episode13
10/20:誤字指摘を頂き修正しました。
情報と言われてもと思いつつ、とりあえずステータスを開いて見せる事にした。
メッセージやらを見せようとしたのだが、それは止められたので、まあ、それは自分で処理しろということなのだろう。
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【NAME】ジョージ/LV6/RED
【RACE】吸血鬼(プレイヤー・モンスター)
【JOB】駆け出し戦士≪戦場の心得≫
【SUB─JOB】見習い精霊使い[契約:闇精霊「変幻のエウクレイア/LV4」]残り契約枠0
【TITLE】吸血鬼(HP+100、MP+100)、命喰鬼、窮鼠猫噛
【SKILL】吸血(陽光脆弱化)、吸命、換装、精霊契約、武器装備制限全解除
【VITALITY】HP234/260 MP284/310
【CONDITION】《不完全修復/2:48》
【PARAMETERS】STR17(-8)/VIT16(-8)/DEX18(-8)/AGI23(-8)/INT!!(-8)/MND12(-8)
【ARMS】闇精霊エウクレイア[STR+0~8/VIT+0~?/耐久(精霊)HP分/変幻自在/自動修復/物理無効/成長]、普段着上下セット[VIT±0/耐久無制限]
【ACCESSORY】[錆色絶剣片/レベル上昇時DEX+1/刀剣類錆化/装備変更不可/解呪不可能/特殊成長][黄金の鍵/ライフ・ドレイン(対象自分)/マジック・ドレイン(対象自分)/条件開示条件未達成/解呪不可能/特殊成長][]
【POINT】9
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【NAME】変幻のエウクレイア/LV4
【RACE】闇精霊(ユニーク)
【TITLE】高貴なる魂、魅了する者
【SKILL】変幻(ユニーク)、闇魔法LV2、物理無効、闇魔法吸収、恐怖耐性
【VITALITY】HP290/290 MP380/380
【PARAMETERS】STR2/VIT4/DEX11/AGI10/INT25(+20)/MND26(+20)
【ARMS】変幻する肉体[STR+INT/耐久無制限/自己修復/成長]変幻するゴシックドレス[INT+20、MND+20/耐久300/自己修復機能/成長]
【ACCESSORY】[変幻するゴシックヘッドドレス/物理無効習得完了《物理攻撃無効時極稀にダメージ量をMPに変換する》][変幻するゴシックニーソ/属性魔法吸収習得完了《魔法吸収後、同魔法使用時MP消費0》][変幻するゴシックブーツ/闇魔法「夜の帳」使用可能(一時間光を遮る結界を発動する/MP20消費)]
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……呪いのアイテム自動装備二号が現れた。
おかしい、こんな物を装備した覚えは一切ない。と言うか装備品だったのか、これ。
それにしてもこうも連続で呪われるとは。……なんというか運営、お前等は何か仕組んでないか。ここまで酷いと疑いたくなるぞ。そして刻一刻と減っていくHP/MPはどうすればいいんだろうか? これ、称号による強化がなかったらいきなり致命的だったと思うのだが。
「呪い系装備についてはもう放っておくからいいとして、とりあえず、ジョージはこれからどうするの?」
「まず娘を立派な淑女に教育した方がいいか迷っているな。このままだと何処ぞの腹ペコ化しかねん」
「それは、───重要だけどそうじゃなくて」
「待ってください、何で一瞬私を見たんですか?」
それはまあ、言うまでもない。
過去、まだ閃が高校で生徒会長だなんて似合わない事をやっていた頃、全校を巻き込んで始めた大食い大会に中学生代表として颯爽と登場し、終了時に2位と30皿以上の大差で勝利した挙句、お菓子は別腹と優勝賞品として渡された商品券(合計で1万円分)で和菓子を買い漁り、下校中にぺろりと食べてしまったのを忘れる事は生涯ないだろう。───ちなみにその後、普通に夕食も食べたと聞いて閃と二人して戦慄していたのは言うまでもない。
そんな薫子化が進むエウクレイアを心配するのはしょうがないだろう。事実二人の食に対する執着は傍目に見ていてやばい。アルコールジャンキーが酒を見た反応に酷似しているのだ。これはアカンと頭を抱える兄貴分の気持ちをお分かり頂けるだろうかと知り合いに愚痴を吐きたいくらいだ。会社の同僚からは「クソッタレこのリア充がッ!」と聞いてすらもらえないしな。……リア充に見えるのか、本当に? エンゲル係数の事で薫子の母親に相談された事すらあるんだぞ、俺。まあ、その後食事制限と趣味に対する小遣いの増量と言うアメとムチでどうにかするよう言ったのだが。薫子の場合はエンゲル係数の方が最終的に多くなるので多少の出費は必要経費と思ってもらうように説得したのは本当に、なんというか、……つかれた。
───思わず思考が現実にシフトしたが、まあそれはおいておこう。
センナが聞きたいのはそういう事ではないのなら、まあ、ようするに俺がどうするべきかを考えろという意味だろう。それについては魔王ロールと答えは出しているのだが、まあ、言いたい事はそうではなく、ようするにそのロールの方向性をより詳しく決める為の行動方針って事なんだろう。
「るーは一先ず無視するとしてだ」
「酷いッ!?」
「とりあえずは先のクソッタレとの戦いで分かったんだが、───アイテムだと攻撃力不足だ」
「うん、それ最初から分かってる」
「だが、正直楽しくてしょうがないんだよな、───丸太とか」
「……そんな理由で使うなよ」
「すまん、あの漫画割と好きだったんだよ。それに、ロマン補正クソ強いし」
丸太を武器にした際に存在する「ロマン補正」。これはその武器を装備中に使用できるアーツ─丸太ならログ・スタンピード─の際に、尋常じゃない、丸太の場合はSTR2倍、AGI2倍、胸部命中でクリティカルとかな。とにかく異常な強化が施されるので十分主力武器として使用できる性能を誇るから困りものだ。ちなみに分類としてはランスになるらしい。まあ、火に触れると燃えるので洒落にならないんだが。
「……それ、提示版に流したら面白い事が起きそうだね」
「俺が狙われる側になりそうで勘弁したいな。───まあ、ともかくだ。そんな訳で普通の武器も入手しておく必要性があると考えた訳だ。エウクレイアに変幻してもらうのもいいが、常にそれだけだと問題だ。少なくともエウクレイアが戦闘に参加できない状況がある場合、素手の戦闘が強いられるのはな───面倒だ」
そんな事をないぞ、いつもいっしょなのだーと胸を張るエウクレイアを撫でながら、例えだ例えと宥める。
戦闘の際、素手で応戦するのはあまりしたくない。それでは現実と対して変わらない、せっかくゲームを行っているのにわざわざ無手で戦う必要性はないだろう。この世界には特殊な剣や、現実じゃ使えないような巨大な斧、魔法の力がこもった銃なんて物が存在するんだ。……ロックオンとか、ないだろうか。まあ、あっても戦士では使えそうにないが。
「クエストもこれまでの流れから考えて基本的に他の奴等から狙われる危険性が増え続ける可能性が高い。その場合、俺の武器が貧弱だと正直負ける確率が高すぎるのが気に入らないと言うりゆうもある」
「まあ、ねえ。クエスト内容どう見ても最悪だもんね」
【クエスト】錆色願望2(連続イベント)/我等ガ戦場ニ我剣ハ待ツ。
報酬:不明───?
【クエスト】血を吸いし鬼の行方(種族イベント)/血とは生命の象徴。血とは生命の脈動。血とは生命の証明。ソレを飲み干す鬼が向かうは屍食鬼への堕落か、孤高なる誇りを貫くか。それとも……?
報酬:不明───?
【クエスト】魔と堕ちるか、人と生きるか(救済イベント)/神の前で語りなさい。善なる心を示せば大いなる父はあらゆる罪を許すでしょう。ですが貴方が悪しきものならばその先に待つのは煉獄ではなく地獄であると知りなさい。(古びた教会にて貴方は己の道を開くでしょう。貴方が善である事を願い、貴方が悪である事も、また望まれているでしょう)
報酬:LOW:プレイヤー・モンスター解除/CHAOS:魔物言語(獣)
「……で、最後のどっち選択するの? 教会ならあそこにあるけど」
指さされた方向には小さな、辛うじて折れかけたラテン十字がそれだと気付く要因になっている以外、神聖さの欠片もない廃屋と化した風通しのいい教会。何が起こったのかは分からないが、しかしその悽惨さだけは嫌という程に伝わる光景だが、───いやはやよくできているものである。特にあの周辺に奇妙な光の粒子が大量に舞っているあたりが特にすげえ手が込んでいる。
「ちなみに、プレイヤー・モンスターってのは他の奴等は知っているのか?」
「一応情報提示版でサラッと出たよ。ただデメリット多すぎワロエナイって結論が出てるし、最近だとそういうところを見れば種族や職業のいい組み合わせとか簡単にわかるからあんまりいないね」
「つまり、誰も知らないような情報が隠されている可能性が高いと」
「まあ、誰もやりたがらないしね」
「───つまりよぉ、このルートなら他人の手垢にまみれたイベントばかりじゃねえつーことだな」
「うわッ、───ジョージさん、今すっごい悪役顔してますよ」
「流石自由業、本職は伊達じゃない」
「おい、ヤクザ扱いやめろ。他人様に迷惑かける行為はしねえよ」
意気揚々と教会へと移動していく。答えは既に決まっている。ならその意思を示すだけだ。
教会の手前、崩れた穴から侵入しようとした途端、目の前にスクロールが合わられる。それは運営からのメッセージなどではなく、クエストを知らせる依頼書のように記された代物だった。
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【クエスト】魔と堕ちるか、人と生きるか(救済イベント)
神の前で語りなさい。善なる心を示せば大いなる父はあらゆる罪を許すでしょう。ですが貴方が悪しきものならばその先に待つのは煉獄ではなく地獄であると知りなさい。(古びた教会にて貴方は己の道を開くでしょう。貴方が善である事を願い、貴方が悪である事も、また望まれているでしょう)
報酬:LOW:プレイヤー・モンスター解除/CHAOS:魔物言語(獣)
依頼人:NO DATA
指定地:廃都市ベルベット・教会内部
確認:再考は必要ありませんか? YES/NO?
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───YESと答える代わりにそのスクロールを握りつぶして前へと進む。
内部はそれなりに広い。椅子がずらりと並んでいただろうその空間は、今や瓦礫と埃のみが存在している。砕かれた椅子の欠片が飛び散って、瓦礫の隙間から目を光らせる小動物がチチチと鳴いて駆け抜けていく。砕かれたガラスが散乱する中を歩いていけば、大きな、それこそ見上げる程に巨大な絵が一枚存在している。───女の絵だ。それも、何処か神々しい。
心臓を射抜くような形でくり抜かれた十字架の亀裂を見上げるとき、ふと、周囲を漂う光が弾けていくのに気が付いた。パチン、パチンと弾けるたびに、亀裂を中心に薄い輪郭が見えて取れた。それは人の形をしていない。哺乳類でもない、両生類でもない、爬虫類でもない、魚類でもない、鳥類でもない。かと言ってそれ以外にも該当しない。強いて言うならその全てを混ぜて、台無しにしたものを使用して新たなに作り出された存在とでも言えばしっくりするかもしれない。それほどまでに、それは何かが理解できない。───コズミックホラーとでも言えば通じるだろうか?
しかし、奇妙な事だがこの存在を俺を知っている。最初の、本当に最初に出会った戦女神と、おそらく同質だという事が手に取るように理解出来る。なんとなく、だが。
〝どうもお久しぶりです。私はこのゲーム内におけるモンスターの守護神〝計画を破壊するもの〟といいます。久方振りの吸血鬼の方が、まさかこれほどまで早く此方に来てくださるとは思ってもいませんでした〟
「久しいな担当者。その姿が貴方の本質か?」
〝さて、それは観測者側が決める事ですので私にはなんとも。それよりもさっさと話を進めましょう。私にもあまり時間がありませんので───という訳で、再度契約を結びましょう。あの時のように考えなしに記していいものではありませんので確認もお願いします〟
……む? クエスト内容と違う気がするんだが、気のせいだろうか。まあ、書面と現実が違うなど大して珍しいことではないか。
[契約書/自由意思の下、全責任を己で負う事を誓う]
何を当たり前な事を、そう言いたくなる程度に普通すぎる内容だった。
と言うか、これ聞く気無いだろう。どう考えても私が選ぶ方向がCHAOSルート一直線なのがよく分かってる。まあ、ようするにそのルートに本当に後悔がないかを示してみせろって言う確認作業なのだろう。当然、躊躇するような事もなく、私の名前を記入した。
〝───はい、確かに。相変わらず迷う事もせず、真直な方ですね〟
「それはどうも。にしても最近のAIはすごいな、普通に受け答えが出来るってのは年代的に驚きだ」
〝ふふっ、まあ、私達は作成される際に色々とありましたので。肉体的に死亡した方が、脳を完全にデータで再現する事で第二の人生を送っている、なんて噂も巷に流れているらしいですよ〟
「そうかい、そいつは夢がある噂だな」
〝ええ、夢溢るる噂です───ああ、そうでした。イベントが終了しましたので、どうぞ、報酬であるモンスター言語(獣)をどうぞお受け取り下さい〟
触腕から放たれた燐光が頭部に触れて弾けた。それと同時に、脳内で奇妙なファンファーレが鳴り響く。これでモンスター言語を入手できたらしい。もっとも、まだ獣だけらしいが。
「そういえば、このプレイヤー・モンスターってのは、吸血鬼以外でもなり得るのか?」
〝一度プレイヤー・モンスター化した方ならヘルプで説明が追加されているんですが、まあいいでしょう。一応全種族ありますがなる条件は当然違います。ちなみに、現在存在しているプレイヤー・モンスターは24名です。ただし、全員があなたとは違う拠点に属している為味方とは言えない事を忘れないでください〟
「なるほどな、まあ、同じ道を行くからと言って皆が肩を並べる筈もないか」
〝ちなみにこの廃都市ベルベットはプレイヤー・モンスターの吸血鬼専用の街として存在していますので、おそらくこれから同類が増えることはないと思われます〟
「───は?」
〝ちなみに、現存するアバターで吸血鬼を使用している方は1名のみです。先日までもう2人いましたが、両方ともアバターを変更されました〟
───つまり、種族的に私はぼっちなのか。
いや、まあ、いいさ。種族関係なしならば仲間が2人いるのだから。うん、寂しくなんてないさ。
ただ、同族にあってみたかったなと思わないでもない。世界に一人ぼっちとか、もう笑うしかないぞ、おい。
〝それではまた、貴方がこの世界における起爆剤となる事を期待しておきます〟
「なんともまあ、酷い言い草だな」
〝ふふっ、───お待ちしておりますよ、貴方が己を導く時を〟




