ!」

「あ、こいつ!! お前なあ! 俺たちがいなかったら、お前ら、路頭に迷ってたんだぞ!!」

「そんなふうにむりやりからかうからだよ」

 私はカイくんに注意しました。まあ、言ってどうにかなるカイくんじゃないですけど。

「アニキィ! こっちの大人しいやつならだいじょうぶですぜ?」

「お、そうか。うおお、やわっけーな。これが肉球というものか」

「ふにゃぁ~!!」と、またしても激怒するミイちゃん。

「なんでこいつはまた怒ってんだよ!?」

「ミウちゃんにちょっかい出すからだよ」

「よし、わかった」

 何がわかったんだろう?

「ロッタ、お前、明日店休みだよな? というわけで、俺たちの親睦をかねて、ピクニックに出かけるぞ」

「なにそれっ!?」

「俺たちとこいつら(と、ミイちゃんとミウちゃんを指差しながら)の親睦を図る必要があるんだよ」

 カイくんはそう言って強引に決めてしまいました。

 私とアリアちゃんとミーアちゃんは、思わず顔を見合わせたけど、ピクニックってステキな思いつきだったし、「ま、いっか」って思いました。カイくんにしては上出来です!


 7、ピクニック


 次の日は絶好のピクニック日和でした。お弁当を持って、みんなで出発です。ミイちゃんとミウちゃんは専用のバスケットのなか。ふたを開けて顔だけのぞかせてるのが、とってもキュート!

 アークアックの森林公園まで、ミイちゃんとミウちゃん、私とアリアちゃんとミーアちゃん、それにカイくんとティムくんの2匹と5人の道中です。

 途中で私はいいことを思いつきました。森林公園までの通り道に、ちょうどファナちゃんが入院している病院があるんです。ファナちゃんは生まれつき病気がちで、今までのほとんどを病院で過ごしてきたんです。でも性格はとっても明るくて落ち着いてて、それに大変な読書家で色んなことを知ってるんですよ。

「ねえ、ちょっとファナちゃんの病室に寄ってみようよ」

 私が提案したら、みんなすぐに賛成してくれました。


「あら、みなさん!」

「ファナちゃん!!」

 ファナちゃんはベッドの上で本を読んでいました。

「また朝飯のこしたんじゃねえの? 俺によこせ」

「カイ、あんたはだまってなさい」

 アリアちゃんがカイくんを叱りました。

「今日はどうしたの?」

「これからね、ピクニックにいく途中なんだ。はいこれ」

 私はお弁当を入れた袋から果物をいくつか取り出しました。お見舞いの品です!

「それからね、あわせたい子がいるの。ほら」

 ファナちゃんのベッドの上にミイちゃんミウちゃんせんようのバスケットを載せました。顔をのぞかせるミイちゃんミウちゃんを見て、ファナちゃんは歓声を上げました。

「わあ、かわいい! どうしたの、ロッタちゃん」

「この子たちね、いまウチのお客さまなんだ」

「もとはといえば、俺たちが迷子になってるところを保護したんだぞ」

「俺たちが命の恩人なんだ!」

 バスケットからミイちゃんがひょいと飛び出して、ファナちゃんのベッドの上にのっかりました。そのままとことこ歩いて、ファナちゃんの顔をくんくんします。

「どうしたんだろ?」

「ふふ、くすぐったい。もしかしたら、お薬のにおいがめずらしいのかも」

 くんくんし終えると、ミイちゃんはそのままファナちゃんのひざのうえで丸まってしまいました。それを見て、ミウちゃんもバスケットから出て、やっぱりミイちゃんのとなりで丸くなりました。

「かわいいね」

 ファナちゃんはそう言って、顔をほころばせました。

「あら?」

 私たちの顔をみまわしていたファナちゃんがミーアちゃんを見ていいました。

「ロッタ、そっちのかわいい子も紹介して」

「あ、そっか! ファナちゃん、ミーアちゃんとは初対面だっけ」

 私はミーアちゃんをファナちゃんに紹介しました。

「ふふ、こっちの子もかわいいね」

 ファナちゃんにそういわれて、ミーアちゃんは顔を赤らめました。

 そのまましばらく、みんなで他愛の無い雑談をして過ごしました。

「ねえ、今日、ちょっと出かけられないかな? このまま私たちとピクニックに行こうよ」

「ごめんなさい。今日は午後から診察があるから」

「そっかぁ。じゃあ、仕方ないよね」

「うん。ピクニック楽しんできてね!」

 私たちはファナちゃんに見送られて、ファナちゃんの病室をあとにしました。


 森林公園についたころには、もうお昼近く。

「おい! もう先にメシ食っちまおうぜ!!」

「おなかすいたー!」

 さっそくカイくんとティムくんが言いはじめました。

「うーん、そうしよっか?」

「そうね、先に食べちゃいましょ」

 木陰に風呂敷を広げて、その上にお弁当箱を並べていきます。

「わあ、すごい!」

 ミーアちゃんが目を丸くしました。

「すごいでしょ? 今日の朝、私とアリアちゃんで作ったんだよ!」

 ちょっとえっへんです。

「お前らもたまには役に立つな」

「うんうん」

 言いながら、カイくんとティムくんはまずサンドイッチからつまみ始めます。

「ちょっと! そんな言い方は失礼でしょ?」

 アリアちゃんが言っても、そんなのおかまいなしにぱくぱくと食べていきます。

「私たちも食べよ、アリアちゃん、ミーアちゃん!」

 さて、ミイちゃんミウちゃんはといえば。

 ミイちゃんはお弁当の間をしっぽをゆらゆらさせて歩き回りながら、ときおりくんくんと匂いをかいでいます。

「おい、食え」

 カイくんがサンドイッチの具になってたツナを手のひらの上にのせてミイちゃんにあてがいました。ミイちゃんはくんくんと匂いをかいで、やがてペロッと食べてしまいました。

「こっちも」

 ティムくんがカイくんの真似をします。ミイちゃんはやっぱり匂いをかいでペロッと食べてしまいました。

 一方ミウちゃんはミーアちゃんのひざの上の特等席で丸くなっています。そんなミウちゃんの鼻先にミーアちゃんがブロッコリーをあてがうと、まず舌でなめてから、ちょっとずつちょっとずつ食べて行きます。

「ふふ」

 ミーアちゃんが笑いました。ミウちゃんがミーアちゃんの指をぺろぺろと舐めています。くすぐったいのかな?

 私とアリアちゃんは顔を見合わせて微笑みかわしました。穏やかなお昼の光景でした。


「ふああ、おなかいっぱいになったら眠くなっちゃった」

 ちょっとはしたないですけど、そのまま芝生の上にどたーんと横になってみました。そしてそのまま、ミーアちゃんのひざの上にいるミウちゃんの鼻先をついついっと突っついてみました。ミウちゃんはいやいやするように首をふって、またすやすやおねんねしてしまいました。

「なんだかネコちゃんといると、ごろごろしたくなっちゃうよね」

 そんな感想を言ってみたり。

「もう、ロッタったら」

 アリアちゃんが言いました。

「アリアちゃんも寝っ転がってみよーよ」

「わ、私はいいわ」

「ちっ、軟弱な連中だぜ……。おい、ミイ公。お前はそんなことないよな?」

そう言いながらカイくんはミイちゃんの目の前にボールをかざして、くんくんと匂いをかがせました。

「ほら、とってこ~い!!」

 カイくんはそのボールを向こうに投げました。でも、ミイちゃんはとりに行く気配がありません。ボールの方を見送ってるだけです。

「ネコは犬と違うんだから」

 冷静なアリアちゃんに突っ込まれてます。

「しゃあねえ……ティム、俺たちだけでやるか」

「ういっす」

 カイくんとティムくんは私たちから少しはなれたところでキャッチボールをはじめました。ミイちゃんはそんな二人をみて、ちょっとずつとことことそっちへ歩いていきました。

「お、ミイ公もやりたいのか? お前はやっぱり男だよ」

 ミイちゃん、女の子なんだけどな。そんなことを思いながら、また横になって目をつむりました。


「ロッタ、ロッタ、起きて」

 アリアちゃんの声に目を覚ますと、アリアちゃんとミーアちゃんが私の顔をのぞきこんでいました。

「わ、わ、ごめん! 私、寝ちゃってた?」

 あわててはね起きます。

「ええ、それはもうぐっすりと!」

 アリアちゃんがちょっとイジワル。あわてて袖で口もとをぬぐってみます。よだれとか……出てなかったかな?

「おいロッタ、お前、本気で嫁に行く気あるのか?」

「余計なお世話よ!!」

 カイくんは本当にイジワル。うわ、これたぶん、顔まっかになってる……。

 あたりを見回すと、日はだいぶ横になっていました。ミウちゃんは相変わらずミーアちゃんのひざの上。ミイちゃんはティムくんのあたまにのっかっています。

「ロッタも起きたことだし、そろそろ帰りましょうか?」

 アリアちゃんが言いました。なんだか今日はとっても穏やかな時間を過ごせた気がしました。みんなの前で寝ちゃったのは、ちょっと恥ずかしいですけど……。

 こうして、私たちはとっても楽しい思い出を作ることができました!


 8、また会おうね


 カランカラン。鈴が鳴って来客を知らせます。

「いらっしゃいませっ!」

 扉のところに立っているのは一人の女の子。

「あの、外の張り紙……」

 もじもじ下を向いて言いました。女の子が顔をあげると、ちょうどレジ台のところにはミイちゃんとミウちゃんがいて……。

「リル!! リナ!!」

 女の子の呼びかけに、ふたりが女の子に駆け寄りました。

「よかった……よかったぁ……」

 女の子はふたりを抱きしめて、泣き出しました。

 それはふたりの本当の飼い主さん。いつかこんな日が来るって思ってました。よかったね、リルちゃん、リナちゃん。

「お姉ちゃん、ありがとう」

「どういたしまして。リルちゃんとリナちゃんって名前だったんだぁ。じゃあ、元気な方がリルちゃんで大人しい方がリナちゃんかな?」

「ううん。元気な方がリナで大人しい方がリルだよ。リルのほうがちょっとだけお姉ちゃんなんだ」

「そうだったんだ!」

 今までリナ(ミイ)ちゃんの方をお姉ちゃんだと思ってたから、なんだか驚き。そして、何も知らなかったんだなって思っちゃいました。

「ねえ、お姉ちゃん。なにかお礼がしたいんだけど……」

「ううん、いいよ、お礼なんて」

「でも……」

「そうだ! ねえ、私、またリルちゃんとリナちゃんに会いたいな? いい?」

「もちろん!! 私、ララっていいます!!」

「私はロッタ!! よろしくね、ララちゃん!!」

 こうして、リルちゃんとリナちゃんは本当の飼い主さんのララちゃんのところへ戻っていきました。帰り際、ミイちゃんとミウちゃんが私のことを見てて、私は笑顔でバイバイしました。


 その日の夜は、久しぶりの一人きりのベッド。なんだかいつもより広く感じます。心にぽっかりと穴があいてるみたい。

「ロッタ?」

「えっ!? アリアちゃん!?」

 私に部屋に入ってきたのは、枕持参のアリアちゃんでした。

「ミイとミウ、帰っちゃったんだってね」

「うん、そうなの」

 アリアちゃんと添い寝。広く感じるベッドが3分の1だけ埋まりました。

「やっとカイくんやティムくんとも馴染んできてたのに。もっとミイちゃんミウちゃんと遊びたかった」

「そうね。でも、ふたりのためにちゃんと喜んであげなきゃ」

「うん。わかってるんだ、頭では。でも……」

「そう。そうよね」

 いつもミイちゃんとミウちゃんの箱が置いてあったところのシーツをさすさすしてみます。昨日の夜まで一緒に寝てたのに、それが今では遠い昔のことみたいです。

「また、会いに行きましょ。ほら、そんな顔しないの」

「……うん!」

 ミイちゃんとミウちゃんはいなくなっちゃったけど、私には頼りになる親友がいました!! くよくよしてる場合じゃないです!! それにミイちゃんとミウちゃんとだってずっとお別れじゃありません。ララちゃんとも友だちになれたし、またいつでも会いに行けるんですから!!

 だから今日はおやすみ。元気でね! また会おうね! ミイちゃん、ミウちゃん!!


【参考文献】

ナツメ社「かわいい猫の飼い方・しつけ方」作佐部紀子・監修

主婦と生活社「しぐさでわかるネコの健康と病気」武内ゆかり・監修

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