世界大戦。
大臣就任会見が終わり、帰ってきたタカハシは
かなり疲労が溜まっている様だった。
事務所のドアを開けると、
そのままこけた。
「先生ッ 大丈夫ですか?」
「んなワケあるかよ。見りゃ分かるだろ。」
言葉の割に、元気は無かった。
「で、何か分かりました?」
「全然。」
「じゃ収穫ゼロって事ですね?」
「それは・・・違うかもよ。」
タカハシはそう言い残すと
何故かさっさと奥に入ってしまった。
「・・・先生。タバコは置いていって下さいよ。」
「バレてたか。」
この頃、ユダヤ人と
パレスチナ人・アラブ諸国の対立は激化していた。
事の発端はかなり昔に遡るが、
イギリスの出したサイクス=ピコ条約、フセイン=マクマホン協定、
バルフォア宣言という互いに矛盾した取り決めのために
収拾がつかなくなったというのが適当かも知れない。
また同時期、ロシアと
ウクライナを除く周辺諸国との緊張が高まっていた。
アメリカは危機感を感じ、EU・日本との連携を強めようとしたが
両者とも明言するのを避けていた。
一歩間違えば、世界大戦が起きてもおかしくない。
そんな気運が高まっていた。
スズキは大学時代のことを思い出していた。
大学の時、特に仲が良かったのは
アキヤマという男だった。
アキヤマは学部こそ違うが
気の合う友人だった。
学生食堂でランチをひっくり返したスズキに
手をさしのべ、片付けを手伝ってくれたことから
二人はお互いに仲良くなった。
スズキと違い、アキヤマは
いわゆるエリートという奴だった。
教授には気に入られ、
大学を首席で卒業し、
国の機関で働くのだとアキヤマは言った。
スズキは大学で二回の留年をした後、
大学を辞めたのだった。
そんな対象的な二人が
久しぶりに会ったのはスズキが30になる頃だった。
アキヤマをみたスズキは
少しバツの悪そうなカオをして見せた。
どうしたんだと心配するアキヤマから
スズキは無視する形で逃げようと思った。
その時アキヤマは
自分は今度はアメリカに行くんだと言った。
スズキはうつむいて、
がんばれよと小さく漏らし
そのまま立ち去ったのだった。
「今頃あいつ何やってるかなぁ。」
スズキは一人、
真っ白な部屋の中で
小さくため息を漏らした。