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聖戦の竜騎士  作者: HAWARD
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エピローグ

「ただいま」

 私は丘の上から彼のお墓に向けてそう呟く。肩に担いだ荷袋と銃を降ろし。

「――ってよくも自分の言いたい事だけ言って、一方的に想いを押し付けて消えてくれたわね! だいたい君は――」

 しばらく墓石に向かって私は思いつく限りの罵詈雑言と彼への不満をブチ撒ける!

「――ぜ~~~~~~~~~~~ったい! あとで後悔するんだからぁぁぁぁァァ!

 はぁ……はぁ……はぁ……本当に――本当に――」

 言葉が途切れると不意に胸を締め付ける様な感情が襲ってくる! 堪えた涙が溢れそうになり爪先で墓石を軽く小突く!

「――失礼。ベネデッタ嬢ですね?」

 声に振り向けば――いつの間には背後に四人の連合兵士がいた。

「貴方には捕縛命令がでています。我々と一緒に来てもらいます」

 四人の兵士は私を取り囲むように広がり、徐々に詰めてくる。

「こ、こんな――この事をヨハンナ様はご存じなのですか?」

 兵士達の只ならぬ気配に私は身体が震えだしそうなのを必死に抑える!

「前教皇は一般信者達を唆したとして民衆に撲殺された。一週間前の事だ」

「そんな――!」

 私はそのとき連合軍の軍服に包んだ兵士達全員がアルビオン人である事に気づいた。

「戦後処理の名の元に都市国家群を支配するつもり?」

「支配? 統一と言ってもらいたいですね。翼人戦役でよくわかったでしょう? 我々は一つにならねばいけないのです」

「それで『聖教』が邪魔になった」

「翼人を退けたのは連合軍であり。我々アルビオンだ。聖女などという得体のわからない存在ではない。君達はただ祈っていればそれでいい」

 私は急速に身体から力抜けていき、その場に膝を着く。

 こんな――こんな――結末を迎えるために私は――手が自然と胸元にある『龍のロザリオ』に握り締めていた。

「へへへへへへへ。そうやって祈ってるのがお似合いだ。まあ殺されはしねぇーよ。アンタの事を誰も憶えていなくなったら解放されるさ」

 私の事を誰も憶えていなくなったら……それは死とどう違うのだろうか……?

「とにかく貴女は我々の監視――」

 言葉の途中で急に虚ろな目になったかと思うと、そのままフラフラと危なげな足取りで去っていく!? それは他の兵士達も一緒だった。

「い、一体なにが? えっ――!」

 いつの間にか彼の墓の前に長い銀髪姿で鎧を着こんだ女性が立っていた! とても悲しい瞳をして――!

「あ、貴女は一体――?」

「……『彼』を救いだす方法はある」

「えっ!?」

「貴女の心臓はこの世の存在ではない。それを使えば――しかし――!!」

 そこまで聞いたとき思わず詰め寄ってちまっている自分に気づいた!

「行く! すぐに――さぁ早く!!」

 女性は詰め寄られているというのに全く表情を代えず、

「そんなに簡単に決めてよいのか?」

「簡単だもの。私はもうマーキスとしての責任も『聖女』としての責任もない、ただの女の子。――で、ただの女の子としては勝手に想いのたけをブチ撒けて、勝手にいなくなって――そうよ! 勝手に決めていなくなった。あのアホに一言いってやりたいだけ!」

「……ただの女……か……私にも……」

「さぁ――さっさと案内しなさい!」

「……いいだろう。私がおまえを導く――」

「導く? 余計なお世話よっ! 私は自分の足で行くわ! 神も使命も導きもまっぴらよ」

「そうか……では付いてくるがいい」

 そういうと女性は腕を掲げる――彼女の前に人一人が通れるくらいの穴が開いた!?

「さぁ「行くわよ」」

 私はすでに穴の中に片足を入れた態勢のまま背後にいる彼女に言ってから一気に飛び込んだ!


 ここからは私の物語――さぁ覚悟してなさいよ。

 相手が誰だろうと私はもう黙って受け入れたりはしない! 運命? 神? 翼人? 人の業? 全てに抗って必ずアイツ――彼の元へ辿り着いて見せる!

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