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episode8

2014/12/17:ステータス一部変更

変更点:HP/MPの上昇値

 本日の仕事は終了した。

 新人がミスをした際は肝が冷えたが、まあなんとかなったのでよしとしよう。

 社長に有給を使いたいと頼んだ際に、いっそのこと全部消費してくれと言われて、思わず1ヶ月分使用したのだが、……仕事が回るか心配だ。下の奴等はまだ危なげだし、本当に休んでいいのかね?


 まあ、それはともかくゲームを再開しよう。

 先ほどメールで閃から遊ぼうぜと誘いが来たことだし、さて、本日は何をするのやら。

 ──────〝Now Loading〟



 ◇◆◇  ◇◆◇



 ログインして最初に思った事は一つ。

 それは現在三人がそれぞれのアバターで存在している事に対してのちょっとした感動だ。

 ここ最近、全員の予定が合わず──主に俺の仕事関係なのだが──あまり一緒に遊ぶという事ができなかった分、昨日に続いて全員が揃っているというのはなんとも考え深い。

 そんな俺の内心を知ってか知らず、二人は色々なアイテムを取り出して、あーでもないこーでもないと何やら相談している様子。そんな二人を尻目に、俺は夕食代わりにパスタを茹でる。手抜きでケチャップと適当な肉を混ぜたソースに絡まるだけの単純な代物だが、まああくまでも空腹ゲージ回復の為のものなので別に問題ないだろう。

 ……よく考えると、この世界に来てから、喧嘩か、料理か、センナ虐めしかしていない気がする。

 もう少し真面なファンタジーをやってみた方がいいのだろうか。一応、分類上は吸血鬼であるのだし。


「いただきます」


 パスタを食べている途中で起きたエウクレイアにも分けながら、二人が話し合いを終わるのを待つ。

 しかしまあ、待っているだけでは無駄なので、その間に現在のステータスでも確認するとしよう。


==== ====


【NAME】ジョージ/LV3

【RACE】鬼人族(吸血鬼)

【JOB】戦士見習い

【SUB─JOB】へっぽこ精霊使い[契約:闇精霊「変幻のエウクレイア/LV2」]残り契約枠0

【SKILL】吸血(陽光脆弱化)、換装、精霊契約、武器装備制限全解除

【VITALITY】HP120/120 MP170/170

【PARAMETERS】STR15/VIT15/DEX14/AGI17/INT10/MND12

【ARMS】闇精霊エウクレイア[STR+0~5/VIT+0~5/耐久(精霊)HP分/変幻自在/自動修復/成長]、普段着上下セット[VIT±0/耐久無制限]

【ACCESSORY】[錆色絶剣片スクレップ・スクラップ/レベル上昇時DEX+1/刀剣類錆化/装備変更不可/解呪不可能/特殊成長][][]

【POINT】6


==== ====

==== ====


【NAME】変幻のエウクレイア/LV2

【RACE】闇精霊(ユニーク)

【TITLE】高貴なる魂(ゴシックハート)魅了する者(アイドル)

【SKILL】変幻ユニーク、闇魔法LV1、物理無効(82%)、闇魔法吸収(94%)

【VITALITY】HP260/260 MP320/320

【PARAMETERS】STR1/VIT3/DEX10/AGI10/INT22(+20)/MND20(+20)

【ARMS】変幻する肉体[STR+INT/耐久無制限/自己修復/成長]変幻するゴシックドレス[INT+20、MND+20/耐久300/自己修復機能/成長]

【ACCESSORY】[変幻するゴシックヘッドドレス/物理無効習得速度上昇(一戦闘+2熟練度)][変幻するゴシックニーソ/属性魔法吸収習得速度上昇(一戦闘+2熟練度)][変幻するゴシックブーツ/闇魔法「夜の帳」使用可能(一時間光を遮る結界を発動する/MP20消費)]


==== ====


 ……そう言えば、ポイントを振るのを忘れていた。

 このゲームは本人のレベルが上昇した場合、ランダムでステータスが上昇する以外に、振り分け可能ポイントが3P手に入る。ただしHPMPには振れない。ちなみにその二つは種族ごとの差はないらしく、職業により初期数値が変化する。ちなみに戦士の場合は±0、精霊使いはMP+50の状態で開始となる。

 ポイントを使用する事でパラメータを成長させることが可能で、振らなければ何の変化もないのは説明書にも注意事項付きで記されていたが、しかしまあ、正直古いRPG、主に荒野で銃とかゴーレムとか出る奴の無印をこよなく愛す男代表としては勝手に振り分けられるくらいの方がありがたいんだが、さてどうしようか。

 それはそうとエウクレイア、お前は本当に愛玩用なのか不思議になるステータスなんだが、……これが愛玩用なら他の精霊どんな化け物だよ。それともレア度は強さに比例するのか?

 まあ、相棒が強いのに越したことはない。精々見捨てられないように俺も頑張るとしよう。

 さて、配分はどうするか。……さて、俺はどんな方向に行きたいのか。

 プレイ当時考えているのは所謂重戦士───STR、VITを中心に成長させる方向だ。しかしノロいと日中は何度死にかけるか分からない。なのでAGIを中心に伸ばした方が良いかもしれない。

 それからしばらく悩んだが、徐々に考えるのがめんどくさくなったので、取り敢えずAGIに6ポイントぶち込んだ。速度が速くなればダメージ量も上がり、回避能力に多少のボーナスはつくだろうし、まあ別に問題ないだろう。

 

「あ、終わったジョージ」


 視線を画面から戻すと、どうやら話が終わったらしい二人が微笑ましげにこちらを見ている。

 なんだと思い自分を見てみるが別段変なことはしていない。精々せっついてくるエウクレイアにパスタを食べさせているだけだ。……って、こら。素手で掴もうとするんじゃない。


「お母さんしてるね」

「してますね」

「お前等はいったい何を言っているんだ?」


 二人に向き直り今日は何をするのかを問う。

 それに対してセンナは立ち上がり、るーはナイムネを張りながら、その両手に鶴嘴と虫網を握りながら、採取にきまってるじゃないと満面の笑みではしゃいでいる。

 採取って言うのはアレだ。フィールド上に存在するアイテムを採ってくる行為の事だ。専用の道具が必要な物もあれば、いつでも好きなように採れる物もある。ちなみに誰かが採取した場所は最低1時間は回復しないらしい。しかも採れるアイテムにもバラつきがあり、同じ場所で採取をしたはずなのにまったく違うアイテムが出る事もあるとか。……いやまあ、ゲームなんだから当たり前か。此処までリアルだと違和感を感じてしまう。ちなみにパーティ──最大六人──を組んでいる場合は全員採取が可能である。


「で、場所は」

「もちろん大森林。あそこならそこそこ良い素材があるしね」

「大森林の昆虫系素材からは良い刀が作れるんです!」


 ちらりと、るーの装備を観察してみる。

 灰色の軍服の上着のみを装備した絶対領域は個人的にアウトじゃないかと思うのだが、まあそれはともかくとして。腰に差している鞘を見て、成程と頷く。

 そう言えば昔から軍刀とかに憧れていたんだっけか。俺達の中である意味一番濃いのは知っていたが、趣味に走ると本当に凄いなコイツ。……るーの職業は盗賊だったような気がするんだが? それともあれも短剣の部類に入るのか?


「と言う訳で行きましょう。昆虫が私を待ってます」

「採取は生産職の基本」

「お前今休店してるんじゃ、……まあいいか」


 そんなこんなで出発進行。目的地の大森林は先日遊んだ草原の先にあるらしい。そう言えば遠目に森があったのと思い出す。あの時は馬車とか走ってたんだが、アレに乗っていくんだろうか……酔ったりしないといいんだが。


 しかし心配は杞憂だった。そもそも道中でも採取を行うつもりらしく、馬車は使う予定がないのだとか。

 そんな訳で、慣れた様子で草原を闊歩する二人の背後で、俺はアグリ等を新スキルの使い勝手もとして振り回していた。そしてまあ、一つの事に気が付いた。それは「装備制限全解除」の異常性である。

 通常アイテム画面から装備を選択する事で行うのだが、この「装備制限全解除」は手に触れたアイテム、モンスターを強制的に自分の装備へと変更する。先程アグリが振り回した棍棒を奪って殴ったのだが、その際に装備欄が無手からアグリの棍棒に変化して気が付いた。これってPVPとかで無刀取りとか出切るんじゃないか。すっげえ燃えるんだが。


「ホオオッ、ムラアアァァンッ!!」


 突撃してきた狂い鶏をアグリでかち上げる。勢いよく飛んでいき、最後は空中でドロップ品に変貌したのを満足げに見た後、最期は手放したアグリにサッカーボールキック。可哀想な事に股座に直撃し、顔色を蒼くした後消滅した。……いや、なんかすまん。

 経験値稼ぎをしている内に、どうやら採取地点に付いたらしい。

 二人が蹲っている間には小さな花が咲いている。薄桃の、シロツメクサに似たその花を前にして二人は楽しそうに、それでいてぎらついた目で花を見ていた。


「この花が採取可能なのか?」

「そうそう。これ、運が良ければ「甘露」ってレアアイテムが手に入るんだよ。いやー、序盤のラッキーアイテムなんだけど、売ると凄まじい値段になってさ」

「「甘露」を使用した料理は最高級のお菓子になるんです。しかも上位の料理人が作ったなら一定時間隠しパラメータのLUCKが2倍になるんですよ!」

「そのLUCK云々はどうでもいいが、菓子の材料に使えるって言うのなら是非欲しいな」

「道具をしようしない採取はこんな感じでできるからやってみて」


 センナがその花を握るように触れると、途端に花は薄れて、センナの掌には花びらが数枚付着していた。それをも見た瞬間、ガックリとした様子で膝を突く姿に成程、アレはスカったのかと理解する。

 次は薫子が行うと、今度は根っこが現れてこれまた膝を突いて何事かを呟き始めた。……もしかしたら甘露以外はゴミアイテムなのだろうか?

 まあ、ともかく。そんな二人に習って、俺も花に触れて見る。

 すると、触れた花びらとは違う硬質な感触に疑問符を頭に浮かべながら花から手を離すと、何故か掌に隠れる程度の小瓶が握られている。中身は黄金色の蜜、ふわりと浮かんでいる薄桃の花びらがなんとも可愛らしい。


「───ビギナーズラックって凄いね」

「物欲センサーめ」


 そんな二人を無視してエウクレイアに瓶の中身を試食させる。

 指に付いた蜜を舐めて、コロコロとその場を転がる姿に癒されたので、今度必ず美味しいクッキーでも作ってやろうと心に誓った。

 そして先程の行動を真似すればまた同じ物が出るだろうと花に抱きついているエウクレイアに温かい眼差しを向けたところ、───いつの間にか花が消えて、俺が持っている物より5倍程サイズの大きい物を抱きしめている事に気が付いた。


「へえ、精霊でもアイテムって採取できるのか」

「「いや突っ込みそこ違う」」


 膝を突いて項垂れていた二人が突如として起き上り、両サイドから手の甲を叩き付けてきたので、取りあえずその手を取って、両者のバランスを崩してその場で投げる。こけるようにその場で転がった二人と、その元凶たる俺を見て、エウクレイアからはちぱちぱと拍手を頂いた。


「痛くねえならさっさと立てよ」

「あ、はい」

「うう、私も甘露欲しいです」

「まあ、今回は運が悪かったと諦めるんだな」

「……持つ者の余裕が憎らしい」

「ほう、後でクッキーでもと思ったがいらないらしい」

「すみませんでした!」


 いつも通りのやり取りを終えて、ともかくとベテラン二人が議論を開始したので手に入れた甘露をインベントリに放り入れて、どんな効果があるのか、胸を弾ませながら説明文を読む。


【アイテム】甘露(消費アイテム)

ドローレス草原地帯南部に存在する小さな花から極低確率で入手可能な花の蜜。妖精、精霊が好んで食してしまう為入手出来るのは極稀である。滋養強壮によく、一部貴族、王族の間では病院食や離乳食等に使用されている。その為露骨な買い占め行動が発生しやすく、価値を理解していない初心者達からだまし取った先駆者達による転売なども問題視されてている。満腹度1回復。1時間「微再生」、状態異常回復速度上昇、状態異常耐性上昇発動。


 ……要するに、ブルジョワ御用達って事か?

 いやはやそれはいいものを手に入れたらしい。販売するつもりは欠片もないが、何かの交渉事に使えるやもしれん。まあ、そんな使い方をするよりも菓子の材料と消える方が早そうなのだが。

 ちなみにエウクレイアが持っている方は同じものだが、同時に5個入手した扱いになっているらしい。確率としては3%未満の超低確率だそうだ。成程、日頃の行い云々というのは案外バカできない。もしくは小さな子供相手にプレゼントをという運営の粋な計らいかも知れない。

 ちなみにエウクレイアが入手した蜜は俺が使用する事はできない。あくまでも契約している精霊の所有物であり、俺が入手したアイテムとはならないからだ。もし使いたいのなら、エウクレイアに許可をもらう必要がある。と言ってもまあ、エウクレイアはインベントリ機能がないので、入手した物は俺のインベントリに保管することになるのだが。


「よし、ジョージ。これから草原の全ての採取ポイントに行くから覚悟してね?」

「別にいいが、森は」

「後回し、それよりも今は精霊による採取とプレイヤーによる採取で何か違うかを調べたい」

「調べるなら今じゃなくてもできるだろうに」

「いや、今がいい。今がいいんだよ」

「んんっ?」

「気にしないでくださいジョージさん、もしかしたらとても面白いことになるかもしれない程度の認識でも問題ないですから」


 それなら別にいいかと意気揚々と歩き始めた二人の背後を進んでいく。

 ちらりと相棒を見れば、そんな二人を怪訝そうな顔で見つめている。……変なことにならないといいんだが。

 

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