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episode7

遅くなり申し訳ありませんでした。

盆中は仕事があり、その後の大雨が原因で色々とありまして、少しばかり茫然自失して過ごしていました。本当に申し訳ありません。

 ▼

【クエスト】錆色願望

[達成条件]錆色剣士相手に武器カテゴリ外のアイテムを使用して戦闘を行う/成功。

《隠し条件》錆色絶剣(スクレップ)の破壊に成功/成功。

《隠し条件》錆霊剣士に勝利する/失敗。

【武器装備制限全解除】習得成功。

【アクセサリー】錆色絶剣片スクレップ・スクラップ獲得。

【アイテム】????消失。

 ▲



 ◆



 ───納得いかない。

 戦闘で負けたのにクエスト成功とはこれ如何に。

 元来白黒はっきりしたい俺としては現在の戦闘で負けた時点でクエスト失敗もいいところなのだが、しかしまあ、実際に成功してしまっているのでもう今更か。

 それにしてもアレは強かったと、ぼんやりとしか思い出せない益荒男を思い出す。

 速度はそれほど速い訳ではない。しかし技術的な意味で早い。巧いと言った方が的確か。身体の動かし方が非常に鋭く、そして何より無駄がなかった。気が付いたら移動している、そんな唐突さすら感じていた。おまけにこの砂利が多い場で足音ひとつ立てる事もなく、───いやまあ、これは半分透けてたからかもしれないが。

 剣も見えない。全体の動きの一部として先読みして回避していたが、途中で何度も剣先が変わる物だからおそろしいたらありゃしない。尤も、一番恐ろしかったのは最後の一撃だ。クソ痛い、状態異常《出血多量》で減るHPがいきなり残り体力の1/3になった時は本当にどうしようかと思った。辛うじて人工血液を使用して事なきを得たが、あのままだったら始まりの街に死に戻っていたかもしれない。

 まあ、ともかく。今回はこれで終了すると決めたので早々にログアウトするとしよう。

 その為にもさっさとセンナの工房に戻って敷いた布団で眠って、───と思った途端に誰かからのコール音が響き渡る。おそらくセンナだろうと辺りを付けて、やや低めの声で話しかける。


『何の用だ?』

『わひゅい!? 宗司さん怒ってるんですか?』


 …………やっちまった。

 電話先で泣きそうな声でオロオロとしている妹分の様子を思い浮かべて思わず天を仰ぐ。

 そんな俺を真似してエウクレイアも上を向く。ついでにコールは唐突に切れて、すぐさま新たなコールが掛かり、今すぐこっち来いとセンナから支援要求が送られてきた。さてさて、この失態、いったいどうなる事やら。



 ◇◆◇  ◇◆◇



 現在工房の中央で泣いている薫子───外見上は小柄な犬耳少年に対して絶賛土下座中である。

 それをまねたエウクレイアも同じく土下座しているがそれは無視するとして、いや本当に今回は謝るしかない。コールが来た際に宛先を確認する癖をつけないと流石に拙いと今更気が付いた。

 ともかく、薫子に現実でケーキを作ってやると約束してどうにか事なきを得た。それを聞いてエウクレイアが私には? と言いたげに服の裾を引っ張ってきたので、取りあえず道具が揃い次第作る必要があるらしい。……せめて石釜があれば何とかなるんだが。


「痴話喧嘩済んだ?」

「ち、ちわっ!?」


 ニタニタとした笑みを浮かべた莫迦に、先程覚えたばかりの【装備制限解除】を使用してエウクレイアに大振りな鉈に変化してもらう。───通常の状態で使用するとただの道具として使用する為、武器として使うのは実は効率が悪い。何故なら装備出来ない道具の場合は攻撃時のVIT補正(ダメージによる肉体制御に対する耐性)、AGI補正(加速によるダメージ増加)、DEX補正(技術的なダメージ増加)が発生しない。

 つまり同じ攻撃力、形状の武器とアイテムを使用した場合、攻撃力は武器の方が高く、命中精度等が攻撃、状態異常を受ける度にアイテムの方が徐々に落ちてくるのだ。

 


「という訳で試し切りに丁度いい的がないか悩んでいたんだが、エウクレイアはどうもお前にしたいらしい」

「いや、それ多分にジョージの感情籠って、───と言うかソレってそんな事出来たの!?」

「ああ、この前トレント相手にアイテムじゃ相手するのきつかったんで頼んだら普通に出来たぞ」

「運営何考えてんだよ、隠し要素どんだけつめれば気が済むんだよ!?」

「まあ、それはそうと、───覚悟がいいよなぁ?」


 唇の端を釣り上げるだけの笑みを浮かべて近寄ると、流石に拙いと感じたらしく即座に土下座したのでとりあえず茶番は終了。変化を解いたエウクレイアがその頭の上で三段階ガッツポーズを行っているのを尻目に、相変わらずですねと苦笑している薫子とフレンド交換を行った。


「それでまあ、ともかくこの世界では初めましてだ。それで、お前さんの名前は?」

「その、るーです」

「……………………そうか、よろしくな、るー」


 そう言えば、かお、……るーにはネーミングセンスがなかった。

 確か部屋に飾ってある猫のぬいぐるみの名前が河童三号(1号、2号は存在しない)、兎の抱き枕がゴンザレス田中、可愛らしいテディベアに至ってはクイコロ(正確には食い殺す)大佐だったか。

 ちらりと視線をセンナに視線を向けると疲れ切った表情で親指を立てて沈黙している。おそらく薫子の名前はセンナが付けたのだろう。出なければあんな安直且つ普通すぎるネーミングが出てくる事があるはずがない。なのでばれないように親指を立てて、無言の功労者の評価を上昇修正しておいた。

 しかし、逆にるーはその名前に不満らしく、小声で何事かを呟いていた。

 

「むぅ、やっぱり可愛くないですよねこの名前。せっかく、ゴルベル准将とかつけようと思っていたのに」

「─────────センナ、食べたい物あるか?」

「とりあえずピザ、出来ればダブルチーズでお願いします」

「後で作ってやる」

「わーい」


 二人して力なく呟いたのはしょうがないだろう。

 何故こんなネーミングセンスになったのか、親父さんのプロレス観戦に付き合っていたからか、それともお袋さんが軍ヲタだからか、それとも弟がロボット物が好きだから、それともそれ以外に何か理由があるのか。……それとも俺達が喧嘩する度に同行していたせいで色々と間違って育っちまったのか。

 多分、全部が原因なんだろうなと思わずため息を吐くと、真下にいるエウクレイアがピザ食べたいと身振り手振りと雰囲気で伝えてくる。



 ───その後、近場の料理店で石釜を借りて、センナから許可を得たアイテムを使用してピザを焼いたのだが、気が付いたら店の客とセンナ達が取り合いをしていたので、一言断ってからログアウトした。

 

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