変わらぬ運命
あるところに、一人の少女がいた。
純粋無垢で可愛らしい少女。いつもにこにこしていて、とっても笑顔が素敵な少女。
学校の成績は優秀だが、ちょっぴり運動が苦手な少女。
家族は父と母と、そして二つ上の兄がいる少女。
最近、隣の席の男の子が気になり始めている少女。
誕生日プレゼントにもらった、ピンクの髪飾りがとてもお気に入りの少女。
考え事をするときに爪を噛む癖がある少女。
勉強机の上から二番目の引き出しに、秘密の日記帳を隠している少女。
そんなどこにでもいる普通の少女。
ある休日、出掛けた少女は交番で道を尋ねた。
どうやら病院へと向かうらしい。怪我で入院している友人の見舞いに行くそうだ。
少女は明るい笑みを浮かべ、警官に礼を言いながら去っていく。にこやかにそれを見送る警官。
しかし、この先の未来は決まっている。死だ。
少女はもうすぐ死ぬ。この後、彼女は交通事故に遭い死ぬのだ。
それはすでに決まっていて、絶対に避けられない未来。
悲しいことに、誰にもその運命を変えることはできない。
刻々とその時は近付いてくる。
少女が横断歩道を渡る。車道側は赤信号。
迫るトラック。それに気付かない少女。
そして次の瞬間――。
「お兄ちゃんまたそれ見てるんだ」
「ん? ああ、まあな」
「好きだよねそのドラマ」
「まあ、そこそこに」
「この子役、最近よくテレビに出てるよねー。お兄ちゃんまさかこういうのがタイプなの?」
「いや、全然。俺はこの後出てくる、弁護士役の女優が好きだな」