表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新百合ヶ丘高校文芸部☆  作者: m8eht
入部編
13/67

第4話 「みんなですごろく!」4

 そして、次は美夜子先輩の番だった。さいころを振ると、出た目は2。16マス目は、似顔絵スケッチのマスで、美夜子先輩の正面に座っているのは、私だった。

「それじゃあ、とーこちゃんの似顔絵を書けばいいのね?」

 美夜子先輩の落ち着いたまなざしが私に注がれる。私はちょっと気恥ずかしくなって目を伏せた。

「美夜子、ガンつけてる……」

「つけてません!」

 からかってくる茜先輩に一言そう答えて、美夜子先輩はじっと私の目をのぞきこんで、それからふっと笑った。

「そうね……

 その子は、静かな光をたたえる目を持っていた。それはその子の名前、冬の湖を連想させる、透き通った光だった。顔立ちはまだ幼く、肩に軽く触れるセミショートの髪が中学生だったころの名残をとどめている。

 ……こんな感じかしら?」

 こんな感じかしら?と言われても困った。私はそんなたいそうな人間じゃなかったから。私の目はたぶん、ふつーの目だと思った。

「でもねぇ……」

 美夜子先輩がちょっといたずらっぽい笑顔を浮かべる。

「私の見たところ、家ではけっこう甘えん坊さんかもしれないわね。お母さんとか……そう、お姉さんもいるんだったわね。けっこう甘えたりするんじゃない?」

 たしかにそれは図星だった。私はよくお母さんに甘えていたし、今ではお姉ちゃん相手にわがまま放題にふるまっていた。

「え、と……たしかに、そういうところ、あります……」

「そうよね? 私の経験上、そんな感じがしたの」

 美夜子先輩はちょっと得意そうに言った。

「経験上ってことは美夜子先輩もそうだったり!?」

 しらゆきがつっこんで聞く。

「え? わ、私は違うと思うけど……あ、別に甘えたりするのがダメって言ってるわけじゃなくてね!」

 私の視線に気付いて、美夜子先輩があわててそう付け加える。

「ごめんね、とーこ……。美夜子は生まれたときから、孤高の生き方をしてきたから……」

 茜先輩がよく分からないフォローをする。

「してませんから!」

 美夜子先輩が声のトーンを変えながらきっぱり言った。

「それじゃあ、私の番だねっ! それっ!」

 ひなた先輩がさいころが高く放り投げる。出た目は4だった。

『18マス目にようこそぉ! 17マス目に引き続いて実践的なお題・第2弾だ! もしも右隣と左隣の奴が親子だったら、いったいどんな感じになるのか、ちょっと考えてみないか!? お前の心に映る光景を言っちまえよ!!』

 ひなた先輩の右隣は美夜子先輩、真正面のしらゆきが左隣にあたっていた。

「親子、親子かぁ……」

 しらゆきをじっと見つめながら、人差し指をくちびるに当てて、ちょっと考えこむしぐさをするひなた先輩。そして、なにか思いついたのか、にっこり笑う。

「えっとね、こんなのどうかな……


 ある街にね、とっても仲のいい親子が住んでたんだ。

 明るいけどちょっと抜けてるお母さんのしらゆきさんと、しっかりもので頑張り屋の娘さん、みよちゃんね。

 お母さんのしらゆきさんは、みよちゃんのことが大好きなんだ。大好きだからいつもからかっちゃう。そのたびにね、みよちゃんは、

「もう! お母さんっ!!」

 って言って怒るんだよ。でもね、本当はみよちゃんもお母さんのことが大好きなの。

 そう、例えばね、みよちゃんがお友だちとケンカしちゃって、部屋で一人で泣いているとき、しらゆきさんは、みよちゃんのことをそっと抱きしめて、

「だいじょうぶだよ、きっと仲直りできるよ、よしよし……」

 って、してくれるんだよ。みよちゃんはね、そんなお母さんのことが大好きなの!


 ……ね、どうかな?」

 部室の中がシンとする。しらゆきを見ると、何かをぐっとこらえているみたいだった。

「んっ?」

 部室の中が静かになってしまって、ひなた先輩が首を傾げた。

「そ、そうね、とってもひなたらしいって思ったわ……」

「うん!」

 美夜子先輩にそう言われて、ひなた先輩はうれしそうだった。

「そ、それじゃあ、あたし、振りますね……」

 よろよろとさいころをつかむしらゆき。

「そりゃあああ!!」

 何かを振り切るように、いきおいよく振ったさいころは、ガツンガツンと転がって、5の目を出した。

『21マス目に来てしまったようだな。さて、文芸を志してしまったからには、ときに大きなテーマってやつを扱ってみるのも悪くないもんだ。ここではその練習をしようじゃないか。「神」について語ってみてくれ。どうだ?びびるなよ?思ったことをスパァーンと

言えばいいんだ!!』

「ズバリ、雨ヶ森のお狐様、です!!」

 しらゆきが、スパァーンと言う。

「ふむ……説明して?」

「えーと、私の家って神社なんですよ。で、うちの御祭神様が雨ヶ森のお狐様なので!」

「家って、雨ヶ森神社なんだ……? 私んち、いつも初詣で行く……」

「私の家もそうだよっ」

「わ、私も……」

 私の家もそうだった。お母さんがいたころも、いなくなったあとも。いつも駐車場がすごく混んでるから、徒歩で。軽い遠足みたいな感じで。

「いつもごひいきにどうも! これからも、うちのお狐様をよろしくっ!!」

 しらゆきが、にぱっといい笑顔で言った。

 私の番になった。私の水色のずんぐりむっくりは、みんなより相当後ろの方にいた。質問のノリも私だけが違って、なんだかやりにくいような気がした。もし、今度も1がでたら、11マス目にいけるなあ、と思いながら、さいころを振る。出た目は2だった。なんとなく、そうきたかって思った。

『ふー、やれやれ。やっと6マス目まで書いたぞ。最初にさいころを振って6が出たら、一気にここまで来れるわけか。まだ先は長いわけだな。なあ、君たちの部長さんはさ、いつもみんなに楽しく過ごしてほしいって思って、日夜、見えないところで色々やってるんじゃないかな? ということで、このマスに止まった人は、感謝の気持ちをこめて、「ありがとう」って言ってあげようぜ!!』

 その文句を見て、チラと上目遣いに美夜子先輩を見る。美夜子先輩は少し居心地が悪そうにした。

「べ、別に無理に言わなくてもいいんだからね? 私は二人に何もしてないんだし……」

 美夜子先輩はそう言うけれど、私はありがとうって言ってもいいような気がした。チラシのこととか、いまここにいることとか。

「あ、ありがとうございます……」

 美夜子先輩を見つめながら、そう言ってみた。

「ど、どういたしまして……」

 美夜子先輩は照れたように、私から視線をそらした。

「ふむ……とーこちゃんは素直ないい子だね……」

「それが、とーこのいいところなんですよっ!」

「一年前のひなたを思い出すよね……あのときひなたは私に同じ台詞を言ってくれたよね……」

「覚えてますよっ! 新入部員は私一人だったからすごく緊張してたんです!」

「それがまあ、こんなに立派になって……」

 袖口でそっと目元をぬぐうふりをする茜先輩。

「じゃあ、去年は美夜子先輩が入るまで、2人だけだったんですかっ?」

「んーん……3年の先輩が3人いた……」

「『雑木林の三賢』って言うんだよ! 面白い先輩たちだったんだぁっ!」

 どうやら、茜先輩の上に3人、先輩がいたらしかった。

「いずれ……あの連中についても語ることになるだろう……。といっても、まあ、わりとどうでもいい連中なんだけど……」

 茜先輩はそう言って、にやっと笑い、さいころを手に取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ